キャラ設定です
「いきなりで悪いんだが、コレからだよな」
幼女さんは勇者さんに抱えられます。
虚な瞳は何も映しておらず、口から泡を吹いています。
「この幼女は……何?」
「Damn. I would have never thought……」
幼女さんは死んだ目のまま意味のわからない英単語を呟いています。
みなさん一様に理解不能といった様子です。
それはわたしも同じでした。
何を尋ねられているのか質問の意図がわかりませんし、話している英語が何なのかまるでわかりません。
「見ての通りの幼女ですけど?」
「それは……知ってる」
魔法使いさんがジト目のまま答えます。
勇者さんはため息をついて、みんなに語りかけるのです。
「みんな自分の職業言えるか? 俺は勇者だ」
「僧侶よ〜」
「魔法使いね。メンヘラだけど」
「……サプライズニンジャ」
「そして幼女だ。ニンジャはどうでもいいとして、ここに一つの疑問がある。はい、何でしょうか!?」
みなさんの視線がひとつになります。
わたしが注目されているのです。
ですが……マジマジの卍でわかりません。
「えっ……わかりません。ロリは必要ですよ?」
「ああ……なんてこと。作者ちゃん鈍感過ぎね〜」
僧侶さんが頭を抱えます。
魔法使いさんもしょぼんみたいな顔をしています。
わたしだけがわかっていないという風です。
「えっ? ロリは必要ですよね? だってロリのいないラノベなんて……ギター不在のバンドです。ドラムとベースがいなくても成り立ちますが、ギターはいなくちゃですよね? ドラムはデブだから死んでもいいですけどギターは必要不可欠ですよね?」
「ドラムとベースがいなくても成り立たねえよ! あと何そのドラムへの偏見! 痩せてるドラムもいるだろ……」
はあ……知る限り見たことはありませんが。
わたしは目で見たものしか信じない性格なのです。
魔法使いさんが続けて問いかけてきます。
「あのね、作者……バンドで考えてみて私の立ち位置がギターで勇者はボーカル。僧侶がベースだとしたらあと必要なのは?」
「キーボード」
「どれだけドラムが嫌いなのよ……」
今のはわたしの渾身のボケだったのですが……
どうにも通じていないようです。
「必要なのはドラムなの。でもね、この幼女を見て?」
魔法使いさんは勇者さんから幼女さんを受け取ります。
胸の下あたりに腕を回され、だらんとする幼女さんはダウナー系で可愛らしいです。猫みたいですね。
「F〇ck you all niggaz wanna do!!」
発狂しました。
いきなりのシャウトにわたしと魔法使いさんはびくっとしてしまいます。
先程の発言は撤回しましょう。
この子! 怖いです!!
「狂ってるわ。明らかに旗違いの人間よ。バンド組もうとしたらメンバーが足りなくて死刑囚で代用しているようなものよ!」
死刑囚……なるほど。
否定できないところが痛いところです。
魔法使いさんはここぞとばかりにたたみかけてきますし、幼女さんは「くくく……」と不気味な笑い声を上げつつギラギラとした眼差しでこちらを睨みます。
爽やかな昼間の草原は明るいです。
幼女さんの狂気をはっきりと照らし出し、より一層恐ろしく感じます。
端的に言って漏らしそうです。
「パフュームに美川憲一が混ざっていたらどう想う? アイドル声優ユニットにマツコデラックスがしれっといたら? もうそれって方向性の違いからの解散よね?」
「確かに……シャニマスに小林幸子が参戦したら目を疑います、そういうことでしょうか?」
「そういうことよ。私たちの場合は勇者、魔法使い、僧侶ときたらもう一人は武闘家とかそんな感じの職業がくるのが創作のお約束なの。でも見て、この悪しき幼女さまの姿を!」
幼女さん。
見てみると今度はぶつぶつと何か言い始めています。
「悪意、恐怖、憤怒、憎悪、絶望、闘争、殺意、破滅、絶滅、滅亡……」
秋葉原のメイドカフェ近辺に、こういうオタクけっこういます。
「いきなり職業じゃなくて属性が混ざってるの! それも作者の闇を全て絵の具に変えてキャンパスにブチまけましたみたいなクソでか激重設定付きよ。これでは読む方は違和感を抱くわ」
「闇っ……クソでか激重!」
怖い怖いと思っていましたが、第三者(この場合そういってよいのでしょうか?)からの遠慮のない指摘というものは中々にくるものがあります。
素直に受け止めきれる人もいるのでしょうか?
こういう指摘を作品に反映させられる人が面白い作品を創れるのでしょうか?
メンタルがふわふわスフレのわたしにはちょっと難しそうです。
「あ、そんな、そんなにわたしは……闇が深いですか?」
「言い過ぎよ〜。作者ちゃん傷ついちゃったじゃない」
挙動不審になりつつあったわたしを僧侶さんが抱きしめます。
誰かに抱きしめてもらったのはいつ以来でしょうか。
とても柔らかくて、おっぱいが。
幸せです。
「ふふ……ふへへ」
「やっぱりオカシイかもしれないわね〜」
心の距離を感じました。