未来4
おじ様がエミリアに手伝ってもらいたいことと言うのはお料理でした
どうやら私達に特製の料理をふるまってくれるようなのです
「今日は歓迎会だよ、君たち好き嫌いはあるのかな? おっとその前に、ゼアさんたちは食事はとれるのかな?」
「問題ありません。私達Zシリーズは食事によるエネルギー補給も可能です。 ただ、食事と言うものを生まれてこの方したことがありませんので、どのように食べる、というのかがよくわかっていないのです」
「そっか、じゃあそれは私が教えるよ」
「エミリア、ありがとうございます。何から何までこのようによくしていただいて」
「ところでなんだけど、そろそろ話してくれないかい? 封印されていたというこの子達はなぜ封印されたのか、それと封印を今になって解いた理由をね」
「確かに、それは私も聞きたいところです。お嬢様はなぜ封印されなっければならなかったのでしょう?」
今は分かります。この三つ子たちには敵意はなく、私達を封印せざるを得ない状況だったということが
ただその理由が知りたいのです
「そうですね、話しておかなければなりません。しかしそれには私達が作り出された理由と、姉のディスのことについてもお話しなければなりません。少し長くなります」
「じゃあその間に料理もできそうね。どう、ハクちゃん、大丈夫かな?」
「はい…。お嬢様は未だ目覚めませんが、私が聞いてお嬢様にお話ししたいと思います」
「分かりました、では語りましょう、私達がなぜ魔王を封じなければならなかったのかを」
それからゼアはゆっくりと話し始めました
彼女たちは有機高知能生命体という人工生物で、数億年前に神によって創り出されたのだそうです
その神と言うのはこの世界を創り出した方と同じで、いずれこの世界が滅びることを知った神はその滅びを阻止するために彼女たちをサポーターとして創ったのです
彼女たちは生み出されてからまずディスと言う最初の成功例、つまりちゃんと生まれることができた最初の個体がディスと言うことです
そのディスに一つの指示を出しました
それがその当時の人間族の動向に気を配りつつ、魔王を滅ぼしかねない人間族の制御と抑制をすることです
人間族はその時どうやら強力な魔導兵器を作り出して、お嬢様の城ごとお嬢様を消し去る算段だったようなのです
神はその兵器を危険と判断してディスにその破壊を命じたのです
しかし間に合わず、その兵器は使用されてしまいました
それが、あの時お嬢様を襲った白い光なのです
あの時もし私が飛び出していなかったらお嬢様は消えていたというから恐ろしい話です
私がお嬢様をかばったため攻撃がそれて、その直後に私達二人はディスに保護される形で封じられたのでした
そしてその兵器によって、世界は魔法を失ったのでした
その兵器は世界の根幹から魔力を吸い出し、その魔力全てを注ぎ込んでお嬢様を消し去る算段だったのです
一度しか使われなかったその兵器は、全ての魔力を吸い上げてしまったのです
それにより世界は混迷しました
魔力を糧としていた魔物が死に絶えたのはまだよかったものの、その魔力が生命の源であった精霊などまでもが段々と消え、世界は荒廃していきました
しかし何万年もの時を経て、人々は、生命は進化を果たしたのです
魔力の要らない体
それにより生き残った種族たちはそれぞれで再び国を造り、今まで魔法に頼っていた生活を機械と言う力に変えることでその技術を発展させていったのです
機械以外にも、錬金術は科学へ進化していったのだそうです
そしてお嬢様が封印された理由なのですが、そこが一番の驚きどころでした
なんとお嬢様は件の神様の、娘様だったのです
その絶対的な神様はある日二人の子供を産み落としました
一人は姉として、もう一人は妹として、姉妹で産み落としたのです
姉は妹を守るため、妹は世界を守るためにこの世界に生まれたのですが、そのことはお嬢様は知らされていないのだそうです
お姉さまの方はお嬢様を守って亡くなったと聞きました
「しかしそれなら、なぜお姉さまはお嬢様ほどの力を持っていなかったのでしょう?」
「それは姉君のセラビシア様が全ての力を魔王、メナリア様に与えたからです。メナリア様こそ世界を救う希望でしたから」
そのセラビシア様は死後、魂の存在となり、神様の元へと戻ったのだそうです
つまり、その神様に会うことができれば、お嬢様は最愛の家族に会えるということではないのでしょうか?
母親とお姉さま、そのお二人に会えるのです
しかしゼアはそれは難しいと言いました
何故ならこの世界はあの兵器作動以来隔絶されてしまったからです
隔絶された理由、それは兵器は未だ生き続けているからなのです
あの後魔力が尽きたこの世界から兵器は次元の壁を開いて別世界へと逃げようとしたため、神様が隔離したのです
「そうです、魔王メナリア、神の子メナリア様を封じ、この時代に封印を解いた理由、それは、その兵器を屠ってもらうためなのです」
驚愕に一同開いた口が塞がりませんでした
兵器は、今この時代に再起動して、自ら兵器の軍団を作り出して動き始めたのです
お嬢様の背負わされた使命に、私は胸が痛くなりました