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お嬢様は救世します4

 俺は魔王の配下だ

 それは俺の誇りであり自慢だ

 魔王は俺を救ってくれた唯一の人で、俺があの方を裏切ることは決してないと言えよう

 たとえ操られようともな

 俺の名はカウル

 人間族にミノタウロス族の里を襲われ俺は幼いころに攫われた

 一族は皆殺され、子供は全員捕まった

 ミノタウロス族は力の強い種族で、男は労働力、女は愛玩用として売られることが決まった

 そんな俺たちを魔王は救ってくれたんだ

 惚れた

 純粋にあの強さに、優しさに俺は惚れたんだ

 救われたミノタウロスの子供達は10人、男は戦闘部隊として訓練し、魔王に仇成す人間達と戦っている

 魔王は戦わなくてもいいと言ってくれたが、どうにかして役に立ちたかったんだ

 実は救出されるとき俺だけはもうすでに売られて人間の貴族のおっさんに買われていた

 そいつは俺を見るなり下品な笑い声をあげて自分の部屋に連れ込んだ

 いくら力の強いミノタウロスとはいえ、奴隷紋と隷属魔法の力で俺は逆らえなかった

 恐怖、あの時の俺は幼くて恐怖しかなかった

 ぼろぼろの衣服というにはあまりにもお粗末な服を引きちぎられ、体を舐め回すように見る男に俺は声をあげることもできず震えていた

 そこを救ってくれたのが魔王だ

 今まさに襲われそうになっている俺をかばうように、転移魔法で現れた魔王は男を殴り飛ばして俺を助け、綺麗な大き目のタオルでくるんでくれた

 見たところ俺より少し年上なくらいの子供に見えたけど、遥かに年を経ているらしい

 情けないことに恐怖で失禁していた俺を優しく抱きしめてそのまま連れだしてくれたんだ

 それ以来俺は必死に修行して魔王のために働くと決めたんだ

 故郷は失ったが、魔王の元が俺の帰る場所になったんだ

「カウル、これからエルフ救出作戦を展開する。お前の部隊は東北にある関所を頼む。我とエスカは東を叩く。それからハク、今回はカウルの補助を頼めるか?」

「はいお嬢様」

 俺にお辞儀をするのはハクという新米だ

 新米ながらも相当な手練れなんだが、戦闘センスはあるものの大勢相手には敵わないらしい

 だが彼女は妖怪族だという

 妖怪族と言えば妖力という特殊な力を使って戦う種族

 しかも九尾族に連なる白狐族というのが驚きだ

 神話の時代に神と共に邪神と戦ったと言われる戦闘種族じゃないか

 恐らくまだ子供ゆえにその本当の力に目覚めていないんだろう

 まぁ魔王は自分の救出した子供達にあまり戦ってほしくないようだがな

 会えて言わせてもらうとそれはいらぬ心配だ

 俺たちは魔王の役に立ちたいんだ

 ハクも恐らくそうだろうな

「よろしくなハク」

「はい、カウルさん」

「さんはいらねぇって。じゃぁ行こうぜ」

「では各自作戦開始! くれぐれも無理はするなよ!」

「おうよ!」

 

 俺と共に行くのは数人の獣人族(彼らも魔王に助けられた者たちだ)、それからハクだ

 ハクは探索に優れているようで、俺たちでは苦手な気配を消しての探索をしてくれるらしい

「危なそうならすぐ戻れ。俺が守ってやるからな」

「ありがとうございますカウル」

 ハクは通信用の魔道具(これは魔王が持たせてくれたもの)を俺に渡すとあっという間に関所内部へと侵入していった

 すごいなあいつ、俺にはできない芸当だ


 それからしばらく待っていると魔道具に反応があった

「こちらカウル。中の状況はどうだハク」

「はい、囚われていたエルフ三名を発見しました。見張りの人間族が二名、それと隷属魔法をかけられた獣人が五名ほど見受けられます。人間族は合計八人で、他に隠れている気配はありません」

「エルフたちの様子はどうだ?」

「特に怪我をしている様子もなく元気そうです。商品としての価値を下げないためでしょう」

「了解。ルートを送ってくれ」

 俺はハクから送られてきた地図とそれに書き込まれたルートを見る

 この魔道具すげぇな。誰が作ったんだ?

 こんなの作ってるやつ城にはいないぞ?

 まぁそれは今いいか

 地図をしっかり確認したらまずはハクがエルフたちを助け出すのを待った

「こちらハクです。見張りを気絶させエルフを助け出しました」

「よし、お前ら行くぞ!」

 同じ戦闘班の獣人たちを引き連れて正面から一気に攻めた

 先手必勝ってやつだな

 その直後にエルフを連れて関所の壁を壊して出て来たハクとすれ違った

「後は頼みます」

「任せときな!」

 不意を突かれたからか関所にいた奴らは混乱して、隷属させている獣人たちとの連携が崩れていた

 これなら簡単に事を済ませそうだ

 俺は背中に背負っていた大槌を振り上げると地面にたたきつける

 これは武器であり魔法発動用の魔道具でもある

 ミノタウロスの俺の唯一他と違うところが、魔法に秀でていたことだ

 通常種のミノタウロス族は魔法が使えないか、使えても大したことがない

 それが俺は突然変異種というやつで、土魔法がエルフよりも得意だった

 そのおかげでこんなことができるわけだ

「土魔法、ロックヴァイパー」

 地面が隆起して蛇のようにうねると人間達を襲う

 その隙に俺の後ろにいた獣人たちが隷属されている獣人を助け出して、持たされた魔道具で隷属魔法を解除する

 

 数分後、たった数分で片付いたのは驚きだった

 ハクは本当に優秀だな

「姐さん! 脱出準備整いました」

「よし、簡易転送装置作動!」

 この簡易転送装置も魔王が渡してくれた魔道具だ

 魔王の転移と違って一方通行な上に特定の場所にしか転移できないが、それでもこういったミッションの時は城に戻るために重宝するってもんだ

 ふう、これで俺たちの役目は終わったな

 救い出したエルフたちはあとは魔王が何とかするだろう

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