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インダ独立戦争

「ごーわっど!!チェストー!!」


 戦列を組んだ象人が、新式銃で射撃の訓練をしている。


 <PAPAPAPAPAM!!!>

 <PAPAPAPAPAM!!!>

 <PAPAPAPAPAM!!!>


「そうてーん、開始にごわっど!!」


 シャカっと長銃を操作して、弾の入ったシリンダーを交換して、再度打ち始める。


 新式銃には新しいパーツがある。6つの穴が開いたシリンダーだ。


 穴には火薬と弾丸が入っていて、引き金を引くと、そこから弾が発射される。


 着火にはこれまで使っていた火ではなく、ブチキレ玉という、たたきつけると爆発する石を、キャップに込めて使うとのことだ。


 何これ……えぇ?こないだまで火縄銃だったじゃん?

 なんで西部劇みたいな、リボルバーになってるの????


「……これは、驚いたな。」


「機人様、ポルシュ式新式銃です。「パンパン銃」と名付けました。その名の通り、これまでとは比較にならない連射性能を実現しています!」


 シリンダーに穴をあけるのに苦労するとか、発火に使用するキャップの保存にはとても気を使うとか、もろもろ欠点もあるらしいが、とにかく性能の向上がすごい。


 金属の薬莢こそ使ってないけど、こりゃそのうち思いつくな。


「今はシリンダーごとの交換ですが、発火用のキャップを小型化して、一つ一つの弾丸を、カートリッジ化することを計画しています。」


 もう思いついてるわ、そりゃそうか。ハハ!笑うしかねえ!


「……金属製のケースにすべて収まるように小型化すれば、連射性は格段に上がるな。そうなれば、ベルト状に繫げても、箱に入れても良い」


「その通りです!さすが機人様!」


 ……でも今の時点で、イギニスの使うフリントガンとは6倍以上の差がついた連射力なんだよな。やべえな。


「……装甲車が装備している銃もあれなのだな?」


「はい。装甲車は12連発の大型化したものを使用しています。この新式銃のおかげで、密閉されている砲塔の中にも入れることができました。」


 あっそうか。火を使うから密閉していると、煙でいぶされちゃうじゃん。そこまで頭が回ってなかったわ。さすがはポルシュ。


「象人たちの目に光が戻りました。これも機人様のおかげ」


 俺に声をかけてきたのはカンジーだ。その目の端には光るものがあった。


「侵略に侵され、限界まで衰弱しきったインダ……!そこへ闘争によるさらなる負担が加わり……力尽きる寸前、与えられたこの兵器!」


 おーいおいおい!と泣き始めたかと思うと、急に目に光を戻して、叫び出す。


「復ッ!活ッ! インダ……復活ッッ!!」


 わなわなと拳を震わせるカンジー。誰だこいつを平和主義者とか言ったやつ!!

 バリバリの武闘派じゃねーか!!!


「た、大変だ―――!大変だ―――ッ!」


 俺たちの前に、一人の象人が、声を上げて走り込んできた。

 象人は息も絶え絶えで、何かを訴えようとしているようだが、言葉にならない。


「ハァ、ハァ――ッ!」


「落ち着いて、慌てず、息を整えてから喋るのです。」


 優しい声で、子供に語り掛けるように肩を抱き、落ち着かせるカンジー。

 まるで聖職者のようだ。


「海賊が、イギニスの海賊が浜に――!」


「野郎!!ぶっ潰してやる!!!者ども、武器を持てぇぃ!!!」


 雄々しい声で、部下に声をかけ、戦を盛り上げるカンジー。

 まるで山賊の親分のようだ。


 変わり身の早さがすごいな。疲れないのかな?

 後世、カンジーがどっちの部分をメインにして歴史書に残るのか非常に気になるところだが、それはさておき、俺たちは海賊が現れたという浜辺にやってきた。


 名目上、イギニスが相手だと俺たちは手を出すことができない。逆もしかりだ。


 なのでこの海賊たちは、恐らくイギニスの策略だろうということは、容易に推測がつくな。装備を見てもわかる。海賊があんなピカピカのフリントガンを持って居るのは不自然だ。


 コッテコテの海賊帽に眼帯、赤いコートの偉そうな海賊たちがそこにいた。

 奴らは銃を振り回して、不幸にもその浜に居た象人たちを襲っていた。


 ふむ、数は1000人かそこらか?無駄に多いなオイ!

 それに船が浜辺に乗り上げて……座礁してねえアレ?何してんの?


「ガハハ!ワイは海賊で皆殺しじゃー!とにかく理由も無く皆殺しじゃー!」


 ふむ、連中の振る舞いも不自然だ。俺は悪い奴だって自己紹介する海賊がどこにいる?そんなん見りゃわかるのに。あと、いくらなんでも棒読みが過ぎるぞ。


(ああ、あれはどう見ても偽旗ですね。恐らく間接的に攻撃を仕掛けて、インダの方からイギニスに攻撃を仕掛けた。そう仕向けるつもりなのでしょう)


(なるほど。あと、船がどう見ても座礁してるんですけど)


(なんですかね?船乗りじゃなくて陸軍から兵士を引っ張ってきたとか?まあ、よくわかりませんね、有機物のやることは。)


 そばのカンジーを見ると、象人特有の灰色の皮膚が、真ピンクになってる。

 めっちゃ怒ってはる。


「……恐らく、あれはイギニスの差し金だな。インダを挑発して、先に手出しさせ、また戦いを始めようという腹なのだろう。」


「カンジ―殿、ここはまず部隊を退かせ……」そういって、俺がカンジーに作戦を伝えようとした瞬間だった。


「インダ独立戦争じゃあああああ!!!者ども続けえええええ!!!!」


 新式銃を握りしめた象人たちが、津波となって海賊たちに襲い掛かった。


 えーっと……話きいてた?

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