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お嬢様は救世します2

「は? え? あれあの、あの魔物って確かSランク指定されていて、エエエエどういうことですか!? 一撃って、一撃って!」

「ふむ、これで終わりだな。どれハクよ、逃げたエルフたちを呼び戻してくれるかの?」

「はいお嬢様」

「あ、それなら大丈夫です。笛がありますので」

「笛とな?」

「はい、エルフにのみ聞こえる周波数を出す特殊な笛です」

 なんとか落ち着いた様子のコニアは、胸元にぶら下げていた小さな笛を取り出すと吹き始めた

 ふむ、確かに聞こえぬのぉ

 じゃが魔力波を感じる。どうやら周波数を整えるために魔力を使っているようじゃな

 笛を吹き終わるとどこからともなくエルフたちが集まって来おった

 きゃつらは師匠を見るなり構えおったではないか

「貴様ら、師匠に武器を向けるとは、命がいらな」

「待ちなさい! この方はこの里を救ってくださった恩人です! その恩人に殺意を向けるとは何事ですか!」

「しかし族長、そいつはあの世間を騒がせている魔王ではないですか! ほら、この人相書きとも一致します! 同盟族の人間が警戒令を敷いているでしょう! 大勢の人間を殺しています!」

「いえ、それはあり得ません」

「何を言っているのですか族長! 速く攻撃指示を!」

「いいから聞きなさい! 彼女こそが私の妹フィアを救い出してくれた方なのです」

「フィアを? しかし、魔王は…」

「ふむ、そう言われても仕方ない。じゃが我は一度たりとも人を殺してはおらぬぞ」

「それではあの殺された人間達の死体の山は何だったというんだ!」

「恐らく人間族による策謀です。おかしいとは思いませんか? 何故彼らは誰も知りえなかった大量殺戮の情報をいち早く入手していたのでしょう? 攫われた私の妹も、どうして人間族の国に? ここからはるか離れた場所です」

「しかしそれでも、フィアの証言が」

「今あの子の催眠を解いているところです。巧妙に隠されていましたが明らかに魔法の痕跡がありました。もう間もなく、あの子は正しい記憶を取り戻すことでしょう」

「それでフィアを医療ギルドへ?」

「ええ…。すみませんが魔王、様でいいのでしょうか?」

「好きに呼んでくれて構わん」

「魔王様、もうしばらく滞在していただけないでしょうか?」

「ハク、どうだ?」

「はい、他に悪漢の情報などは入っておりません。少しの間ならば可能です」

「ふむ、ではお言葉に甘えるとしよう」

「はい、その間に妹も帰ってくることでしょうから、きっと魔王様の悪評を晴らしてくれることかと思います」

「我は別に構わんのだがな。誰にどう思われようと、我は誰かを助けたいだけだ」

 まったく、本当にお人好しじゃのお我が師匠は

 とにかく待てば師匠の汚名も返上できよう

 ふん、人間族とは本当にいやらしい工作を仕掛けて来るものだな


 それから待つこと数時間ほどが経っただろうか

 日が暮れる頃にフィアというコニアの妹は里の若い者に連れられて帰って来た

 ふむ、姉とは違っておっとりとした少女だの

 これまた将来が楽しみな美少女ではないか

 舌なめずりをしておると師匠に後頭部をはたかれた

 痛いのお

 しかしまぁこんなに幼い少女だったとはの

 こんないたいけな少女を攫うとは不届き旋盤じゃて

「どうフィア? 何か思い出せた?」

「は、はい姉様。私を攫ったのは、獣人族でした」

「獣人族が!? そんな馬鹿な。彼らは攫われはしても攫うような者たちでは」

「あ、少し言葉が足りてませんでした。獣人族の奴隷の方たちで、首輪をはめられて逆らえないようでした。しきりに私に謝っていましたし」

「それじゃあその獣人を操っていたのは?」

「フードをかぶっていましたが、魔力の感じから恐らく人間族でした」

「なんと、人間族が我らとの盟約を違うとは!」

 エルフ族と人間族はお互い友好関係を七百年ほど前に結んでおったな

 あの頃の人間の王は賢王で良王だった

 まったくどこで間違えたというのだあ奴らは

 魔族を何故恨んでおるのか吾輩にはさっぱりじゃ

「人間は何を考えているんでしょう? 族長、調査隊を派遣しましょうか?」

「いえ、下手に刺激しては何をされるかわかりません。それほどに今人間族はおかしくなっているのです」

「そこらへんは我らが調べておこう。して、他に攫われたエルフなどはおらんか?」

「ええ、実はこの里以外でも他のエルフの里で多くの同胞が攫われているようです。エルフの王も悲しんでいるようなのです」

「そうか、よし分かった。我に任せておけ!」

「いいのですか? 我々はあなたを傷つけようとしたというのに」

「そんな些細なことどうでもよい。とにかく早い方がいいじゃろう。エスカ、すぐに城に戻る故お主の翼を貸してくれるか?」

「師匠の頼みとあらば」

 吾輩は神竜の姿に戻ると師匠とハクを乗せた

「ま、まさか神竜様、だったとは」

「いいかお前たち、お前たちは師匠の好意で生きていられるのだ。もし次に師匠に危害を加えようとするなら吾輩が黙っておら痛い!!」

「脅すな馬鹿者!」

「すまない師匠」

 思いっきりゲンコをもらってしもうた。く、ものすごく痛いではないか

 驚き戸惑うエルフたちを尻目に吾輩は翼をはためかせ、城まで一気に飛んだ

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