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09 テスト終わったあと

「また五十一位か…」


 放課後、廊下の壁に貼り出されたテストの順位表を見ていた。

 テストが終わり、浮かれている者もいれば、テストの結果に落ち込んでいる者もいて、様々な感情のこもった声で賑わっていた。

 俺は五百人中で五十一位だった。悪くはないのだが、一年生の頃から何故かずっとこの順位だ。

 五十一の呪いにでもかかっているのだろうか…

 まあイチローの背番号も五十一だからいっか!


「しろー!テストどうだった?」

「おお、楓。まあいつも通りだったよ」

「また五十一位?なんでいつも同じ順位なの?」

「こっちが聞きたいくらいだよ。ほんと、なんでだろ…」

「まあイチローの背番号も五十一だし、いいんじゃない?」


 同じことを考えていらっしゃる…

 楓は左腕をぐるっと回して前に突き出し、右手を左肩に添えて、イチローの打席でのルーティーンを真似している。

 それだと右打者になってしまうんだが…


「イチローは左打者だぞ、反対だ」

「あ、そっかそっか。まあいいや!」

「いいんかい…」


 こんな適当な会話はまあ、いつも通りか。


「それで、楓はテストどうだったんだよ」

「私もいつも通りだったよ!十一位!」

「さすがだな。ってかそっちもまた同じ順位かよ…」

「いい加減そろそろ一桁取りたいなー。あ、そうだ、テスト後だけど今日勉強してく?」

「やだよ、せっかくテスト終わったんだからクレープ行こうぜ」

「勉強付き合ってくれるならクレープ奢るよ」

「え!まじ!?」


 うーむ迷うな。勉強はしたくない。だがクレープは奢ってもらいたい。


「ほ、ほんとに……ぼくにクレープ…を…奢ってくれるのか?」

「うん!約束するよ!私と勉強に付き合うのと引き換えのギブアンドテイクだよ!さあ、行くって言いな!」

「だが断る」

「やかましいわ」


 行きました。

 クレープは奢ってもらえませんでした。



×××




「祭里ちゃん、テストはどうでしたか?」


 放課後、廊下で壁に貼り出されたテストの順位表を見ていると、右後からお上品な声がした。

 くるっと首だけ振り返ると、なずなちゃんがニコッと微笑んでいた。銀髪が神々しい。


「あ、なずなちゃん!十七位だったよ!なんか中学の頃から同じ順位なんだよね」

「え!すごい!ずっと同じ順位なんですか!」

「そうなの!いっつも同じだからあんまり進歩してる感じがしないの」

「いえいえ、そんなことないですよ。かなり上位ですし、それをキープし続けられているのは祭里ちゃんがいつも努力しているからですよ」

「なずなちゃん…、なんていい子なの!」

「いえ、本当のことですよ!尊敬してます」

「ありがとう!そうだ、今度苦手な科目とか教え合いっこしよーよ!」

「いいですね!」


 いやーいい友達ができたな…


「そういえば、なずなちゃんはテストどうだった?」

「私は…その……」


 もじもじとしながら口篭っている。

 言いづらそうだ。

 そんなに悪い結果だったのかな、悪いこと聞いちゃったな…


「い、言いづらいなら無理に言わなくてもいいよ…」

「………一位…です………」


 ぼそっと言われたせいで、あまりはっきりと聞こえなかったが、一位と聞こえたような気がする…


「え?一位?」

「……はい」

「ナンバーワン?」

「……はい」


 間違いではなかったみたい。

 ただ謙虚で、さっきまで十七位でドヤっていた私に気を遣ってくれていたみたい…めっちゃ恥ずかしい……


「何それ!私すっごく恥ずかしいじゃん!偉そうに勉強教え合いっことか言っちゃったよ!教えてもらうの私だけじゃん!」

「いや!そんなことは……っごめんなさい!もっと早く言っていれば」


 完全には否定してくれなかった…


「え、でもすごいね!一位なんだ、なずなちゃん!」

「いや、そんな…たまたまです…」

「ちなみにいつもは?」

「い、一位です」


 ですよね、そういう流れですよね…

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