表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

えんぴつ8号

作者: アカイノ

 昔のアニメのキャラが、えんぴつに”ストライカーシグマⅤ”とか”プロブレムブレイカー”とか”シャイニングアンサー "とか、そんな名前を意味もなく付けていた。僕はこの無意味がなぜか気に入り、以降自分のえんぴつにも名前を付けるようになった。

 今の相棒の名は”8号”。

 1号から7号があるわけではない。

 名前の由来は流行りの漫画だ。


 高校生になると周囲でえんぴつを使う人は僕以外いない。

 皆シャープペンシルに乗り換えた薄情な連中ばかりである。 

 僕はそんなことはしない。

 男子たるもの、簡単に浮気するようではいけない。


 だが、たまにシャーペン勢のことを羨ましく思うときもある。

 なぜなら、えんぴつには必ず別れが訪れるからだ。

 僕はこれまで様々なえんぴつ達と別れてきた。


 今日のテストはわずか1cmにも満たない8号と共に挑む。

 僕でなきゃもう持てない長さ。

 今日がおそらく8号との最後の一時となるだろう。

 

 試験が開始した。

 最近は筆記問題も多い国語の試験。

 

 頑張れ。頑張るんだ8号。

 そう言い聞かせ、僕は問題を解き続ける。


 1文字の書き間違いすら命取りだ。

 かといって慎重になりすぎてもいけない。

 8号最後の晴れ舞台。

 解け切れないなんて、そんな情けない結果で終わらせたくない。


 僕は必死に問題を解き続けた。

 思わず手には力がこもりそうになるが何とか堪える。

 力の入れすぎは芯の無駄に繋がるからだ。


 最後の一問。

 60文字以内での筆記解答。

 つまり最低でも50文字以上は書かなくてはならない。

 8号の残りの芯は...、


 これまで数々のえんぴつと別れてきた僕には分かる。


 あと10文字分足りない。

 くそ、どうすればいいのだ。


 その時に、誰かに話しかけられた。

 「大丈夫、僕は限界を超えてみせるよ」

 それは、間違いなく8号の声だった。

 

 僕は8号信じて書き進めた。

 僕の集中力が極限に達し、手には熱を帯びていた。

 8号も最後の命を燃すかの如く熱くなる。


 頑張れ8号。頑張れ、頑張れ、頑張れ、頑張れ!


 結果、51文字。

 8号は限界を超えた。

 8号はその命尽きる瞬間まで、自身を燃やし続けた。



 数日後、国語のテストは返却された。

 点数は41点。

 良くも悪くもないといったところ。

 最後の問題は1点の部分点が貰えた。8号のおかげである。

 まあ、答案用紙が汚いと注意を受けたけど。

 

 「まったく、別に注意する程のことじゃないよな。なあ、デンジ」


 僕は新しい相棒にそう話しかける。

 名前の由来は流行りの漫画だ。



 





 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ありきたりの展開とはいえ、鉛筆への愛着が伝わって来る「童話」系の良いお話でした。 これ、同級生に同志がいると、何処まで短く頑張れたか、っていう競争になるんですよね。なので使い切った鉛筆を大…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ