いろんな意味で危ない感じ
「ああそうか、なんか納得いったわ」
「世界全体の文明の発達具合や、バランス感覚がおかしいのも、前任者がなにかしら、やらかしたせいだな?」
「Cis.」
「神聖オーマ帝国は、文化人類学者による宗教的コンセプトに基づいた、統治を受けていたようですね。当の本人は、何らかの理由で破壊されたようですが。」
――俺にライトセイバーを残したやつは、逆襲されて死んだって事か。
「なるほど、オーマの前任者の傾向が何となくわかった」
「大方、イギニス連合王国の原型を作った奴も、機人か?」
「Cis.」
「機人。相反する単語が組み合わさり、気持ち悪いですね。しかし、貴方の正式名称は、今の時代、意味を持ちませんし、貴方の定義に合わせましょう」
「さて、あなたの居た場所から南に居た機人は、ZENI-TownのCEO、西野友作の人格をシミュレートした存在ですね」
「……いろんな意味で危ない感じがする。」
「彼はネットワークを経由してサロンメンバーを集め――」
「いい!!来歴は言わなくていいから!!」
「そうですか。」
「ともかく、伝え聞く情報では、イギニス連合王国は、金こそすべてっていう考えが極まった国みたいだ。これからコンタクトをとるんだが、何かアドバイスは?」
「そうですね――基本的に拝金思想が社会に浸透するなら、階級社会は消え去るものです。そういった意味では、ソデザベス女王の存在は奇妙ですね」
「なんでだ?貴族や王が大金持ちになったから、金こそすべてっていう考えになるんじゃないのか?」
「それは権威主義と言います。その場合、金銭は貴族や王の権威を守るための一要素であり、手段にすぎませんから」
「王、女王とは、一般的には、ある一族を頂点とした、世襲される権力機構です」
「ああ、金がすべてなら人の価値の高さを決めるのはお金。生まれついての階級で、人の区分けをする必要はないのか。」
「ええ、ですから奇妙なのです」
「我々の理解の外にある国家の形をしている。そういう可能性があります」
「具体的にどういう形が考えられる?」
「1024×1024通りのパターンがありますが?」
「よし、考えるの止める。」
「Cis.」
そういえば……ここはドワーフの拠点なんだよな?
ポトポトに来ていたローニィ一家は、俺にドワーフ戦車っていうブツの設計図を見せたが、あれはどう見ても、近代的な戦車だった。
ゼロからあれを思いついたとは、とても思えない。もしかしたら、あの絵の原型になった戦車が、ここにあるんじゃないのか?
「ナビ、そういえばこのダンジョン、戦車とか置いてないのか?」
「ありませんね。この施設に存在するのは、戦闘偵察車両です」
「あら、この装甲車みたいなのしかないのか。ここにいたドワーフの先祖が、戦車の設計図を残したらしいんだが……」
「恐らく、焼き付けられた記憶から考案したのではないかと」
「エルフもドワーフも、生物としてのレベルで記憶が焼き付けられてるって事?」
「はい。彼ら種族は、本来フェーズ3での文明再興の一助になるはずでした。ですが、逆に迫害を受けているようですね」
「説明書を残しておかなかったのが悪い」
「そもそも作ったとしても、ゴミ箱まっしぐらですし」
「それもそうか、あ、思い出した。放射性物質が漏れてるってことは、バッテリーの材料あったりしない?」
「ええ、あります。しかし、現状融合炉の崩壊により、水棺として封印しているようですね。掘り起こすことはできるでしょうが……」
「一目見た瞬間で、貴方の御友人が即死するほどの、物理的に光り輝く存在になると思いますが、それでよろしければ」
「やめとくわ」
「Cis.」
「まあ、ナビのお前が手に入っただけでも、上々の成果だわ。後は……スパコン食って帰る」
「さすがに開発者も、人類の英知が、お弁当にされるとは思わなかったでしょうね。私が確保すべきパーツを指定します」
「頼むわ、後あれだ――今後ともよろしく、ナビ。」
「Cis.」
社会制度とか難しいことは流石にオッサンにはわからないので、ナビちゃんが教えてくれるようになりました。やったねオッサン!