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太陽の長子

 まずナビさんの提案で、国際会議は一旦お開きとなった。


 カバーストーリーはこうだ。第一回の会議中に「謎の放電現象」が発生した。

 事故、事件の両方の可能性を考え、原因究明のために、施設のメンテナンスを行う。


 このため、国際会議は一時中断され、全ての議員は国元に戻ることとなった。


 そして俺はエルフ達と共にポトポトに帰った。


 道中、ナビさんによるスパルタ教育を受けたのだが、「宗教は娯楽と同じく、現実に対する鎮痛剤です」とか結構やべー事を言いだすのでヒヤヒヤする。


 特に「人の尊厳とは生物的アルゴリズムに起源を求められる、自滅回避のプログラムです」とか、あまりにも論理として、刺激が強すぎるのではないだろうか。


 心がモノから発生したという世界の見方、つまりは唯物論のことだが、これもいき過ぎてしまえば、それはもう「唯物論教」である。


 風呂と同じで、おれは良い加減を目指したい。


 さて、久しぶりに帰ってきたポトポトだが……なんか変なものができてる。


 あれ、なんか見た記憶があるぞ?うーんなんだったっけ……?


 あ、思い出した!岡〇太郎の「太陽の塔」だ!アレに似てる!


 手のある大根を逆さにしたような、2Mくらいの高さの白い塔が、ポトポトの中央に生えていた。その先端には太陽を象った顔が付いている。


 太陽の顔は磨かれた輝く銅板で作られていて、なかなかにそれっぽい。

 うーん、芸術はよくわからんが、これは爆発だ!って感じだ。意味は解らんが。


 これどうしたんだ?ちょっとミリアに聞いてみるか。


「……奇妙な物が出来ているが、あれは何だ?」


「はい、あれは『太陽の長子』の像です、世界を照らす太陽の――アビャビャ!」


 ナビさんのコントロールする飛行ユニットから電撃が放たれる。

 器用なことするなあ。


「……勝手に変なもん作らせるんじゃありません!!いくらかかったのアレに!いうてみいミリアさん!」


「へぇぇぇぇ!400万ポンダほどかかりましたぁぁー!」


「……んもぉー!無駄使いしちゃって!!」


「おやおや……無駄なものとは心外ですね」


「――ッ!」


 落ち着いた声色で俺たちに声をかけたのは若い男だ。

 その男は、白地に赤色の放射状のストライプの装飾がされたローブを着ている。


 まるで朝日を象徴しているかのようなローブだ。

 こいつは何者だ?


「申し遅れました。私、目本から参りました『世界家族化平和協会』通称セカヘイから参りました聖陽太子(せいようたいし)と申します。皆からはセイちゃんと呼ばれております」


「セカヘイのセイちゃんとやらが、なぜポトポトに?」


「はい、セカヘイの教え、つまり世界全ての人が家族となり――ウンヌンカンヌン」


 うーん、全然耳にはいってこない。音としては入ってくるんだけどなー。


(Cis. とりあえず、目障りなあの塔を破壊しますか。無許可建築ですし、耐震強度基準を満たしてませんので、普通に危険です。)


 さすがナビさん。何て冷静で的確な判断力なんだ!!


「……わかった。つまりこの塔を破壊するのになんら問題は無いわけだな?」


「へ?」


「……退いていろ、危ないぞ」


 俺はパイルバンカーにエネルギーをチャージをする。

 1,2,3ヤー!!!!


<ドッゴオオオオオオンッ!!!!>


 謎の前衛オブジェクトはパイルバンカーの一撃で、根元から消し飛ぶ。

 ――アレ?思った以上に脆い。跡形もなく消し飛んだ。

 

 なんだコレ?基部はただの石だし、本体もただ粘土を積み重ねて白く塗っただけじゃん。こんなのに400万ポンダ(4000万)って……あっ(察し


「……ほう、これに400万ポンダ?会計監査を要求する。そして無許可建築に対する説明もいただきたい。セイどの?」


「セイさん、内側に太陽のパワーが込められた心棒があって、私たちの1000年の祈りによって1億年立ち続けるって説明でがしたよね?どういう事で――」


「あっ逃げた。」


「……捕まえろミリア!普通に詐欺師だぞあれ!!」


「ようがす!皆のもの!出会え出会えー!!」


 小一時間ほどの大取物(おおとりもの)になったが、目本からポトポトに来たという、セカヘイの者たちはボコボコにされて簀巻きにされて広場に転がっている。


 出るわ出るわ、献金の不正会計に、オーマに対する賄賂の形跡。


 エルフの未亡人に対して、恋文まで出してるし。

 さすがに相手にされなかったようだが。


 そして、肝心のツボの仕入れの領収書も見つかった。100ポンダもしない工場製品のツボを1万ポンダで売りさばいていたようだ。


 これを皆に見せるとミリア仕込みのローキックがセカヘイの者たちを襲った。


「なーにが原価5万ポンダを、今回限りは1万ポンダですか!ヒトブタ風情が舐めやがって!カーッぺッ!」


「黄金だって聞いたのに、この太陽の皿、銅って話が違うじゃないですか!!」


<パカーン!> おおう、股間に大皿がクリティカルヒット。あれは痛そう。


――まあ、冷静に考えると彼らに渡してるポンダは、元をたどれば俺の作った偽札だから、俺たちのやってることも大概なのだが。


 ボコボコにされて、歯も全部折られて流石に話がしづらそうだな。

 勿体ない気もするが、エリクサーを使ってやるか。


「…‥‥さて、今度は理解できる言葉でお話をしてもらえるか、セイちゃん?」


「わ、私たちに手を出せば、目本のファーザーが――」


「……今お前に打ったのはエリクサーだ、意味が解るか?」


「……?」


「……人間は壊し続けると、いつか死ぬな?」

「……だが、我は治せる。意味が解るか?」


 あらま、セイちゃん股間を濡らしやがった。汚いなあ。


「……さて、お話をしてもらおう?今度はちゃんとした言葉でな?」


 俺はあまりにも非人道的な拷問を、これから行うことにした。

 フフフ……いつまで耐えられるかな?

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