第1話 女神降臨？
最近、同じような夢を何度も見る。
もう何回目だろうか？
白い柱が円形に並ぶ神殿のような場所で少女が私に向かって祈りをささげている夢。
少女は金髪碧眼で貴族を思わせる豪華な衣装を身に着まとっている。
年齢は私よりも少し上かかもしれない。
そして今日の夢は、これまでよりも鮮明で、いつもは聞こえなかった声がはっきりと聞こえた。
「女神様、どうかこの国をお救いください！」
えっ！と思いながらも、どこか懐かしい響きを感じ、ふと小学生のとき出来事を思い出していた。
それは、はじめての英語の授業での自己紹介だった。
「マイ ネーム イズ ティア・マトウ」
と言った瞬間、教室がざわめいた。
あれ？ 名前の『ティア』が先で名字の『真刀』が後であってるよね......？
何が起こったかわからず動揺していると、「モンスターだ」「ドラゴンだ」という声がちらほら聞こえてきた。
すかさず先生が声を上げた。
「『ティアマト』はメソポタミア神話にでてくる女神様よ」
ざわついた教室を静めるのかと思いきや、まさかのティアマト解説だった。
-----そして、それ以降、小学校を卒業までのあだ名は『女神様』となった。
ティアマトは漫画やゲームなどでも強キャラとしてよく登場するらしい。
ハーフでもない、ごく普通の日本人にの私に『ティア』と名付けたのは、どうやら両親の仕込みであったらしい。
さすがに、中学ではそのあだ名で呼ばれなくなったが......
ちなみに、私は今、高校一年生１５歳だ。
久しぶりに『女神様』と呼ばれ、当時ふざけ合あっていた頃の決まり文句をつい口にしてしまった。
「汝の願い、聞き届けよう」
——これが、すべての始まりだった。
その直後、体がふわりと浮く感覚に襲われ、同時にまばゆい光に包まれる。そして光の筒の中を漂いながら、ゆっくりと降りていく感覚があった。
これは夢の中のなかの出来事だ——そう認識していた私は、特に危機感を抱くこともなく、ただ流れに身を任せていた。
やがて、下の方に十二角形の頂点に柱が立つ、神殿らしき建物が見えてきた。
床には、魔法陣のような模様が淡く光っている。
——先ほど少女が祈りを捧げていた場所に呼ばれたってことかしら？
そんなことを考えながら眺めていると、ふと神殿の柱の一本がゆっくりと傾き、倒れ始めるのが見えた。
えっ？ これ、まずくない？
そう思いつつも、どこか他人事のようにその光景を眺めていた。
しかし、倒れた柱が床に触れた瞬間——
轟音とともに光が乱れ、強烈な衝撃が襲いかかる。
次の瞬間、夢だと思っていた景色は、一気にかき消された。
こちらイメージイラストです
