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第105話 ウィステリア神国大神殿14 推薦

「ドラゴン素材の売却も完了したので、合わせて清算しますね。

 売却額は2億5000万サクル、クラーレットの取り分は6割なので、1億5000万サクルのお支払いになります。


 今回の依頼報酬と合わせて、合計3億5000万サクルになります。


 さらに、20万ギルドポイントを獲得し、これまでの合計が474,319ポイントとなりました。


 これにより、Aランク昇格の条件である30万ギルドポイントをクリアしました。


 また、4つ以上の国でBランク以上の仕事を達成し、Bランクの魔物50体相当を討伐した実績も、Sランクのドラゴン討伐で満たしています。


 ――つまり、皆さん、Aランク昇格です! おめでとうございます!」


 やった! ついにAランク……!


「なお、さらに知性と気品を兼ね備えたA+ランクになると、準貴族相当として認められます」


 ――え? そうなの? 単にAランクになれば貴族扱いってわけじゃないんだ……。


「A+ランクになるには、冒険者ギルド認定の家庭教師による指導または、認定学園での修了証が必要になります。


 もちろん、通常の冒険者活動にはA+は必要ありません。


 ただ、ギルドの幹部職員になりたい場合や、貴族との交流を増やしたい場合は、かなり有利になりますね」


 アリーチェさんはそう言って、私たちの顔を見渡した。


「さて、皆さんはどうなさいますか?」



 キュレネたちは準貴族になることが目的だから、当然A+を目指すのだろう。


 ――では、私も目指すべきなのだろうか?


 そんなことを考えていると、キュレネが口を開いた。


「冒険者ギルド認定の学園を教えてください」


 すると、ギルド職員が学園のリストが書かれた紙を差し出した。


「皆さまが学園に入る場合、冒険者ギルドの推薦枠がある社会人コースになります」


 キュレネがリストに目を通すと、ぱっと顔が明るくなり、嬉しそうに声を上げた。


「あった」


 彼女の視線の先には――


 『ヴェルティーソ高等学園』


 と書かれていた。


「キュレネは、『ヴェルティーソ高等学園』に入りたいの?」


「そうね」


 その返事を聞いた途端、マレウスギルドマスターが渋い顔をする。


「確かにヴェルティーソ高等学園は、各国のトップクラスの人材が集まり、最先端の研究を行う世界最高峰の学園と言われているわ。

 けれど、それゆえに冒険者ギルドの推薦枠を使った社会人コースでも、高難度の入学試験があるの。

 簡単には入れないわよ?」


「ええ、存じています。

 実は冒険者になる前、ヴェルティーソ高等学園を受験するつもりで勉強していたのです。

 結局受験はしませんでしたが、おおよそのレベルは理解しています」


 ――世界最高峰の学園か……。


 確かに、そういう学園で人脈を作れば、私を召喚したクヴァーロン王国の転移装置のある城へ入り込む足がかりにもなる。

 さらに、今後、神様として君臨する準備段階として、貴族との接点を得る場としても申し分ない……。

 入学試験の難易度は高いだろうけれど、ブレインエクスパンションシステムでサポートされている私なら、何とかなるはず。


「そうか、入学費用は高いが、お前たちなら問題ないか……。あとは貴族以上の推薦状も必要になるわ」


 冒険者ギルドの推薦に加え、貴族からの推薦も求められるのか……。


「私とムートは問題ないけど、ティアはどうする? 必ずしもこの学園に行く必要はないと思うけど」


「せっかくだから、私も一緒がいい」


「そう……。でも推薦状はどうしようかしら。私たちを推薦してくれるのは、私を後継者に選んだゴルフェ島のジャガー男爵だけど、ティアのことは知らないし、推薦は無理だわ」


「グレゴリオ大神官に頼むか、以前マーナガルムと戦った領のポルシーオ伯爵に相談するのはどうかな?」


「確かに、その方法があるわね。じゃあ、三人でヴェルティーソ高等学園を目指しましょう」


 アリーチェさんは頷き、


「わかりました。では、入学手続きを進めますね」


 そう言っていくつかの書類を記入し、今日のところは解散となった。



 大神殿のグレゴリオ邸へ戻り、グレゴリオ大神官に面会を申し込む。


「珍しいな、ティア神官が話とは。何の用だ?」


「ヴェルティーソ高等学園の社会人コースへの入学を考えているのですが、推薦状をいただけませんか?」


「ヴェルティーソ高等学園だと? また難関を狙うものだな。知っていると思うが、あそこは最難関だぞ」


「ええ、各国のエリートが集まる最高峰の学園と聞いています。私にとって、そこに行くことが重要なのです」


「確かに、聖女ともなれば各国の要人と関わる機会も増えるだろう。それに修行の名目としても適している。よし、神学関連の単位を取得する条件で推薦状を出そう」


 準備のため、ヴィクトル上級神官が呼ばれた。


「ティア神官がヴェルティーソ高等学園の社会人コースに入学を希望している。推薦状の準備を頼む」


「かしこまりました。ただ、ヴェルティーソ高等学園の推薦には個人の推薦書だけでなく、国や団体からの推薦書も必要かと」


「なるほど、精霊教会の推薦はもう選定会が終わっていたな。となると、来年になるが……ティア神官、それでも構わないか?」


「いえ、団体の推薦は冒険者ギルドからすでにいただいています」


「ふむ……。なるほど、あれだけの功績があれば冒険者ギルドとしても有望な幹部候補として育てたいだろうな……。これは将来、精霊教会と冒険者ギルドのどちらに所属するかで揉めるかもしれん」


「その点はご心配なく。どちらも納得できる形で解決できると思います」


 ――私が女神だと明かせば、そんな問題は消えてしまうだろう。


「ほう……何か策があるのか?」


「今ここで話すと、かえってうまくいかなくなるのでご容赦ください」


「……ふむ。興味深いな。では、その時を楽しみにしていよう」


 こうして無事に推薦状を得ることができた。


 その後、冒険者ギルドからの推薦書と『デーモンロードスレイヤー』の勲章を受け取り、ヴェルティーソ高等学園のあるドゥティリ共和国へ向かう。

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