この極みで世界を救うⅢ プロローグ
1
「川尻春野!君のその力を世の中のために使おうとは思わないのか!?」
「何をしている!はやく私達と共に戦おう!!」
「私の国が蹂躙寸前なんだ!その力を奴らに見せつけてくれ!!」
早朝だというのに、周りにも俺にも配慮せずに事務処理の外でまたあいつらが大声を喧しく上げている。
書類が積み重なった机から一旦身を離し、俺はカーテンの隙間から外の様子を覗いた。
外でぎゃあぎゃあ声を上げているのは、国都で結成されたという少し名のある『勇者』のパーティーメンバーに、他の国からやってきた『冒険者』などだ。
「‥‥‥しつこい。いったいいつになったら帰ってくれるんだ」
吐き捨てるように言い、俺は姿を覗かせるカーテンを力ずくで閉め切った。
机に置いたままだった二日前に淹れた緑茶を口に流し込み、コップを元の位置に置くように叩きつけた。
手の甲で口元を拭い、俺は朝早くから窓から投げ込まれるように置かれた新聞を手に取った。
光が宿されていないこの部屋の中に差し込む淡く薄い日光が僅かながらにその新聞の第一面に載せられた題を映し出した。
ーーー川尻春野は正義の使者か。
「‥‥‥こんな新聞、よく街の奴らは読みやがるよな」
題の横に載せられた文や他の題をロクに見ずに、俺はその新聞を机の横に置かれてあったゴミ箱に投げ捨て、また机の上で筆を走らせたの
猫背となったその俺の横にあるゴミ箱が、少しだけ覗かせたその新聞。
ーーーそこに、王国軍によっての第一幹部率いる魔王軍半数が滅せられた事を載せてあった事を知ったのは、今回の出来事が終わったあとのことだった。