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機人、プロパガンダムになる

 俺はオーマの首都、今まで名前を知らなかったその首都、「ペルリン」にいる。

 見る限り、だいぶ復興が進んでいるな。

 

 半分吹っ飛んだカリスト教の総本山だった教会も立て直しが進んでいる。

 だが今は教会ではなく、機人学校という、職業訓練校になっている。


 俺との戦いで、多くの家族が一家の大黒柱を失った。

 その未亡人や子供に、ドワーフ達が週に数回のペースで、金属加工や、木工を教えているのだ。


 さて、人間を生き残らせる必要性は、前説明したとおりだ。

 エルフの数が少なすぎて、占領するには広すぎる。


 灰にしたは良いが、放っておいて、他の勢力にその空白地をとられ、オーマ+何かの大勢力になる。これだけは避けねばならない。


 俺の未来兵器を使って滅ぼすのは可能かもしれない。

 にしたって、明らかに資源量という限界はあるからな。

 世界の敵より、チョイ悪な友人、それくらいのスタンスに収まりたい。


 さて、神聖オーマ帝国の人間たち。

 連中が、機人こと俺に対して、まだ疑念を持って居るのは、簡単に想像できる。


 親兄弟に加えて、街ひとつを根こそぎ潰したやつだ。

 そんな機人が人間を手助けする?どう考えたって胡散臭い。


 なので「問題をすり替える」のだ。


 ここで俺が人間だったころ、しこたまに街を作ったり、文明を作る、そういったシミュレーションゲームをしていたのが、バリバリに活きてくるな。


 今回参考にするのは、どこぞの南国で独裁者になり、思想的に真っ赤な国を作るゲームだ。

 たまに物理的にも、道路が赤くなったりもするんだが。


 それはさておき、まずはロジックを整理しよう。


 1 人間と機人が戦い、機人が勝った。

 2 負けたのは、人間が間違っていたから。

 3 人間が間違えたのは、間違えを教える人がいたから。

 4 間違えを教えていたのは教会だ、みんなで教会の教えと戦おう!


 うむ、おおむねこのロジックで行こう。

 すでに教会の指導者は、キノコ雲で天に上った。

 これに文句を言えるやつは、今のところいない。


 では、まるで人の心が無い、このイカレた論理を広めるのは?

 俺には無理なので、街で行われる、エンタメや芸術に頼る。


 子供が見る人形劇や、貴族向けの歌劇や、酒場の吟遊詩人の歌。

 あとは絵なんかだな。


 一度も会ったことも無いような貴族が、俺と一緒に立っている肖像画を量産しまくって、権威付けに利用している。これは俺にも都合がいいので放置してる。


 さすがに俺が膝をついているような構図だと、容赦なく焼いたが。


 一連のプロパガンダ、これにはデイツ王も絡んでいる。

 何本目になるかわからない、ワサビチューブを食らわせることになったが、教会と対立して、さらにそれを失った。奴にそもそもの選択権は無い。


 このプロパガンダ攻勢による、一般人の洗脳、これは、奴の生存のためでもある。

 いやー、我ながらひっでーな。


 おや、広場では早速、ムンゴル帝国との戦いを元にした、人形劇がやっているようだな?ちょっと覗いてみよう。


「ペルリンを、人の心を嘘の教えで塗り固め、その人がもつ優しさ、愛を捻じ曲げた教父は、その罪を清める為に、機人が放つ炎で焼かれたァ!」


 カラカラと音を立てて、ヒモで動く俺の操り人形。演者がミサイルを模した線香花火を、教父を象った人形に近づけていく。


 ――すると、ポンっと上がるオレンジ色の煙。色を付けた小麦粉か?凄い凄い、凝ってるなあ!


「そのとぉき!ジャーンジャーンとドラのなる音!」

「地平線を埋め尽くすはムンゴルの鬼騎兵だ!」


「悪魔の力を得たムンゴルは、火を吹く弓矢で、ペーランドの街を攻め滅ぼし、いまやペルリンに迫っていた!!」


 ムンゴル兵のからくりから、ぴょんぴょんと飛ばされる赤い色紙の付いた矢。

 子供たちはきゃあきゃあいって拾っている。

 ああ、先にお菓子がついているのか。なるほどな。


「ペルリンの壁は悪魔の矢で真っ二つに割れた、危うし!その時であった!」

「エルフと機人たちが、猛然と立ち向かっていったぁ!」


 ムンゴル兵の人形を、耳の尖った人形と機人が、さんざんに蹴散らしていく。

 トラックもちゃんと作ってるのがすごいな。


「あぁ!機人様が正しかったぁ!私たちはなんてことをしてしまったのだ!」


 人形劇の内容は実際の事件からは、大分端折られ、意味が捻じ曲げられている。

 しかし、正しいかどうかは問題じゃない。

 信じたい内容かどうかだ。


「機人様だー!わぁー!」


「よしよし、肩に乗せてやろう。お母さんは何処にいるんだ?」


「んっとね、んっと機人様の学校で、おしごとなの!」


「そうか、ちゃんとご飯は食べれているか?」


「うん!前よりね、いいくらいだよ!」


 とはいえ大分痩せている。クラフトから何か出して配ってあげよう。


 既に子供たちは、洗脳済みだ。

 俺は彼らが、これ以上世界に疑問を持たないことを祈る。

 それは彼ら本人か、その子供を、また灰にすることを意味するからだ。


 ――たのむよマジで。

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