お嬢様は救世します8
城に戻って来たはいいのですが、お嬢様はまたも出かけなければなりません
今度はなんとドラゴニュートさんたちのいる国、エルサルです
第三王女であったクルエルドさんの国を取り戻すための戦いに行くのです
その国は人間族と繋がっているためもし攻撃すれば人間族が黙っていないでしょう
本格的に魔族と人間族の戦争が始まるかもしれません
しかし今はこちらに風が吹いて来ています
エルフ族に次いでドワーフ族も魔族についてくれました
戦力的にはまだこちらの方が少ないのですが、お嬢様がいつも使用している魔道具などの提供をエルフやドワーフにし、量産してもらう予定なのです
そうなれば人間族に対抗できるだけの戦力になるはずです
戦争は、人々の心を貧しくします
お嬢様は誰も殺しません
やれるだけの力はお持ちですが絶対に人を殺さないのです
お嬢様はいつも言っております
「我が人を殺せばそれは奴らと同じになるということ、人間族にも帰りを待つ者や大切な者がいるからな」
生かすことは殺すことより難しいと言います
でも圧倒的実力差のあるお嬢様なら一騎当千でそれができるのです
例えば気絶させたり、眠らせたり、麻痺で動けなくしたり、操って武装解除させて投降させたりと、お嬢様ほどの実力者になれば様々なやり方があります
優しい戦い
お嬢様はこちらに被害が出るのも当然嫌います
そのためお嬢様は特別なリンクを私達と繋げています
それは死に直結するようなダメージをすべてお嬢様が肩代わりし、なおかつある程度の回復効果を発揮するリンクなのです
そのようなダメージがお嬢様にフィードバックすればお嬢様がただでは済まないはずですが、お嬢様はなぜだか涼しい顔です
少し前にお風呂にご一緒したときもお嬢様の体には傷一つないのです
それはお嬢様が受けた傷を超高速再生の力で再生しているからなのです
常識では考えられないほどのその再生能力は、たとえ首を切られようとも有効だというのがすごいです
お嬢様の力は唯一無二
もしお嬢様が本気で怒ってしまわれたなら、この世界はなくなってしまうでしょう
「ふむ、そうか、クルエ、我は一足先に行って人間族がなにか企んでいないかを確認しておく。大丈夫そうならこの転移門でハクと来てくれ」
「分かった魔王ちゃん。でも気を付けてね」
「ところでクルエよ。竜化は万全か?」
「うん! 神竜様のおかげで無事竜化できるようになったよ! 魔王ちゃん、だから」
「うむ、我は死地に赴くわけではない。お主の国を救いに行くのだ」
「きっと、国を取り戻すから、安定したら国交を結ぼう。それから、友達に」
「何を言う。とっくに我はお主と友達だ」
お嬢様とクルエルドさんは固く握手を交わしました
きっとこの二人ならばエルサルを取り戻せるでしょう
そのためにも私は、クルエルドさんのサポートに徹しなければなりません
作戦はこうです
まずお嬢様が開くの宰相ガストーが国を出るのを確認したら私に連絡が来ます
それと同時に私は妖術で国に侵入、内部にいる協力者と合流してから安全を確保、その後クルエルドさんに連絡して内部に侵入してもらいます
その際の侵入経路は私が確保しなければなりませんが、それは私の得意とするところです
この作戦ではどうやら私が重要な部分を担うようなので責任重大ですね
クルエルドさんが侵入したら私達と合流してからさらにレジスタンスたちのいる隠れ家へ
そこからは各レジスタンスと共に城に攻め込んで城を制圧します
制圧後、恐らく戻ってくるであろうガストーをお嬢様が捕まえます
あとはクルエルドさんが王女として全ての処理をする予定です
「よし、作戦はしっかりと頭に叩き込んだな?」
「はい!」
「うん!」
「では我は行くぞ。合図を受け取ったら続いて来てくれ」
お嬢様はそういうと転移門をくぐって行ってしまわれました
一番危険な人間族の動向を探るという作業、お嬢様が不死身のような再生力を持っているとはいえ心配です
しばらくするとお嬢様から連絡がありました
「いいぞ、来てくれ」
「はい!」
お嬢様の合図で私とクルエルドさんは転移門に飛び込んで国を取り囲む兵まで一気に走りました
私の妖術で姿を見えないようにしたので誰にも気づかれませんでした
私は壁を妖術で溶かすと内部に侵入しました
その直後に溶けた壁を幻術で元通りに見えるよう偽装しました
また走って、送られてきた地図の通りに進むと普通の家があるのが見えます
ドアの前で合言葉を言うとゆっくりといらが開いて私をガシッと誰かが掴んで引き入れました
「ひっ! これは、そんな」
「すまんなお嬢ちゃん、家族が…」
私はそのまま拘束され、眠らされました




