14 【最終話】心残りの解決で時間ループが終了。でも大団円ってことには……。
今話で最終話となります。
今までありがとうございました。
明日からは新作の「空から来たりて杖を振る」の連載を始めます。
どうぞよろしくお願いいたします。
――チャイムが鳴っていた。
どうやら授業終了を知らせる鐘の音らしいな。
教師が教室を去ると、クラスのやつらが立ち上がって机をがたがた移動させた。
昼休みが始まるのがわかった。
「さあー、めしだ、めし」
誰かの声がした。
通学鞄から弁当を取り出す連中と、パンを買いに売店に走るやつらとが騒々しく駆け回る。
で、オレはといえば呆然としていた。
……おいおい。いったいここはどこだ? そしていつだ?
「おい、飛鳥井。……知らないやつがお前を呼んでるぞ」
肩を叩かれたので振り返ると、そこにはラスカルが立っていた。
中学時代からのアホ友人の荒居真だ。
……なんで、お前がここにいるんだ?
オレは自分の制服を確かめた。
烏沼高校のブレザーだ。さっきのムサシ救出のときと変わっていない。
「知らないやつ?」
オレが尋ねるとラスカルは、あごを廊下の方に向けた。
すると……、そこには、なぜか県立烏沼高校の濃紺ブレザーを着こなした風祭さんが、にこやかに立っていやがった。
オレは仕方なくそちらへと向かうのであった。
事情をいろいろ知りたいしな。
「……確かに君の走りは熱くて速かったな。
……なるほどホット・スピード社はそういう意味もあるんですね。あ、ちなみにムサシは無事ですから」
風祭さんがそういった。
オレは隣のクラスに出向いて、この風祭さんと机をあわせて弁当を食っているわけだ。
……正直いうと、風祭さんのいっていることの意味はわからんが、とりあえずムサシが無事なのがわかれば安心だ。
「……まさか、また時間ループってことはないんでしょうね?」
「いやいやいや。違いますよ。はい。……黒板を見てみればわかるでしょう」
と、いいやがった。
なるほどな。黒板のすみには四月七日とある。
……と、すると時間ループは終わったってことなのか?
「左様です。そういうことになりますね。ええ。なんとかですが、無事に終わりました。
そして僕としては、このやっかいな仕事をやりとげた充実感で満ちあふれている状態なんですよ。はい」
オレと同じく濃紺ブレザーを着た風祭さんだが言葉とは逆に苦笑していた。
「だったら、どうして、あんたがここにいるです? ……しかもその制服は、なんなんですか?」
「この制服はこの烏沼高校の制服じゃないですか? 君が今着ているものと同じですよ」
……あ、あのな、んなことはわかってるに決まってるだろ?
「いやいやいや、君がいいたいことはわかりますよ。ええ。
……事件はすべて解決したんです。すべて丸く収まりました。
……だけど、ちょっとわけありましてね」
なんていいやがったのだ。
その後の風祭さんの話によると、オレとユナエリのことに個人的に興味を持ってしまった風祭さんは、ちょいと未来の本社に不法アクセスしちまったらしい。
「それがバレてしまいましてね。ええ。で、僕はこの時代に謹慎処分にされてしまったのですよ。……ははは」
乾いた笑いだった。
……そりゃ当然だろ。……っていうか、よくクビにならなかったもんだ。
「処分はそれだけではなくて、なんと君たちというキャリアの監視役という役目も押しつけられたわけなんです。
……もっとも君たちという気前のいいクライアントのすぐ近くに居合わせることができることも意味するんですから、僕の商売から見れば悪い話でもないんですけどね」
「なるほど。で、それでこの高校に転校して来たってことですか?」
「いえいえいえ。転校ではなくて、ちょいと細工して新入生という立場です。
君と同じクラスだと、いろいろとあからさまなので、隣のクラスってことにしましたよ」
……なるほど。よくわからんが、じゃあもう風祭にはさん付けも敬語も使わんでもいいようだ。
「そうそう、不法アクセスのことなんですけれどね? ……なにがわかったと思います?」
……知るか。
「未来の君たちの支払いがあまりにも気前が良すぎたんでね。
……ちょっと魔が差しただけなんですけれどね。収穫はありました。
僕が所属するホット・スピード社ってのは、どうやら創業者の二人の人物の名前が由来らしいんですよ。
なんで社名程度が超社外秘になっているのか謎だったんですよ。
……ホットとスピードという意味わかります?」
と、わけがわからんことをいい始めたのだ。
……悪いがオレには興味ないな。
それよりもオレにとっては、ずっと気になることがあるぞ。
「しかし、なんでなんだ? お前は時間ループは終わったっていってなかったか?」
「左様です。終わりましたよ」
重々しくうなずいた。
「じゃあ、なのになんでオレはこの烏沼高校にいるんだ?
……オレが行くのは市立大鷹高校だったはずじゃねえのか?
……いや、この際だから私立の鷺鳥高校でもいいんだけどな」
風祭は口に運ぶはしを止めて笑い出した。
……な、なんなんだ?
「……いろいろ時間がこじれました。
時間干渉も二回目で成功したことも原因のひとつです。
だからタイムパラドックスの影響が半端ではなかったんです。
ですから、すべてがぜんぶ元の通りという訳には収まらなかったと、ご理解いただきたいのですよ。はい」
と風祭。
……なんてこったい。
……まあ、いい。明日が永遠に来ないよりは、はるかにましだと思うことにした。
……でも、それよりも。オレはずっとずっとずっと気になることがあるぞ。
「ユ、ユナエリはどこだ?」
オレは、にらみつけるように尋ねた。
「君と同じクラスです。
……なあに、間もなく姿を現すでしょう。
たぶん……、怒っていると思いますよ」
……なんだって? いや、意味がよくわからんのだが。
「どうして四月六日が時間ループしていたか、本当の真相が知りたくないですか?」
と突然に質問された。
オレはうなずいた。
……今はわかっているつもりだ。そして、……おそらくたぶん、この風祭はこのことでオレをこの隣のクラスに呼んだのに違いないだろうな。
「オレの心残りは、ユナエリと同じクラスになりたかったこと。
そしてユナエリはムサシを助けた人と同じ高校に通いたいと思ったことなんだろうな。
……だけど、ムサシを助けた人がオレだということは、ユナエリは気がついていなかった」
風祭は目を閉じていた。
「ええ、そうです。そして飛鳥井くん自身もそのことを知らなかった。そうですね?」
「ああ。……で、オレの心残りとユナエリの心残りが一致しないことでタイムパラドックスが発生した、ってことなんだろう? 違うか?」
「おおむね正解です。
今回の時間ループの原因となったタイムパラドックスですが、君のいう通り、飛鳥井くんは湯名さんと同じ高校の同じクラスになりたいと願った。
それは一回目の時間ループより前から、まったく変わっていません」
「なにがいいたい?」
「毎回のように早朝の公園のシーンで、君は湯名さんと出会うたびに同じ願いを望んだのです。
……キャリアの心残りというものは、実は時間ループが発生するごとに微妙に変化するのが通常なのです。
……毎回毎回、そのシチュエーションの中で実現可能と思われる最大限の要求を願うわけなんですよ」
「……ごめん。さっぱりわかんないんだけど?」
「わかりにくいですよね。
ええと、具体的に説明しますとね、時間ループが発生する前のことなんですよ。
……そこの早朝の公園で君は湯名さんと出会った。そのときももちろん湯名さんの愛犬ムサシが原因で君たちは知り合うのですが、そのときはムサシが君にかみつきそうになって湯名さんがそれを止めたのが出会いだったんです」
「ムサシがオレにかみつきそうになった? あの水飲み場で?」
……どういうことだ?
「当然ですよ。まだその時点ではムサシは君を知りませんからね。
あのイヌは湯名さんが紹介した人物にしかなつかないのは、すでにわかっていることでしょう?」
「あー、そういえば、そうだった」
……オレがオレ自身の心残りを絶たせようとしてムサシの首輪をつかんだ最後のループのときのことを思い出した。
ユナエリがオレにかみついたシーンのちょっと前だ。
「まあ、そのときはそういう場面があったとだけわかればいいです。
……そしてそのときからが重要なんです。
その最初の出会いのときも、……いや、そのときからずっと変わらずに君は湯名さんと同じクラスになりたいと願っていました。
つまり……、その後に発生した合計四回もの時間ループでも君が願ったのは、ただひとつ……」
「オレはユナエリと同じ高校の同じクラスになりたい、ってやつか?」
オレは顔が真っ赤になるのを懸命にこらえた。
……うまくいったかはわかんねえけどな。だって恥ずかしい話じゃねえかよ。
「ええ、そうです。その通りなんですよ。
……実はそれ以外の心残りがループのたびに発生してもおかしくはないんですが、君は湯名さん一途だった」
「ど、どういうことだ?」
「かんたんなことですけどね。
たとえばこの烏沼高校や市立大鷹高校、私立鷺鳥高校にも女の子はいっぱいいますよ?
……だけど君の願いはまったく揺るがない」
……悪かったな。
つまりは別の女の子を好きになって、それが新しい心残りになる可能性もあった、とお前はいいたいんだろ?
風祭は満足そうな笑顔になる。
……だが、待てよ?
「……ってことは、ユナエリは違ったんだな?
オレと違ってムサシがオレにかみつきそうになった一回目の時間ループ発生前の公園のシーンから、毎回毎回、心残りが違った、っていいたいんだろ?」
「正解です。……湯名さんの場合は、少し違いました。
その時間ループ発生前の早朝の公園から四回目のループに至るまで、毎回毎回、願ったことが違いました。
つまり心残りがその都度、変化していたのです」
「……ど、どいうことだ?」
「湯名さんの場合ですが、時間ループの原因となったループ発生前の公園でのシーンです。
……つまりムサシが君にかみつきそうになって湯名さんがそれを止めたときです。
その後、湯名さんは散歩をつづけました。そしてムサシは車に轢かれしまったのです」
「……」
「そこで湯名さんは願いました。
……最初はムサシを助けて欲しい、から、……ムサシを助ける人が現れて欲しい、と、ループの回数が増えるたびに少しずつ変化していったのです。
……ま、ひじょうに大ざっぱですが、こんな感じだと思えばいいです」
……なるほどな。そういうことか。
「ここで質問です。
延々とつづいた時間ループは君がムサシを助けたことで、第四回をもって終了しました。
……ですが、三回目の時間ループの際に、君は大鷹高校の学生服で、そして湯名さんは私服姿で僕がいた鷺鳥高校の生徒会室に現れました」
「ああ」
……それはオレが自転車の後ろにノーブラ女を乗せて来たときだ。
そしてユナエリの部屋でオレが赤パンツうんぬんを走り書きしたときのことだろうな。
「そのときも君たちは、僕が協力したことで早朝のシーンに戻ることができました」
「ああ、そうみたいだな」
「では……、なぜ、そのときは成功しなかったんだと思います?」
……知るか!
オレは三回目のループをぜんぶ思い出してるわけじゃねえんだぞ。
「思い出せないなら、考えてみてください。
なに、それほど難しい問題ではないはずです」
と、風祭はゆっくりと告げた。
……考えてみろ、かよ。
い、いや待てよ。成功しなかったんだから、なにかに失敗したんだよな?
「ユナエリの日記帳には無事に走り書きを書いた。
……そしてそのあと、もしかしたらオレはそのときもオレとユナエリが出会わないようにムサシの首輪をつかんだんだが、四回目のループでオレとユナエリが再会していることを考えると……」
「ええ、そうです。
そのときも君は湯名さんにかまれてしまったので、結果的に君と湯名さんは出会ったわけです」
「……と、すると、……残っているのは。……そういうわけか?」
……と、すれば、残っているのはムサシの交通事故。
「つ、つまり、オレがムサシを助けられなかったということだ」
風祭がにこりと笑顔を見せた。
「そうです。三回目の時間ループでは、君はムサシを助けることができなかったのです。
……だから四回目の時間ループが発生しました」
……じゃ、じゃあそのときはいったい誰がムサシを助けたんだ?
……あ! ……そういうことか?
「……そのときムサシを助けたのは男の高校生っていってたな」
「左様です。あの現場には君以外にもうひとり高校生がいましたからね」
……つまりは、この風祭が助けた、ってわけか。
「早朝の湯名さんはコンタクトレンズをなくしていたので、よく見えなかったわけです。
……でも君が着ていた烏沼高校の濃紺ブレザーと、そのとき僕が着ていた鷺鳥高校の深緑色のブレザーの色の違いくらいはわかったはずなんですけどね? はい」
「ど、どういう意味だ?」
「さあ、三回目の時間ループが終わって四回目の時間ループが発生する間に、湯名さんの心残りが変化したのかもしれませんね。
……これは本人にしかわからない話ですが」
「……」
「ですが、それはもう終わったことです。
結果的に君が望んだ、湯名さんと同じ学校と、湯名さんが願った、ムサシを助けた男子高校生と同じ学校、という心残りが一致したことで、時間ループは解決したんですからね」
……まあ、よくわからんが、そういうことなんだろうな。
「ひとつ訊いていいか?」
風祭はうなずいた。
「どうしてオレにこの話をするんだ? オレのことはともかくユナエリのことまで」
そのとき風祭は真剣な顔になった。
……初めて見る顔だった。
「そのことです。
この話はあくまで僕と君だけの内密にしてもらいのですよ。
特に湯名さんの耳には入れたくないのです。はい」
謎めいたことをいいやがった。
「なにがいいたんだ?」
とオレは尋ねた。
「湯名さんですよ。
……彼女はどうも今回の時間ループ騒動の記憶がまったくない様子なんです。
……いつぞや話した相合い傘の話のときのようにね」
と、いいやがった。
「お、憶えていない?」
「左様です。
僕はそれとなく湯名さんにいくつか質問してみたんですが、まったく憶えていないのです。
……でもこれは悲しむべきことではありません。むしろ喜ばしいことです」
……オレは風祭がいいたいことがわかるような気がした。
うまくはいえないのだが、時間ループなんかとは関わらない方がいいに違いないだろしな。
「まあ、オレもそう思うな。……なんせ死ぬ思いをしたんだ。もう絶対にこりごりだしな」
風祭はオレを見てほほえんだ。
「左様です。あのことを憶えているのは君だけでいいんです。
もし彼女にも記憶が戻ったらこの先どうなるか予想がつかないんです。
二人のキャリアが原因で起こってしまう複雑すぎる時間ループの発生の可能性は、できるだけ排除したいんですよ」
そのときだった。
お昼の気だるくのんびりとした風景が突如破られてしまった。
突然嵐のように教室の扉が開けられたのだ。
そして、
「飛鳥井速人は、どこ?」
とドスの効いた声がクラス中に響き渡ったのである。
そこにはスリムで長髪、色白のメガネレスの美少女が立っていた。
……ユナエリだった。
……メガネなしのユナエリを見るのが、えらく久しぶりに感じられた。
……で、その久しぶりのユナエリは腕組みして、えらく不機嫌そうだった。
「いやいやいや。では僕は退散するとします。とばっちりはごめん被りたいですからね」
と風祭は苦笑いを残して立ち去ったのだ。
……この野郎。
そしてだ。
これはなんの因果なのか、オレはその不機嫌美少女に校舎隅の畳敷きの茶道室に食いかけの弁当ごと連れ込まれていた。
そこは増築されていた校舎の複雑な場所にあったにも関わらず、不思議なことにやつは一度も迷うことなくその部屋にオレを監禁したのだ。
……実にいつか見た風景そっくりだ。
「お昼はいっしょに食べるって約束したでしょ?
どうして他のクラスの知らない男子といっしょに食べてるのよ?」
と、きた。
……どうやら風祭にいうことは本当らしいな。確かに記憶がないようだ。
……オレは当たり障りのない弁明をした。
話を聞くと、どうやらユナエリが売店に昼食を買いに行った隙にオレは教室を抜け出して風祭と弁当を食っていたことになっているようだ。
「ま、いいけどさ。……で、あの男はだれ?」
「あの男って?」
「あなたといっしょにお弁当食べてた、にやけた男」
「風祭のことか?」
「だれそれ? 中学時代の知り合い? それとも親友? それとも命の恩人とか?」
矢継ぎ早に質問してきやがった。
……残念ながらぜんぶはずれだ。
「顔見知りってとこかな。……昨日、世話になったやつ」
……ま、昨日には違いないな。……ずいぶん長い昨日だったけどな。
……それよりも、だ。
「お前さあ、……以前にこの部屋で、オレとメガネをかけたお前がいっしょに来たことを憶えているか?」
「あたし?」
……そうだよ。この部屋にはオレとお前しかいないだろうが?
ユナエリはしばらくキョロキョロとあたりをうかがっていた。
「なんかの間違いでしょ。
……あたしは今朝の朝礼のあとに、だれも来ないこんないい部屋があるのを見つけて喜んだばかりだし」
「そ、そうか」
「うん」
……やっぱり風祭にいう通りのようだった。
どうやらユナエリは時間ループのことを完全に忘れているようだった。
……なによりだ。
オレは昼食をぱくつくユナエリを見てそう思う。
なんだかよくわからんが、オレはこの美少女と昨日の早朝の公園で知り合って、もう翌日にはいっしょにお昼を食べる約束をする仲にまで進展しているらしいのだ。
……我ながら、なかなかうらやましいポジションにいるようだ。
オレはすでに過去となったあの時間ループを思い出してうっすらと目を閉じる。
……ああ、なによりだ。
……ちょっと性格には難があるけど、まあオレはしあわせだと思えるぞ。
……そのときだった。
「ホントにいつもぼけぼけっとしてんだから」
と、いつのまにか急接近していたユナエリに耳元でささやかれたのだ。
……うわあっ。
オレはのけぞった。畳に後ろ手をついて背後へと後ずさる。
……い、いったいなんなんだ?
「風祭のやつが訳知り顔で憎たらしいから、記憶をなくした振りをしてただけ」
と、いいやがる。
オレはなにがなんだかわからなくて、あわあわとしてしまった。
そしてユナエリだが、そんなオレの耳元に唇を寄せてきやがった。
そして囁いた。
「……ムサシのことも、あたしのことも、いっぱいありがと。
……でも、もう終わりなんだよね?」
唐突に訳がわからんことを言った。
だがオレはそのユナエリの囁く甘い声とわずかにはにかんだように見える表情に、正直ちょっとばかしうっとりしてしまった。
……ツラはホントにいいからな。
「も、もうって?」
「時間ループのこと。五回目はもうないんだよね?」
ああ、やっぱりこいつはすべて記憶していやがるんだ。
これじゃあ風祭が言っていた複雑すぎる時間ループ発生の可能性はなくなってはいない。
だったらユナエリにはなるべく穏便な生活を過ごしてもらうよう言いくるめよう。
「……ま、まあ、もうないんじゃないかな?
オレとお前が烏沼高校にいるってのは納得はいかないが、日付は四月七日になっているんだしな」
オレはいちおう安心できる材料を提示した。
もう永遠に続くんじゃないかと思っていた四月六日は過ぎ去って新しい七日になったのだ。
きっと心配はいらない。
――だがそのときだった。
この茶道室の窓の外から誰かが一瞬だけ覗いていたのが見えたのだ。
「……誰っ?」
それはユナエリも気づいたようで、ヤツは勢いよく立ち上がると窓をガラリと開ける。
「え、ええーーーーーーーーっ!」
叫んだユナエリの脇からオレも窓から身を乗り出さんばかりの勢いで外を見る。
「……ま、まさかあれって、オレたちか……?」
この茶道室の外はちょっとした和風庭園になっていて枯山水があって、その向こうには岩が点在していて更に奥には立木がまばらに立つ林になっている。
その林に向かって背を向けて全力疾走するふたりの男女高校生の姿が見えたのだ。
男の方は市立大鷹高校の黒い学ラン姿、女の方は私立鷺鳥高校のセーラー服だった。
そしてだが、その背格好や髪型から判断するとどう見てもオレとユナエリにしか見えないのだ。
「……あれってあれ?」
「……だな」
なんてこった……。
そして林の中には烏沼高校の濃紺ブレザー姿の風祭のヤツが逃げるオレたちらしきふたりにしきりに手招きしているのが見えたのだ。
「これって五回目が発生ってことよね?」
「……だな」
オレは天を仰いだ。
今度の発生原因はさっぱりわからんがループは間違いなく発生した。
違う時間から来たオレたちの姿が見えたのがなによりの証拠だ。
「……まあ、いいわ。こうなったら徹底的にループを潰す」
なにやら妙に意気込んでいるユナエリさんの姿がここにあった。
「だからあなたにも徹底的に力になってもらうわよ」
「はあぁぁぁ~~~~っ……」
オレは盛大にため息を吐いた。
どうやらオレの高校人生はすでにこうなる運命に決まってしまったらしい。
了
拙作に長い間お付き合いくださり、本当にありがとうございました。
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」連載中
「墓場でdabada」連載中
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
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「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
もよろしくお願いいたします。




