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呪われた子というが元凶は光竜なので人生を返してもらうわ〜身内王家は魔力抜きをして冷遇されるようになっていく双子の片割れはその後ハレム行き〜

作者: リーシャ

双子で生まれたブラデア。


しかし、黒髪で生まれ王族に居ないはずの色彩だと、忌子として幽閉されていた。


二代前の先王がブラデアを特に隠したがり、まるで死ねと言わんばかりに必要最低限のこともしなかった。


そうしたのは、黒髪なのは先王が黒幕というか、原因だからだ。


先王は自分に兄弟がいて、自身が王位に立ちたくてとある光竜と会い、契約、約束事、等価交換をやり取りしあった。


ぺらり、本を捲る。


先王は、今後生まれる者に対価を支払わせることを条件に、王位に着いた。


つまり、ブラデアのこの髪色は双子の片割れがプラチナロンドだったことを鑑みれば、恐らく魔力を吸い取ったのだと思う。


それどころか、魂に吸引をかけて残ったのが色彩を抜いたこの、黒髪。


逆ではないか?


普通、色彩を抜くと白くなるから、どちらかというとプラチナブロンドの方が怪しいっちゃ怪しい。


思うに、双子のどちらも光竜は魔力を奪ったのではないかと思う。


ブラデアからは魔力を。


片割れからは色彩、その他魔力半分など。


片割れは魔力なしではないが、半分しかない。


平均的に見れば、王族なので魔力は多いが、半分になっているので低いというか、王家としては少ない。


ブラデアよりは、比較にならないくらいすごく可愛がられているけど。


幽閉されず、呑気にブレンドティーでもお上品に飲んでいるのだろう。


知らないけど。


本をぱたりと閉じると粒子になって消えていく。


「この世界、MMOの世界だったか」


青筋を浮かべたブラデアは双子の忌子の方なので、絶賛監禁中。


原因は先王と光竜。


光竜に人間の魔力が必要なのは、弱っているからだ。


「人の魔力を捧げておいて、この始末」


MMOのアバターではないけど、MMO時代のアイテムはアイテムボックスというシステムから取り出せた。


そのボックスから、竜ゴロシの剣を取り出す。


名前通り、竜種に種族特化大ダメージを与える。


「いや、待てよ。こんな剣で刺したら相手がなんとなく、絵になっちゃうじゃん」


服のアバターを身に纏えば、オンボロの服が消える。


ろくに現物支給もされない。


そのせいで、肉体がかなり弱りブラデアが叩き起こされた。


本来、ブラデアは双子の忌子ではなくMMOのプレイヤーである【異界の来訪者】として生まれる予定だった。


しかし、なんの因果か忌子の女の子に生まれた。


光竜と姫というタイトル通り、光姫という忌子でない方の姫の双子が、メインキャラクター。


シナリオは忌子であるブラデア、通称闇姫が城から居なくなる、という事件から始まる。


その闇姫たる自身は本来出奔して姫として、ラスボスとして色々役割をさせられる。


まず祖父に、人身御供として差し出されていたという過去を見せられながらダークサイドに落ちていく。


その間、光姫は城の中でぬくぬくとしていた癖に。


ブラデアの魔力などを得て、ちょっと動けるようになった原因の光竜が会いにくるというラッキーイベント発生。


なんで、ぬくぬくしてる姫の方に会いに行ったんだろう。


会いにくるんなら、ブラデアでは?


謝ったり、真実を告げたり。


しかし、光竜は己が契約したことにより闇姫が大陸を闇に染めようとしているので力をかしてくれぇ、とマッチポンプをかます。


え?


原因作った癖に、なに被害者ぶってんだ?


転生か、前世の記憶か、誰かの記憶が植え付けられたのか、そんな些細なことはどうでもいい。


先ずは、自分のとんでもない名誉毀損の説明を、王族にやるのが筋なのではないのか。


忌子幽閉の黒髪にした犯人なのだと、告白してからがスタートでしょ?


しかし、その光竜、イベント終盤で真実を告げたので、すでに絆マックスである姫はあなたを許しますと勝手に返事。


別にドアマッドヒロインやってたわけでもないのに、勝手に闇姫の分も許しているのだ。


いやいや、いやいやいや。


謝るのも、許しを得る人選もおかしくない?


こっちでしょ。


双子のそっちは、毎日ぬくぬく家族に愛されて、茶をしばいてただけなのだが!?


「ゴミ竜。今行くわ」


ブラデアは、影スキルの陰抜きを行い城から抜け出し、闇で作った翼を広げて猛スピードで光竜へ飛んだ。


あいつ、確か光の山に居たな。


居場所を断定して、流星群のように向かう。


―ドオオオオンンン!!


山を無くす勢いで、そのまま寝そべる弱体化竜へドロップキックをかました。


「ぐはぁああああ!!!」


腹に入れられて血を口から吐き出す竜は、そのまま他の山に激突。


「まだまだ」


剣はなんかかっこいいから嫌なので、ブラデアの闇を纏った漆黒のトイレモップでフルスイング。


太陽系に向けて、カキーンと吹き飛ばした。


すでに意識はなくなっていて、悲鳴も上げない。


「おー、ほーむらんほーむらん」


えーっと今ブラデアは12歳なので12年拷問しよう。


「じゃ!ドラゴンキラーのアイテム。愚者の末路」


ドラゴンの首に投げつける。


このアイテムは期間限定イベント配布なので、この世に居る8匹の竜を余裕で隷属させられる数を持っている。


これで、この光竜はシナリオにも関係なくなる。


世界なんてどうなってもいいし。


なんで、よってたかって殺そうとしてきた世界を、気にしなくちゃいけないの?


一度だってこの世界の存在に優しくされた覚えなんかない。


つまり、ブラデアも世界に優しくする必要ないとこの人生で証明してくれた。


ありがとう!


光竜の首にハマった輪は光竜の魔力を吸い取る。


そのせいで光竜が黒く染まり黒竜になっていく。


この姿を見たら、誰もこれが光竜なんて信じてくれないよね。


ふすっ、と笑って光竜を引きずって城へ投げ飛ばす。


そのまま城も、崩壊すれば楽しかったのに。


ちょっと固かったかなぁ。


城の中は大パニック。


王座の方に投げ飛ばしたので、みんな王座の側に集まる。


勿論、王族達も揃う。


「やっぱり肌艶違うねえ」


光姫が現れた時、その違いに自嘲が胸に湧き起こる。


手入れされた全身。


餓えを知らぬふっくらとした体型。


プラチナブロンドはさらさら。


ブラデアは黒髪を触って、私的には黒髪でいいと、かつての異世界の方の黒髪を思い出す。


むしろ、前世の黒髪より艶があって誰かに自慢したくなる。


前世だったら、みんなついつい見てしまうくらい、写真映えする黒艶具合だ。


シャンプーのCMに抜擢されてもおかしくない。


「これは何事だ!?」


「黒い竜!?」


「ひいいいっ」


あー、人がうめいている。


見ていて飽きない。


そのままニヤニヤしながら眺めていると、光姫がこちらに気づいた。


柱のところに実は居た。


瞬時に移動したので、誰にも見られなかったけど。


「だあれ?あの子」


光姫の言葉に、周りがこちらを見ると光姫の顔そっくりなのに、黒髪という異質な女の子が。


ごくりと誰かの生唾を飲み込む音が響く。


「っ、ブラデア」


「ええ。ブラデアよ?それがどうしたの?」


「忌子は地下にいるはずでは」


クスッと笑う。


「私が黒髪なのと、そっちの双子の片割れがプラチナブロンドの原因。魔力なし、魔力半減の原因を連れてきましたの」


先王と光竜のことを話し、光竜に契約のことやその時の映像を全員に見せて信じさせることに成功した。


で、光竜に隷属のメリットであるブラデアのスキルを使用して光竜を全回復させて、ブラデアと光姫の二人を本来の髪色に戻した。


全回復させれば、もう自分たちの魔力はいらないもんねっ。


「わ、私の髪!?」


「本来の色は淡いグレー、そう。祖母、おばあさまの髪色を受け継いでいたのよ」


グレーブロンドは確か、先王の妻の色。


先妃だ。


祖母の色となる。


ブラデアもグレーブロンドの髪色となる。


本当に、双子ともども奪われていたのだと知った面々。


「ま、魔力は?」


「いえ、増えた感じはしないわ」


「あ、私は本来の魔力量を返してもらったから」


嘘だ。


ブラデアは、功労者として双子姫の魔力も貰っておいた。


髪色を戻しただけで、感謝して一生五体投地していてほしいんだけど。


「ほら」


ぶわっと魔力を出す。


自分の分と半分なので、恐らく王族で一番魔力量が多いよ。


王が冷や汗をかいて魔力量を測る機械を持って来させたので、計らせてあげた。


やはり過去一、多いらしい。


光姫の価値はこの瞬間、なくなった。


みんなが期待をこちらに向ける。


しかし、ブラデアは王に絶縁の誓いをしろと言う。


「なぜ!?」


「なぜって、私を殺そうとしておいてなに言っているのかしら?」


王達にブラデアの暮らしを映像で見せてやれば、嫌そうな顔で誓いを言わせる。


まあ、ブラデアがスキルで操ったけど。


ちょっと口を動かすくらい、ちょちょいのちょい。


「王!?」


大臣や王族に連なる者が、止めようとするが、魔法の契約により、血縁の契りを結ばせた。


魔法の家系図があって、そこに名を連ねていたのだが、そこから名が消える。


そうなると、王命が効果を発揮しなくなるのだ。


この世界は魔法に依存しているからね。


「じゃあ、その魔力半減した王族の末姫と永遠に仲良くなさい」


笑顔を向け、足を揃えて挨拶。


王族に残るはその姫だけ。


魔力が王族の中で一番低い子。


みんなの姫を見る目が一瞬で変化した。


いらない方が残されてしまったと気付いたよう。


黒竜になった光竜を引きずっていく。


痛みで呻いているけど、気にせず進む。



それから数日間、設置しておいた魔法のカメラで城を見ると、ヒメは冷遇されていた。


食事も服も部屋もグレードダウンした。


既にお披露目しているので、あからさまなことはしないと思う。


日に日に絶望に染まる顔を見ながら、先王のいる部屋へ行き、寝ている間に魔力を完全に吸い取る。


「ぐわあああ!!?」


急激に吸い取ったので激痛を伴う。


のたうち回っていた。


残念ながら王として賢王ってやつと、今までの功績、権力が健在故に罰は与えられることはなかった。


期待していたわけじゃないし。


罰はブラデアが確実に与えるから、意味ないもん。


「王!!」


様々な役職の人達が部屋に雪崩込むが、先王の容姿に全員足を止めた。


「か、髪が……!!」


「忌子と同じ?」


事情を知る者、知らない者。


「白髪が黒くなるなど、魔力無しは黒になるのか?」


ブラデアとの関係を結びつける人々に、せせら笑う。


「魔力無し生活、楽しんで」


ブラデアは部屋から出るとそこから出て、その日が来るまで待った。


双子の光姫は、城内でグレーブロンドの髪を詰られ【ネズミ姫】と蔑まれていた。


でも、やはり今までの己と比べたら、よい生活をしてるんだよね。


「嫌です!」


光姫は婚約者がいたが、冷遇されてすぐに婚約をしなかったことにされた。


魔力が少なくても王族達に愛されていれば些細なことであったと、言わんばかり。


光姫はがっかりした瞳で見つめられながら、遠い国に輿入れすることになったと言われる。


そこはハーレム制度を導入していて、王の年齢は五十を超えていた。


「どうしてそんなところへ!?」


「お前の貰い先が見つからんのだ」


心底面倒そうに言われ、光姫の目から光がさらに薄くなる。


光姫と王のやり取りを眺めて、浅く切ったフルーツを食べる。


「ふーん。光姫も切り捨てるか……」


輿入れの馬車に乗った姫は、長旅を経てハーレムの宮へ運ばれる。


まさに、出荷されるドナドナが頭に流れた。


運ばれる時間が長くなると、姫の目がさらに澱む。


「もう、しにたい」


ブラデアはぽろりと溢れる言葉にクッキーを摘む。


夜近くになると姫はバルコニーへ出る。


足取り悪く、フラフラしているし、今にも倒れそうな程。


そこに、溌剌とした声がかけられた。


「光姫」


「え?なっ、あ、あなたは、私のそっくりな、えっと、姉?妹?」


ブラデアは、バルコニーの手すりに座りながら光姫の方を向く。


「魔力が半分取り出せたから、配達しにきたわ」


ブラデアは相手の意思確認なしで、さらりと彼女へ魔力を戻す。


元の魔力に戻った姫は手のひらを見つめて、薄く笑う。


「今戻っても、この状況は変わりないの」


「戻りたいって言うなら、お城に戻れるけど、どうする?」


お城にくらい、奴隷の翼を酷使して向かわせられる。


「ふふ、いいえ。いいの。戻ってもみんなのあの目は……一生忘れられない」


光姫からはもう、どこからも光は感じられなかった。


「じゃあ、私と二人でここから出て行きましょうよ。初めからそのつもりだったの」


「えっ?」


光姫は初めてこちらに、意思のある瞳を向けた。


「拒否しても連れて行くわよ」


「えっ、でも、えっ?ええ、ちょっと」


ブラデアは影の魔力を二人分身に纏わせて、気球のようなものを作る。


「飛んでる!?」


光姫はおずおずと下を見て、慣れてくるとあちこち見る。


ちなみに余談だが、父王とその妃。


つまり、双子の親達も二時間前に魔力を全部抜いてきた。


自身の実子が、ハーレム王に全て捧げられるのがわかっていて、送り出した。


まだこの子は13歳だというのに、だ。


というわけで、彼らにも全て失ってもらった。


元々復讐対象者の中に入ってたからね。


彼女が落ち着いたら、こちらを見た。


「あなたの名前を聞いていい?」


名前を聞かれたのこの人生で初めてだ、と気付く。


「ブラデア。これからよろしくね」


「双子なのにね……私はメルフィ」


本当の人生を奪われてなければ二人とも、同じように王家で育てられ、最高の双子として、親友としてお互いを支えていただろう。


しかし、そんな現実は訪れない。


光姫のメルフィを自分と似た体験をさせたのは、そうしないと仲良くなれそうになかったからだ。


絶望を知ってからでないと、ずっと鼻についてしまう。


本音を隠して「クッキー食べる?」と聞く。


メルフィは恐る恐る、クッキーに手を伸ばして、さくりと食べる。


そのおいしさに目を丸くした。


「なんて、滑らか……」


純粋な光は無くなったものの、これからの未来という期待に目を輝かせる様子で笑みを浮かべた。


闇魔法で作った気球は、双子を乗せて夜の空を迎えに行く。

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