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一日限定即売会

「イギニス直輸入!限定品のなんかこうアレだよ!」

「100名限定、再販なしの……アレっスよ!」


 俺たちはテナントを借りて、そこで1日限定の即売会を行っている。

 そこで……こう、アレとしか言いようのないモノを売っている。


 俺は「テンバイヤーが欲しがりそうな、凄い商品を用意してくれ」と、シンシアにざっくばらんにオーダーしたのだが……。


 何だろうこれ?アレとしか言いようがない。

 こんなアレとしか言いようがないモノを本当に欲しがるのか?


「……シンシア、こんなアレとしか言いようがないモノでも大丈夫なのか?」


 並べたテーブルの上にはアレとしか言いようのないモノが並んでいる。


 色、形、どれを取ったとしても、アレだ。

 五感のすべてがアレという答えを返してくる。

 そんな存在だ。


「ッス!そもそも何につかうんすかこれ?!」


「機人様、この商品の正式名称をちゃんと言ってください。『ズロンチョ』ですわ」


「……はぁ」


「説明のチラシには、ちゃんとこの商品がどういうものか説明していますのよ」


「読み上げましょう。ズロンチョはまさに各国のテクノロジーが合わさった時代に生まれた世紀のシナジーによる熱伝導が作用したオポチュニティー。全てのフレームワークに適応可能なディストリビューションとナレッジマネジメントを最適なソリューションとしてデリバティブし、そのエビデンスをアウフヘーベンさせたエステイトなのです」


「……まったくわからん」


「ええ、こういうのは雰囲気で良いのです。上位のテンバイヤーを引き付けるためには、こういった者の方が良いのです」


「どういうことッスか?」


「下位のテンバイヤーは食料や服、つまり生存に最低限必要なものを扱っています。上位の者は、不動産に芸術品などの、社会的に価値のある物を取り扱いますわ」


「……なるほどな、見えたぞ。商品の本質より、それがどれだけ高価で貴重なものかという情報さえあればいいのか」


「はい。買った人は商品など、どうでもいいのです。値段や、それを手に入れるのがどれほど難しかったか?そういうストーリーの方が重要なのです」


「……なるほど、たしかにシンシアの狙い通りのようだ」


 土煙を上げて装甲車や()()がこちらに向かってくる。

 まだ営業が始まっていないというのに!


「機人様!あれは!あの車輪を使っていない戦闘用車両は!!」


「……見たかポルシュよ、あれは戦車という。我々が作ろうとしているもの、それを既に目本は形にしていたようだな」


 テンバイヤーが乗ってきている戦闘車両、俺はそれに見覚えがあった。

 大昔の戦争に使われていた、チハタンと言われる戦車だった。


 子供のころ、これのプラモデルを作ったことがあるので、印象深く残っている。


 あれは……間違いなくチハタンだ!


 いや、感動している場合では無いな。

 そもそも!!!!なんで買い物に戦車持って来てんだよ!!!!

 アホか!!!!バカなんだな?!


 なんかお互いに車体をぶつけあいながらこっちに来てるし……。

 あ、一台の装甲車が砲撃を受けて吹き飛んだし。


 あれか?アホか?アホなんだな?!

 こんなアレとしかいいようのないモノのために命を散らすテンバイヤー。

 お父さんお母さんが不憫でしょうがないわ。

 

 さて説明しよう。


 ここでの俺の計画は、適当な限定商品の販売イベントをでっちあげて、上位のテンバイヤーを呼び寄せて一網打尽にすることにある。


 計画の目的は、上位のテンバイヤーからヤクザマンまでを辿って、全てをハチャメチャにすること。加えて連中から健全なビジネスを奪えればなお良しだ。


 なぜそんなことを?ヤクザマンは政治家に金を配っている連中だ。

 連中が献金どころではなくなれば、名誉挑戦人ランキングは大きく変動する。


 周りの順位が下がれば、新参者の俺らも入り込みやすくなるというわけだ。

 セイを通した献金の価値も大きく上がる。


(ボコボコにされるのが悪党だから何も言いませんが、機人様がやっていることは、新興のマフィアがやることそのものですね)


(まあナビさんや、お上品にやっても、被害が増えるだけなんだ、ここは悪党どもが命を散らすだけで収まるように、ドンパチで終わらそう)


(Cis. やむを得ない犠牲ですね。彼らの選んだ道です)


『ヒャッハー!!!!一日限定商品を寄越しなぁッ!!!!』

『テンバイ!ステンバーイ!!HOOOOOOO!!!!』


 戦闘用ドラッグをやって完全に出来上がっている連中に対して、俺は全ての武装の安全装置を解除することにした。


 さて、始めるとするか。

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