裏時間に備えて
僕は両親を取り戻すため、イーターになる覚悟を決めた。
「じゃあとりあえず今日の裏時間、俺の討伐についてきてもらう。てなわけだからさっさと学校行ってこーい。」
学校...?
そうだ学校! 完全に忘れてた!
時計を見ると針は十二時を指していた。
「こ、ここから学校ってどうやっていけばっ!」
「とりあえず店出て、あとはGoogleマップでもつかってどうにかしろー。あ、店の前にあるチャリつかっていいぞー。」
店...?
どうやら今いる場所は建物の二階のようだ。
「い、いってきます!!」
急いで階段を駆け下り店を出る。どうやら昼間は一階をカフェ営業に使っているらしい。
僕は急いで自転車にまたがり、全力で道路を駆け抜けた。
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ガチャ
「はぁ、やっぱり怒られた。疲れたー...」
カフェ兼自宅に着くなりカウンター席にうなだれるように座りこむ。
先日の件はさておき、僕は宮城野高校の普通科に通う高校二年生。
そう、普通の高校生なのだ。
どうしてこんなことになってしまったのか、今朝誓ったばかりの覚悟を早くも後悔してしまう。
「ずいぶんうかない顔してるね、まぁ飲みなよ。甘いほうが好きなんだよね?」
女性の柔らかな声とともにカウンターに一杯のコーヒーが差し出される。
「あ、ありがとうございます。あなたは...?」
「私?見たまんま、このカフェの店員よ。君のことは白から聞いてる、輪くんだよね?」
そういうと、女性はにこりと微笑みかけてくる。
「私の名前は水野瑠莉奈よろしくね。」
水野さんの淹れたコーヒーは甘く、今日の疲れが癒されていくような気がした。
「おう、帰ったか輪。」
店の奥から八ツ木さんが出てくる。
こんな派手髪のカフェ店員がいてもいいのだろうか...
「とりあえず飯食って早めに寝とけよ、今日は忙しくなるも知んねぇ。」
「わかりました、いただきます。」
僕は八ツ木さんが運んできたまかない(おそらくランチメニューの残り物)を食べ二階へと向かった。