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プロローグ2

 ふむ、あれから我は幾人の人々を救っただろうか?

 セラビシア、お前は間違っていなかったが世界がお前を拒絶した

 前魔王の名を心で呼びかけ我はその思い出を胸に今日も人を救う

 約束だったなセラビシア、我が最高の姉上よ

「世界を救って」

 それが死にゆく姉上セラビシアの最後の言葉だった


 お嬢様は相変わらず人々を救っておられます

 その場に私も同行できることを誇りに思っていますとも、ええ、それこそ私の生きる意味だと思っていますから

「セラビシア、我は進んでいるのか? 世界は我が動き始める前よりも状況が悪くなっておるのではないだろうか?」

 お嬢様は時折私達の知らない方の名前を口にします

 それが誰なのか、先輩たちに聞いてもわかりませんでした

 でも、その名前を口にする時のお嬢様はどこか悲し気で、決意を胸にしているようでした

 いつかお嬢様の口からそのことについて語られる日は来るのでしょうか?

 

 私は今日もお嬢様について人を救いに来ました

 お嬢様と私、そして先輩であるエルフ族のサヴィナさんと三人です

 サヴィナさんは探知が得意で、これまでもよく一緒に活動してきました

 サヴィナさんが探知をして私がそれを元に先行して突入、先の状況をお嬢様に伝えます

 伝える時には伝達魔法というものを使うのですが、これは私がもともと覚えていた魔法なのです

 というのも奴隷だったときに色々な魔法を覚えたからでして

 今まで嫌々覚えたことがここにきてお嬢様の役に立てていることが私には嬉しいのです

「ハク、情報共有」

「は、はい!」

 少しお嬢様に見入りすぎていました

 サヴィナさんに怒られてしまいましたね

 彼女が探知した建物の中の情報を情報共有の魔法で私の中に流し込みます

 そのおかげで建物内の状況が手に通るようにわかりました

 そうでした、今回救うのはこの屋敷に捕らえられている複数の少女たちです

 どうやらその子たちは誘拐され、人間族の貴族に慰み者にされそうになっているようです

 どこからか仕入れられたお嬢様のその情報は的確なようです

 地下に怯えた少女たちが閉じ込められているのです

 さらに言うと、その地下に多数の遺体が転がっていました

 小さな子供の遺体です

 その子たちはここの貴族に弄ばれて、ひどい目にあわされて殺されたのでしょう

 つらかったでしょう、怖かったでしょう、妖狐である私にはそれが手に取るようにわかりました

 妖狐の力の一つに、死者との対話というものがあります

 彼女たちは未だ震え、その地下に捕らえられているのです

 ああ、私の力があれば、死者を助け出すことができるはず

「ではハク、行ってくれるか?」

「はい、すこしお待ちくださいお嬢様。内部から潜入できそうな場所を探します」

「ああ、気を付けるのだぞ」

 お嬢様とサヴィナさんに見送られて私は内部から侵入できるように中の調査を始めました

 見つからないよう動くのは得意です

 まわりから気配を消すのではなく、妖怪としての力、妖力を使って完全に消えることができるのです

 こんな力のために様々な悪をやらされましたが、今はお嬢様の正のために動けているのが嬉しい

 

 しばらく中を探っていると地下へと続く階段を見つけました

 そこを確認した後はこの屋敷の主、子供達を虐げている元凶の部屋を探します

 私では恐らくその貴族の警備兵にすら勝てないでしょう

 腐っても貴族、その護衛は相当な手練れと言えます

 私は確かに戦闘はできますが、それは一対一に限ったことです

 もし囲まれれば分は悪く、あっさり捕まるか殺されるでしょう

 だから私は部屋を確認して、どのルートで行けばいいのかを導き出します

 その後は内側から扉を開けて、お嬢様を手引きしました

「ありがとうハク、もう少し手伝ってくれ。それとサヴィナは子供達を助け出す手配を頼む」

「はい!」

「了解しました」

 サヴィナさんは子供達を救出した後の手配のために一瞬でどこかに消えました

 恐らく転移の魔法でしょう

 サヴィナさんは補助系魔法が得意ですので、恐らく仲間を呼びに行ってくれているのでしょう

 転移で連れてきてくれる手はずです

 ここに三人だけで来た理由は、あまり大人数で行くと気づかれて救援を呼ばれる可能性があるからです

「よしハク、案内を頼んだぞ」

「はいお嬢様」

 お嬢様を連れてまずは地下へ向かいました

 先に子供達を連れて脱出させるのです

 脱出までは私が子供達を案内します

 それは子供達が人質に取られないためです

「ここか、少し下がっておれ」

「お嬢様、静かにお願いします」

「分かっておる」

 お嬢様はゆっくりと強固な牢の扉を破壊しました

 静かにと注意したのにまあまあ大きな音が立ってしまいました

 幸いにも警備兵は眠っているようで、なんとか気づかれずに扉から子供達を連れ出せました

 子供達を逃がす前に少しやることがあります

 それは御魂送りという妖狐族が使える儀式魔法です

 ここに囚われた子供達の魂を成仏させるためです

「我が守ってやるから存分に魂を安らげさせてやれ」

「はい、お嬢様」

 御魂送りを始めるとさすがに警備兵も気づきましたが、お嬢様が殴って気絶させていきます

 おかげでスムーズに儀式を終えることができました

「ありがとうお姉ちゃん!」

 最後に送った一人がそう言ってくれました

 私は涙を流してしまいました

 その直後に私は子供達を連れて走りました

 子供達も必死になってついて来てくれています

 お嬢様は、警備兵を蹴散らしつつ私の伝えた貴族の部屋へ走って行ってしまいました

 毎度のことながらお嬢様はこういった犯罪を目の当たりにするとものすごくお怒りになります

 子供が事件に巻き込まれるのが耐えられないと以前おっしゃっていました

 私達が外に飛び出すと同時に、窓から貴族の男が放り出されるのが見えました

 幸いなことに生垣の上に落ちたのでけがはないようです

 恐らくですがお嬢様はそこまで計算して放り出したのでしょう

「う、ぐあ、俺を誰かわかってこんなことをしているのか魔族のくせに!」

「お前こそ子供にこのようなことをしてただで済むと思っていまいな?」

「な、何をするやめろ! こ、殺さないでくれ!」

「殺しはせぬ、ただ、二度とお前は考えることもできぬ、ただ糞と小便を垂れ流すだけの人形になるんだ。どうだ? 何も考えなくて済む。幸せだろう?」

「ひ、やめ」

 お嬢様は貴族の脳をいじって何もできないよう書き換えました

 最低な男にふさわしい末路だと私は考えます

 しかしながらこのような魔法は聞いたことがありません

 マインドフレアという魔物は脳を食べる魔法を使うと聞きましたが、書き換えるというのは魔物でも出来ないことです

 お嬢様は本当に不思議な方です

 ときおりこのような見たこともないような力を使われます

 まるで、この世界の者ではないかのような…

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