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ニンジャストライク

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 目本の街角で、白塗りの装甲街宣車に乗って演説する政治家がそこにいた。


 彼の名はスイゾーという。

 沈黙の総理といわれたカンゾーの地盤を引き継いだ政治家である。


「ヤクザマンと我々政治家とは、水と油であります。つまり、混ぜればドレッシングにもなるわけです。反発する者同士でも、良い未来を作れるのであります!」


「みなさんゴーハンをやっぱり食べたいですよね。毎日でも食べたいでしょう。毎日でも食べたいということは、毎日食べていないわけです!」


「ゴーハンの原料ってオコメなんですよね。これ、意外と知られていない。これは作るのが大変なので、テンバイヤーの人たちが頑張って、集めているわけです」


「それを高いと言って、怒る。これは怒る事であって解決ではない、解決ではないという事は問題だという事です。これは解決しないといけないわけです」


 スイゾーの鋭い政治レトリックが冴えわたる。


 彼はテンバイヤーに利益を誘導する政策を主張していた。

 これは明らかに、セカヘイやヤクザマンの手下としか思えない行動だ。


 しかし、聴衆はこの演説に反感を持つどころか、むしろ喜んでいた。


 聴衆は幻覚作用によって、あたかも彼が救い主(メシア)のように見えているのだ。


 いや、実際に言葉の作用だけではない。

 この演説空間には、ヤクザマンの散布したアヘアヘンが存在する。


 その証拠に見よ!スイゾーは化学防護服に身を包んでいる!


 重装備のガスマスクと、防毒加工の為された全身を覆うスーツによって、スイゾーだけはこの空間においても、直ちに影響がないレベルにまで防護されているのだ。


 しかし、聴衆はそうではない。

 アヘアヘンの効果により、すでに重度のトランス状態に陥っている。


 この空間で正気を保って居られるのは、防護装備に身を包んだ護衛のヤクザマンとスイゾー、そしてあともう一人いる。


 ――そう、ニンジャだ!


 忍者は近くのそこそこ高いビルに登って、眼下の獲物を見据えていた。


★★★


 ――許せん!


 前総理の息子という、恵まれた環境。

 ヤクザマンを駆逐する力を振るえる立場にありながら、駆逐するどころかセカヘイの差し出す金に目がくらみ、魂を捧げるなど!


 わが妹は冷静になれ、などというが、もはや一刻の猶予も無い。

 この場で誅殺してくれよう。


 私は背中からこの日の為に用意した、名槍「スティンガー(カトンボ切)」を取り出す。


 スイゾーの乗る装甲街宣車に向かって、カトンボ切を向ける。

 これはラメリカからもたらされた、最新鋭の槍だ。


 ニンジャ以外には目視出来ない、不可視のレーダー波が発射された。

 街宣車をロックオンしたことを知らせる電子音が、すぐさま私の耳に届く。


 ――忍法、地対地ミサイル(どとんのじゅつ)を食らうがいい!!!!


<BOHUUUUUUUME!!!!>


 スターターにより、カトンボ切から飛び出したシュリケンが真っ直ぐに街宣車へ飛んでいく。スイゾーよ。己の罪を数えるがいい!!!!


 街宣車に乗って、無意味な言葉の羅列(られつ)を吐き出していたスイゾーは、すぐさま大きな音を立てて迫るシュリケンに気が付き、悲鳴を上げる。


「うわああああああああああ!!!!!!シュリケンナンデ!!!!」


 ヤクザマンも、暴徒はともかく、シュリケンには成すすべがない。

 聴衆を押しのけ、街宣車から逃れようとする。

 ふん。実に見苦しい。


 シュリケンが爆発四散する光景を次に期待して、私は笑みを浮かべた。

 しかし、そうはならなかった。


 飛んできたシュリケンを、乱入者が青い光刃で切り払ったのだ。


 切り裂かれたシュリケンは、街宣車を挟むように小さく2つの爆発を起こした。


 ――何者だ……!?


 私は乱入者の肩にとまっている者を見た。

 イズナ?!!ではあれは、イズナの変化なのか!?


 おのれ!邪魔立てするとは!!わが妹とはいえ、容赦ならん!!!


 私はサブマシンガンを取り出して、ビルの間に躍り出た。


★★★


 ――危ねえええええええええ!!!!!!

 ふざけんな!!!!なんでニンジャがミサイルもってんだよ!!!!


「……危機一髪だったな」


 余裕そうに見せているが、内心はバックバクである。


「へへ……あんた、やるじゃないっ!あれはウチの兄貴、イナリだ!!」


 ミサイルをぶっ放したのは、イズナの兄貴だったのか。

 まあ、なんちゅうことを!


「……説得できればそれに越したことがないのだがな」


 俺は道路をローラーダッシュで走りながら、イズナの兄、イナリを追いかける。


 イナリは、バラララララ!!!っとサブマシンガンで弾をばらまきながら逃げる。


 それでいて俺のローラーの加速からも逃げる脚力をもっている。

 すげえなこいつ、マジでニンジャじゃん。


(機人様、一つ提案が)


(ん?)


(生け捕りにするなら、私の電撃をお見舞いすれば済みます、で、一つ問題が)


(ナビさんが電撃で狙う、なら俺はそのために、自力で追いつけって事ね?)

(Cis.)


 やってやろうじゃないの。

 ナビさんのおかげで、おおよその感覚は掴んでいる。


 ローラーで道路を切りつけるように加速し、体重の移動を足の動きに合わせる。

 たまに銃弾が妨害として飛んできて、バランスが崩れそうになるが、そこはブーストを併用したサイドステップで(かわ)す。


 まだ足らないか?


 そうだ、違法駐車された車両を、加速の為のジャンプトリックに使わせてもらおう。ははは!そこに置くのが悪い。


<ガキョン!!>


 放置車両は、俺のジャンプの負荷でぺちゃんこになった。

 まあ尊い犠牲というやつだ。次は駐車のルールを守った方が良いぞ。

 機人はいつ来るかわからないからな。ガハハ!


「クソ!しつこいやつだアビャビャビャビャ!!」


 追いついたイナリに、ナビさんが電撃を食らわした。

 そして地面に転げそうになったところを、俺が腕を伸ばしてさらっていった。


(機人様、意外とやりますね。覚えてないかと思ってました)


(だろぉー?おれって体で覚えるタイプなの)


「お、おのれ……よくも邪魔してくれたな!」


「……あの電撃を食らって、すぐさま気を取り戻したか、たいしたものだな」


「クソッ、一体何のつもりだ」


「落ち着け、ニンジャが政治家を討てば、目本とニンジャの戦争になる。お主の妹も危険にさらされるという事が解らんわけではないだろう」


「クッ……」

「そうだぜ兄貴!それにこの鉄の人は、海の外、ポトポトから来たんだ!」


「そうだ、ゆえあって、我々はポトポトから助太刀に来た。我々はヤクザマンの背後にある、セカヘイと対決したいのだ」


「なんだって?」


「それに……お主の任務は失敗などしておらぬ、あれをみろ」


 俺は目本の街頭テレビを指さした。

 マジでこんなもんまであるとは、すげーね目本、完全に昭和だわ。


 まあそれはともかく、問題はその画面に映っているものだ。

 事件現場の生中継がその街頭テレビに映っているのだが、そこにスイゾーがいた。


 防護服は破れている。きっと爆発の余波で損傷したのだろうな。

 

 そして彼は、町にある可愛らしいウキヨエアイドルの看板に向かって、夢中で腰を振り激しく前後していた。


 ナビさんは、街宣車の周りから、アヘアヘンが散布されていると言っていた。


 恐らく中へ逃げ込むときに、内部のタンクかなんかを蹴り倒して、アヘアヘンの原液かなんかをモロに食らってしまい――


 結果、スイゾーは完全にキマってしまったのだろう。


 女の子の絵が描かれた看板に向かって、彼は一心不乱に腰を振っている。

 今や彼は、妖怪カクカクおじさんとなった。


 あれではもう政治生命もクソも無いだろう。


「ハハハ!これはケッサクだ!!!」


 ――イナリは笑った。

 自分の戦いでは、悲しみしか広まらないと思っていた。

 だがそれでも目本が良くなるなら、それでよいと思った。


 しかしこの鉄の人は、それ以外の方法を示して見せた。


 自分は、この鉄の人が何を考えているのか、何がしたいのか?

 今はとても、それを知りたいと思った。

えー、まあそのーこの小説はフィクションでありますからまあしょのー

フィクションとは、仮想つまり、現実ではないわけであります。

つまり現実ではない物を現実の問題にはできないわけであります。

だからこそ(以下略

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