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お嬢様は救世します1

 魔王と呼ばれる少女は毎日のように誰かを救っていた

 その強さは比類なく、この世界の敵と認識されている

 彼女はただ世界をよりよく、全ての種族が手を取り合い仲良くなるための努力をしているだけだ

 前魔王であった姉の敵である人間族ですら等しく救おうとしている

 しかし人間族はそんな彼女をさげすみ、憎み、魔王と呼び何としても滅ぼそうとしている

 挙句には複数の勇者を選定して彼女の討伐を命じていた


 世界を、人々の心を救いたいといつも言っているのは我が師匠である

 吾輩の名はエスカナドゥ

 吾輩を下した師匠は魔族でありながら素晴らしい人格と力を備えていた

 だからこそ吾輩は師匠として仰ぐ

「師匠! 今日も特訓をつけてくれ!」

「すまないな今日はお預けだ。我はこれから行かねばならぬところがあるでな」

「ほぉ、では吾輩も行こうぞ」

「ふむ…。まぁいいじゃろ。今回は少し人手がいるかもしれぬ」

 師匠の戦いが目の前で見られるのか!

 吾輩はウキウキとした気分でついて行った

 同行するのは数ヵ月前にここに来た妖怪族の少女ハク

 特殊な能力がある故吾輩も非常に興味深く見ておるよ

 それに何より可愛らしい少女ではないか

 将来が楽しみである

 この歳にして美しい肢体と顔立ち、フワフワとした綿毛、まったく、吾輩のものにしたいくらいであるぞ

 まぁそれはないがな

 何せこの子は師匠が大切に思っておるでな

 手を出そうものなら半殺されかねない

 それにしても美しい

 吾輩も人型である今はそれなりに男目を引く容姿だと理解はしておるが、この子には遠く及ばぬだろう

 至高の存在と言える

 守りたいのお

「おいどうした? ついてこないのか?」

「すまぬ師匠、ハクに見惚れておったわい」

「またか、お主見た目がそれなのだからもう少し挙動をだな」

「分かっておるて師匠、しかしながら吾輩は雌の神竜であるからしてな、容姿はどうしてもこうなってしまうのだよ」

「はぁ、まったく、ほれ行くぞ」

「今回は何をするのだ?」

「ふむ、エルフ族の国にフレアキマイラが現れたそうだ。急ぎ向かいこれを討つ」

「ほぉ。フレアキマイラと言えば燃え盛る鬣を持つ獅子とエレメント体の頭のヤギ、自在に動き瘴気を吐き出す蛇の尻尾を持った魔物だな。吾輩ならば一撃で屠れるぞ。ちょっと行って消し飛ばしてこようか?」

「馬鹿者、お主が攻撃すれば周囲が火の海になるじゃろうが! エルフの森が燃えて無くなる」

「それもそうだの。それならば師匠がやるのか?」

「うむ、ハクよ、お主には周囲のエルフの避難を頼む」

「はい、お嬢様」

「それからエスカ、お主には瘴気が漏れ出した後の浄化を頼みたい。ハクだけでは少し無理があるかもしれぬでな」

「心得た」


 それから師匠はエルフ族の集落へ通じるゲートを開いて転移した

 吾輩とハクもそれに続く

 ちょこちょこと師匠について行くハクのなんと可愛らしいことか

 おっといらぬことを考えておるとまた師匠に怒られるの

「よし、二人とも手はず通りに頼んだぞ」

「はい!」

「うむ」

 まずはハクが走ってエルフ族の誘導を始めた

 白は妖怪族、エルフ族と友好関係にある妖怪族の言うことなら聞くことだろう

 手はず通りエルフたちは一人を除いて逃げたようだな

 その一人というのはこの集落の戦士長らしい

 名はコニアという

 彼女は集落を守るため吾輩たちと共に戦うと申し出たのだ

 吾輩はともかく師匠は魔族、それ以前に魔王だが、どうやらそこは関係ないらしい

「守ってくれるのでしょう? 貴方の正しい噂は聞いておりますし、この上なく心強い味方ですよ」

 理解のあるエルフだ

 しかし理解があるのは彼女くらいらしい

 他のエルフは他集落のエルフと同じように魔族を敵視しておるそうだ

 何故この者だけ?

 そう思っておると答えが返ってきおった

「あなたのことは妹から聞いております。人間族に捕らえられ売られそうになっていた妹を助け出してくださいました。本当に感謝しております」

 なるほどな、師匠が救った者の中にこの者の妹がおったのか、ふむ、縁とは実に奇妙なものであるな

 確か異世界から来たかつての吾輩の友人も、袖振り合うも他生の縁などという言葉を口にしておったような

 これも縁、師匠の成すことで一つになる世界、良いではないか良いではないか

「エスカ、結界を頼むぞ」

「うむ」

 吾輩の結界は瘴気程度では崩れぬ

 そうじゃな、この世界にある最大級の魔法を数百回撃てばひびくらいは入るのではないかの?

 

 結界を張り、吾輩がフレアキマイラを誘導か

 まずは件のキマイラを見つけ…

 そう思うておったら北の方で火の手が上がった

 吾輩の結界の丁度境目辺りか

 どうやら先に進めず炎を吐いたようじゃの

 その程度では汚れすらもつかまいて

 すぐそちらに向こうてキマイラの蛇尻尾を掴んで放った

「こりゃあああ!! 集落に当たったらどうするのだあほぉおお!」

 まずい、ついついやってしもうた

 師匠がお怒りじゃ

「このバカ! 幸い我が防げたからよかったものの! このバカ!」

 頭にゲンコをもらった

 痛うはないが師匠は怒ったら怖いからのお

 とりあえずキマイラの周囲にもう一枚結界を張り、師匠とエルフのコニアがその内部に入る

 ほお、あのエルフなかなかに強そうではないか

 人間族の勇者と同程度の力は感じるぞ

 まぁ、出番はないかもしれぬがな

 

 怒り狂ったキマイラが炎を吐き出すが、師匠の腕の一振りで炎は掻き消える

 その直後ヤギ頭が霧散して消えた

 なんという力じゃ、エレメント体なぞ吾輩でも最大ブレスでようやく消し飛ぶというのに、師匠は本当にあの腕一振りで

 これだから師匠に学びたいと思ったのじゃよ

 この圧倒的な力

 昔の吾輩ならばただ力が欲しいと思うだけじゃったが、今は違う

 その力で守りたいと思うようになれた

 これも師匠のおかげじゃな

 おっとそうこうしておったらキマイラが倒されたわい

 エルフの娘、何もできず口を開いて驚いておるわ

 ククク、面白い顔よのお

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