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幕間-1

 

 国王の執務室にて。五名の重鎮が重々しい表情で集まっていた。その中にはプリンシラ侯爵の姿もある。


「それぞれ報告を頼む」王が静かに口を開くと、一人の大臣が前に出た。


「ではまず私から。子供が襲われたことで、国民の魔人への恐怖心や悪感情は増長しております。それは王都だけにとどまらず全国に広がっています。元々暗黒期の訪れで国民の不安は募っているところでしたから」

「号外が功を奏したな。子供はどうなった?」

「現在王都の医院で厳重に保護しています。一週間もあれば完治するとのことです」

「それでは国民の感情は波立たないな」

「――対応しておきます」

「子供の家族も、頼んだぞ」


 王に言葉に大臣はしっかり頷いた。彼の代わりに恰幅のいい防衛大臣が代わりに前に出てきた。


「軍部からの報告です。

 一つ目は臨時魔法士の件について。適性検査で選出された百二十二名ですが、五名は不適合と判定、一名は研修中の事故で不適合。彼らは離脱させたのちに処分が済んでいます」

「残りは使えそうか?」

「ええ、恐ろしいほどに。魔人をせん滅させた後に彼らをどう処分するかを考えねばなりませんよ……。王立騎士団所属の魔法士よりも能力が上回るものもいますから」

「このまま王立騎士団で雇うのは?」

「平民に英雄は必要ない」


 国王は力を込めて言った。防衛大臣は困った表情をしたのちに「彼らの処遇については検討しておきます」と述べた。


「二つ目は軍基地の件です。建設は全て終了して物資を運びこんでいるところです。臨時魔法士は既に新基地で訓練を行っております。軍としてはいつでも攻め入る準備が整っています」

「戦力は整っているわけだな」

「ええ。魔人は人間十人分の力を持つと言いますが、こちらは数をおおきく上回ります。以前から軍に所属している兵士も今回の討伐に当てますから。……問題は魔物です。魔の森には少なくとも五百は魔物が住むと調査の結果が出ていますから」

「魔人さえ討てば魔物は恐れることはない。――臨時魔法士の処分については彼らに頼むしかないだろうが。では、今回の計画について。プリンシラ侯爵」


 国王に視線を投げかけられたプリンシラ侯爵が前に出た。


「では最後に私からの報告です。先日出した文に返事がありました」

「生き残りがいることは百パーセント確定となったわけだな。して内容は?」

「白の花嫁は『アイノ・プリンシラ』ただ一人であることと他の花嫁は必要ない旨が記載されていました。今までどれだけアクションを取っても反応はありませんでしたから、アイノ・プリンシラが魔人にとって重要な存在であることは間違いないでしょう」

「では計画通りに進めようか」


 プリンシラ侯爵は国王の返事を聞くと、書類を皆に配る。


「一週間後に広場にて国民への演説を予定しております。世論は魔人を滅ぼすべきものと傾いていますから、軍が魔の森に向かっていると宣言し国民の不安を取り除きます。

 そして、同時にリイラ・カタイストの処刑を行います。白の花嫁を騙り、国を混乱に陥れたと見せしめの磔にする予定です」

「アイノ・プリンシラを釣りだすのか」

「はい。この後リイラ・カタイストは捕らえ、魔の森にも使いを送ります。白の花嫁は二人も存在するはずがないのだから偽の花嫁は処刑すると。我が娘ながらアイノは責任感があります。国のために花嫁に立候補したくらいですから。身代わりに友人が処刑されるのならば助けにくるはずです。彼女を白の花嫁として溺愛している魔人も一緒に王都に来るはずですから」

「なるほど。王都で討ち取るわけですか」

「臨時魔法士は二十名程王都に派遣してください。残りは魔の森で魔物の制御でお願いします」

「無事に王都で魔人を討ちとることができれば、魔物と適当に戦わせておこう」


 プリンシラ侯爵と防衛大臣は顔を見合わせて頷き合う。


「しかし彼らも警戒しているでしょう。リイラ・カタイストを見殺しにして、出てこない可能性もありますね」

「まあそうなったらそうなったです。我らは国民のために魔人を滅ぼす大義名分もありますから、軍で突入することになるでしょう」

「先日と同様に子供を数名一区に放つ予定です。先日の魔人からの文には、魔物が子供を襲ったことへの謝罪も含まれていましたから。彼らは、魔人と人間と争いを回避しようとしている。子供を助けるために一区には出てくるはずです」

「今まで最奥にいたから手は出せなかったが一区まで出てくれば話は変わるな」


 重鎮たちが話しているのを国王は静かに聞いた後、熱っぽい表情で切り出した。


「人間と魔人の大きな戦になるかもしれない。だが今しかない。今を逃せばいつまでも魔人や魔物に怯える事になる。今回多少の犠牲は出してでも必ず滅ぼす。最後のチャンスだ。魔人を滅ぼし魔物を管理し、国を守る」


 重鎮たちが深く頷いたことを確認すると「各自、最後の準備に取り掛かるように」と指示を出した。

 皆が部屋から退席するなかで、国王は宰相に尋ねた。


「マティアスは体調不良だと聞いているが、どうしたのだ」

「暗黒期に入ってからあまりお身体がすぐれないようでして。学園も休んで療養されています」

「一大事に困ったものだ。あいつは身体だけでなく性根も軟弱だ。後継者を考え直さねばならんな」

「ヴェーティ様に?」

「以前から考えているひとつの案だ。マティアスは厳しさが足りんからな」




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