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黄昏の故郷へ捧ぐイメージ

作者: 辿星あれき

私にしては長めの作品。東方の本編シナリオベースと早苗の人間性を、原作のファイルに入ってある設定資料を主軸として考察しました。

楽しめや。

───私は何のために幻想郷(ここ)に来たんだっけ…。

思えば私は安易な選択をしてしまったのかもしれない。信仰を集めるということは大変なことで、それに幻想郷(こっち)にも他の宗教が存在するのも当然で…。

勝負に負けて、仰向けに倒れ、眼前いっぱいに広がる夕焼けは早苗(わたし)の無力さを痛感させる。あまりに空が綺麗だから。この世界に負けたのだと思い知らされているようだった。

「あの……はぁ…、紅白の人───」

強かった。初めて幻想郷の人と戦ったけど、なんでかあの人は特別な感じがした。(だって、あんな超人じみた挙動をする人がありふれていてたまるものですか!!)

動きが軽やかであった。私の星を模した弾幕を、あっさりと避けていた。あの動きは私の鈍くて重たい動きとは別物で、重さが感じられなかった。それでいて針孔がスッキリ入る時の爽快感みたいなものがあった。あんなの、神奈子様でもきっと勝てない。

私は、果たしてこの世界で現人神として信仰を集めることができるのでしょうか…。私の目的がなんだかただの幻想のように思えて(幻想の郷へ来たからかな?)、馬鹿馬鹿しくなって泣くしかできません。

涙なんて感動ものの映画とか、親に説教された時に、感情に寄り添うようにわざとらしく流れてきていたのに。今だけは、敗北の光景が頭でリピートしながら、感情を感じる余裕も無く、泣いていた。

きっとこの世界からしたら私たちは異物。どう処分されるのでしょうか。負けたことの悔しさ、夢破れたことの喪失感がそんな嫌なことを想像させる。でも、あながちただの幻想でもないのでしょう。私たちは犯罪者ですから。盗人ですから。そのような処罰されるのは当然でしょう。

「ほんと、なんで幻想郷に来ちゃったのかな…。」


<黄昏の境界・原風景追憶~Old memory~>


───キーンコーンカーンコーンー。

放課後を知らせるチャイムの音。帰りのホームルームが終わり、ほぼ義務教育ともいえる高校生活の癒しとなる時間の始まりです。

「早苗ちゃん、先週できた駅前のカフェに行かない?」

「”喫茶398”だっけ?笑ってよいともで紹介されてたんだっけ?」

まるで毒そのものなんじゃないかってくらい紫のスムージーが噂になっている店です。あの禍々しい見た目で着色料を使っていないのだから驚く。

「よいともで紹介されてたの?わざわざ録画でもしてるの?」

「お母さんから聞いただけだよ。何?それでこのまま直行するの?」

「もちのろんよ!!」

少々、おじさん臭のする女友達であった。


「バイバイ早苗、また明日!!」

「うん、またね」

流行というのは刺激的であるから起こるもので、質なんて関係ない。パープルスムージーはまさにそれを体現したようなもので、シンプルにまずかった。世間からしたら「そんなの関係ねぇ」っていう感じなのだろうけど。それにしてもああ…。

「社会かあ…」

私もいずれは、というか近々社会人になるわけでそんなコミュニティに属するようになるわけで。


果たして私は私であり続けることができるのだろうか?


いづれはこんな幼稚な反抗心は幻想でしかなくなるのに、けれどそんな時が訪れるのがとても怖い。

失うのが、色あせるのに怯えているのではないですけど、けど時々想うのです。

大人になった私は笑えているのかと。

大人になるからには中途半端であってはいけません。ですからきっと笑えてるんでしょうが、後悔も何も無いのはかなり寂しい。

夢見ることは悪いことではありません。けれど快楽主義に流されるだけの人生ならばそれは流行と同じ刺激があるだけの空っぽの毎日。

そんな子供叔母さんになりたくない。

「大人になるってどんなこと?」

気付けば太陽は沈み始めていて、空が淡い紫のような色彩をしていた。

そろそろ帰宅せねばと脚を急かす。こんな綺麗なだけの世界に取り込まれないように。

私は強くなくてはいけないのだから。形だけでも現人神であるのだから。

───私は強くなれるのでしょうか……。


<黄昏の境界・幻風景夢想~Dreamer made in human history~>


───私は強くなれたのでしょうか……。

幻想郷(ここ)の空は現実の世界(あっち)より透き通って良いものであった。私のしたかったことって何だったけ。現人神として、私らしく生きていこうとしたかったんだっけ?分からない。

そもそも現人神であることが私そのものの個性であったのだろうか。知らない。そんなの自分でも知り得ない。

けれど、案外。

「後悔してないな」

いちいちくよくよしてたら駄目だ。今ならまだ間に合う。神奈子様と共闘してやる。

全く違う世界へ来たんだ。ならできることはやりきらなきゃ!!

空は赤く、今は秋なんだと思った。秋は何だか淋しい季節で、風の寒さ相まってどこか自分を物足りなく感じることが多々あった。けれども、今の私には明確な夢があるから。

ちっとも虚無感なんてない、私の生きがい、現人神として信仰を集めてこの世界を良いものとしなくてはいけないんだから。

空に手を伸ばし、神社の方を見る。

あそこは私の家。私の全て。だから──!

だなんて決意しかけた時でした。

「おっ、霊夢か?」

情熱のスピーチを脳内で繰り広げていた私は呆気をとられ、思わず変な声を出す。

「ふぇ!?」

「いや、霊夢にしちゃちょっとだけ髪が緑っぽいな。妖怪か?」

振り返ると参道に白黒の服を着た金髪の魔女っぽい少女が立っていた。

「誰が妖怪ですか!私は東風谷早苗、風祝(かざはふり)にして外の世界からやってきた現人神です!!」

「そんなことはどうでもいい。それより私は悪い神を懲らしめにきたんだが、まさかあんたのことか?」

おどけたように、けれどその眼は鋭く、ただものではないように感じられた。

「あなたの言ってる方は恐らく神奈子様のことですね。けれども神奈子様は悪い神様なんかじゃない。知ったような口を聞くな」

「けどそいつがいるせいで、あいつが困ってるんだ。だから私がなんとかしたら借りを作れるし、それに、もしかしたらあんたらが原因で幻想郷のパワーバランスがおかしくなるかもしれん。悪者は自分の思ってることがなんでも正しいと思うから悪者なんだ」

「その理論だとあなたも悪者ですが…」

「悪者はそれを自覚できないから他人になすりつけたがる」

やれやれと。ふざけた人。そうか、こんな自分勝手な人がいるから信仰が薄れてしまっていたのだ。

「あなたに目的があるように私にも夢がある。その夢は神の信仰で世界を平和にすること。あなたの

ような悪い変な人も救わなければいけない。だから、現人神による奇跡を起こす力で倒してあげます。」


<黄昏の境界・幻想恋乙女進める道~Pure philosophy and honesty~>


目が覚めて、パン食べて、歯磨きして、家を出る。学校で勉強して、お昼を食べて、家に帰って、一息つく。テレビを見たり、雑誌読んだり、勉強して気づけば時間が経っている。

お風呂に入り、歯を磨き、お布団に沈み、虚無に落ちる。

大体いつもそんな感じ。ただ消費される、いつからか続く流行もどき。

大人になることを考えた時、その時からすでにこの悩みは始まっていた。

好きな人もできなく、流行に不安を感じ、将来を憂い、そして流れてゆく。

こんな日々に意味があるのでしょうか。生産性があるのでしょうか?

そんなことを拠り所もなく思いながら帰る帰り道。そもそも私がなぜこうも悩み始めたのかは理由がある。

というのも私は現人神であった。過去形。そう、それは過去の儚い称号。

私の血筋はこの地で信仰されていた神様のもので、小さい頃から小さな奇跡が起こすことができた。

というか今もできる。

この力で昔は信仰を集めていたらしいのだが、私の時代では科学が発展し、神様を信じないようになっていた。闇が妖怪を見せていた時代から、電気が現実を見せる時代へと様変わりしてしまったのだ。

ですから私の変な力は何の役割も持たず小さな個性でしかないのです。

私がそんな力を持っているからでしょうか?現代の人間社会が神秘を忘れた存在だと考えるようになり、私が特別だと思えるようになり、この個性を大事にして生きたいと胸に秘めるようになったのです。

けれど現実は非情なもので、そんな奇跡の力は気味悪がられ、胡散臭く思われるわけで結局は不要なものでしかありません。

私、こんな世の中に生まれどうしたらよいのでしょう?現代に科学がなければ、私の力は無駄にならなかったのに。

このまま凡庸な存在として死んでゆくのが堪らなく恐ろしい。

生きた証を残さず消えていくのは嫌だ、どうすれば…。


私にとっての原風景。そこがここ、「守矢神社」。ここには髪型がファンキーな神様が暮らしております。

「早苗、久しぶりだな」

「ええ、なんとなく訪れたくなったもので」

賽銭箱の上に座っていらっしゃるのが私の言う神様。名前を八坂神奈子という。

神奈子様の後ろにはしめ縄が浮かんでいる。それにはいろいろと意味があるらしいのだが教えてもらったことはない。飾りらしいのであんまり特別な意味はないのでしょうけど。

「まあゆっくりしていけ、どうせ今日は学校が休みなんだろう?」

「ええ、ですから長く居座ります」

ここ守矢神社は田舎町の陰気臭い所にある。神社以外はたいしたものは無く、信仰の薄れ具合が見て取れる。けれど私はこの地が好きだ。周辺には木が少しあるだけで余分なものがなく、私の住む郊外の町には無い神秘的雰囲気がここにはある。

「なあ早苗、あんたがここに来たってことはナニカ悩みがあるんじゃないか?」

「流石神様ですね。まさに今相談しようと思っていたところです」

そういうと神奈子様は少し自慢げな表情をした。神様と言われれば圧倒的オーラを放つ絶対的カリスマを想像するけど、神奈子様は違う。なんというか親しみ易いというか、人間っぽいのだ。

「実はですね、進路に困っていまして」

「?、大学とかいうとこに進学するんじゃないのか?」

「進学は大人になった後の恩恵の予約みたいなものです。けれど、それで良いのかなと疑問に思いまして」

そう言うと神奈子様は首をかしげる。

「良いだろう。早苗が将来何の不自由も無く生きていけるのなら私としても嬉しいことはないよ」

「けれど不自由無く暮らしてもそれは楽しいものなのでしょうか?」

そう私は呟く。放たれた呟きは風の音にかき消されることなく辺りに飽和したようだった。

「生きていられるだけマシさ。あんたら人間とは違って私たち神様は信仰さえされなくなったら存在意義が確立されなくなるんだ。」

「神様は儚いんですね」

「それは人間もだがね」

そう強く神様の口から出てきた言葉はどこか哀愁があった。

「拠り所が変わったんだよ、人間は。今じゃ科学の犬じゃないかやつらは。人間は心が弱いから昔は神様の概念を生み出して心の支えとした。けれど、心が脆く、また脆弱なままに科学という力を生み出した。信仰はそんな儚い人間のためにあったのにいつの間にか幻想に追いやられてしまい、やがて忘れられてしまった。」

「ある種の進化ですね…」

「進化というか、流行が変わっただけだよ。全ての決定権は最終的には人間にある。そして古い流行は死んでしまう。」

「…」

「だからよ早苗、生きてるってことはそれだけで素晴らしいことなのだ。神様のように途中退場がほぼほぼ無い生き物なのだ。そもそも何かを残して何になる?おまえが思ってるほどこの世は絶対的ではない。そして人間も完璧な存在ではないのだ。だから凡庸なままに死んで何がおかしい?おまえら人間は快楽主義に流されてしまっても良いのだ」

有り難い神徳なのだろうか。その言葉はとても慈悲深く暖かいものであった。けれど、けれども。その言葉を鵜呑みにしても良いのだろうか?

「人間がただで死にたくないように、当然私も死にたくはない。私は軍神なのだから。死を恐れてなくとも良いものとは思わない。だからな早苗、私は引っ越ししようと考えているのだ」

「ひっこし?」

まさかそんな言葉を神様からえらく現実的なことを聞くとは思ってもいなかった。

「なあ早苗、私の言葉がおまえのお悩み解決の決定打とならないことは自覚している。だからここでおまえにとって魅力的な提案をしようと思ったのだ」

「提案と言いますと?」

神奈子様は神妙な口調で言葉を続ける。

「このままでは信仰が無くなり、私と諏訪子は近いうちに消えてしまう。だから幻想郷という世界に移住しようと考えているのだ」

「幻想郷?」

「いつか聞いたんだよそんな儚き美しき都のことを。なにもその世界は忘れ去られたものが辿り着く世界であり、妖怪が存在意義を求めるために作り上げられた世界なのだ」

「はぁ、そんな場所が…」

「そんな場所にいきなり神様が降臨してみればどうだ?妖怪どもは恐れおののくだろう。これでは信仰が集まらない。そこで現人神である早苗も同行することで親しみやすくなると思うのだ」

「行ったらこの世界に帰ることはできるんですか?」

「できない」

即答である。

「行きはよいよい帰りは恐いというように、幻想としてあっちに行ったとしても、一度忘れ去られたものが思い出されることのないように一方通行なのだ」

「なら行きます!!」

「即答かい!?」

神奈子様は驚いた様子である。私が即答したのは理由がある。

このまま幻想になってしまえばこんななんにも神秘の無い世界からおさらばできるからだ。

また、純粋に妖怪のいる世界というのも気になるし、その世界に行くことで私の役割ができるからだ。

「やるなら後戻りできない方が良いのです」


後日、この話は諏訪子様の耳にも届いたらしい。神奈子様曰く、「結構さっぱりな反応だったよあいつは。あんたと同じ血筋なんじゃないのか?そんぐらいのあっさりとしたやつだよ、諏訪子は」。

ともわれこうして私は幻想郷に行くこととなったのだ。私が私らしくあるために───。


<黄昏の境界・悪者とヒーロー~Wishes burned out~>


「大奇跡「八坂の神風」!!」

これが今の私にできる精いっぱいの大技。さっきの紅白巫女との闘いでボロボロになった体。けれど、神奈子様を馬鹿にしたこいつは許せない!!

「おっと!」

風の流れを表現した弾幕を川の流れのように流す。白黒のを突き刺すように力を放つ。

光の玉を合間に時々流し、少女を追い詰めようとする。

けれど、けれど───!

「ふん!!」

少女は交わす。さっきの巫女は避けに芸術を感じる、凛としたものであったが彼女の場合は豪快であった。

それでもその動きに見惚れていてはならない。私は勝たなければならないんだから!

倒す。貫き通して見せる。

「避けるにも単調な動きで回避できる。まあその単純さがお前の心愚直さ、誠実さを表しているんだろうな。ちょいとどんくさいとこが残念だったが」

「…!?」

その口ぶり、そして態度からまるで日ごろから弾幕を研究しているようである。その証拠に豪快ながらも安定感のある動きである。動き続ける弾幕と弾幕の間において、ずっと中央をキープしている。

「なかなか良い弾幕じゃないか。じゃあこっちもいくぜ」

「恋符「マスタースパーク」!!!」

星型の弾幕が縦状に降り注ぐ。星の雨みたいに綺麗であった。そしてそれに惹かれていると太い光線、というかライトのようなビームが視界を支配した。

「「避けなきゃ」」

精いっぱいに体を捻らせて体の重心をぎりぎりまでずらしてかわす。

するとビームが終わった。

───今度は私が!

「ほれ、第二波だ」

第2波が訪れる。

「私の弾幕がそんな短い訳ないだろ。弾幕ってのは自分を表現する遊びでもあるんだ。悪者を懲らしめる正義の味方が私さ!うん、きっとこれは良いことをしている」

第2波もなんとかかわす。かわしたけれど。それは運が良いときに見る流れ星の連鎖のようだった。奇跡が起こっているようだった。魅了される半分、これじゃあ勝てないと察してしまった。

「あ…」

体が落ちていく感覚に襲われる。空中から落ちていくのだ。

「ん?て、おい!大丈夫か」

魔女の栗みたいな口が確認されるが間もなく落ちる。

そんな気の抜けた声がだんだんと遠くなっていく。負けた。私は夢破れてしまったのだ。空がかけ離れてゆくことを今さらながら認識する。この愛しき世界から切り離されたようだった。


<黄昏の境界・乙女の挫折~Illusions are for ephemeral humans~>


夢を叶えるってどんなこと?キラキラした希望を磨きあげること?

そんな初歩的な疑問が思考の渦の中でざわめく。そんな葛藤の波にもまれながら流されてゆく感覚に犯される。私の希望は儚い幻想でしかなかった。そうだ、そうなのだ。現実の世界では私は特別だったけれども、妖怪も巫女も魔女もいるこんな世界なら私はありふれた存在でしかないのだ。

崩れ去った望みを悲観する。マイナス思考に支配されるほかない。

どこで道を踏み間違えたのか。どうすれば私は幸せになれたもだろうか?分からない。

気付けばそこには原風景が広がっていた。守矢神社があった。みすぼらしかった。けれどオカシイのは後ろを振り返るとそこには改装されたであろう、綺麗な守矢神社と思しきものが建っていた。

それを視認すると体は前方に吸い込まれてゆく。汚い神社に吸い寄せられてゆく。

私はそれを不快に思った。

「嫌だ!私は進むって決めたんだ!!」

けれど私の想いに相反する形で引力が作用する。嫌だ。嫌だ…。嫌だよぉ───。

そうして私は堕ちていくのか?中途半端に、場に流されてゆくのか?この情熱も移ろってゆくか?

きっと私は、未来の私はそれを嘆かないでしょう。この幻想(ねがい)は空気の中に溶けてゆくに決まってる。

けれど、けれども───!

「私は今のこの気持ち(はかなさ)を大切にしたいんだ!!」

辺りに怒声が木霊する。すると背中に嫌な汗が走る。振り返ると大量の目玉に囲まれた、綺麗な守矢神社がそこにはあった。

それに気づくと声が聞こえた。胡散臭くも優しい声で。

「良いでしょう。あなた一人ごときでパワーバランスに影響はありませんもの。時代には柔軟であるべきでるから。幻想郷は全てを受け入れますので…」

すると引力が逆転し、後ろに体が吸い寄せられる。巻物を巻くように吸い込まれてゆく。意識が朦朧とする。最期に見えたのは黄昏に沈む故郷のように感じられた。


<夢は儚し歩めよ乙女・勇敢な少女の薦める未知~Next Dream~>


場所は変わってここは博麗神社。守矢神社よりもボロっちいく、こんなとこに信仰が集まるのかと心配になるようなところでした。けれど、そんなことは心配いらないようだ。木の周りで妖精たちが飛び回っていたり、半分幽霊な人がいたり、私のいた世界では幻想に片づけられていたような存在たちが飲んだり、談笑したりと楽しんでいました。人間の信仰を集めるのが常識だった元の世界から来たもので違和感はありましたが、妖怪の信仰というのも人間のものとも変わらないんですから博麗神社は衰えることは無いのでしょう。

「なんっだよ早苗、私の酒が飲めねえのかよ」

「いえ飲んだことがないもので」

結局、神奈子様はあの後紅白の巫女さん・博麗霊夢さんに退治されたらしい。本人は素敵な巫女と自称しているらしいので、紅白の巫女と認識するのは失礼に値する。しかし第一印象は中々変えられないものでしばらくは呼び方を変えられそうにない。けれど良いじゃないか、紅白というのも縁起が良い。

「なんだよ、外の世界にはお酒は飲んじゃいけないなんて規則があるのか?」

「似たような、っぽいような…。20歳まで飲んじゃいけないんですよ」

私と会話をしているのは白黒の魔女・霧雨魔理沙さん。本人は普通の魔法使いを自称している。

第一印象はあまり良くなかったのですが、話してみると結構楽しい人で、魔法使いの割には人間味が強い、いわば年頃の少女のようでした。

「けどここは幻想郷、早苗を縛る厄介なものなんざ何も無いんだ。酒を飲んで、馬鹿騒いで、自由になって何もかも忘れて楽しめば良いわけだよ」

「…」

杯には、日本酒?が入っておりました。やはり年齢的に妙に抵抗感があるんですが、でも。

「─!」

勇気を出して飲むことにしたのです。

「あんまし美味しくない」

「飲めば慣れるさ」

今の私は幻想郷の住人。ですから私はこちらの常識に合わせなければなりません。

「そういえばおまえのとこの神様はどうしたんだ?」

「山の妖怪たちだけでひっそりと宴会を開いて親交を深めております」

「このボロ神社に負けないようにか。健気なもんよな」

「そこが可愛らしいのですけどね」

「あんたの神様なのに?」

「人間らしい神様ですので」

実際、神奈子様が個別で宴会開いたのは私への気遣いがあるのだろう。この世界により馴染んでほしいから、だから一人でよこしたんじゃないのでしょうか?

酒を食らいながら感謝する。信仰と親交は紙一重。あれ、実はそういう目的もあったんじゃないか?

にしても…。

「幻想郷サイコー!!!!」

神様もありふれている世界、私の体験したことのない神秘がこれから訪れるはず。待ってるはず。

私は強くなったんだとか大人になったんだとかじゃなくて、ただ今そんなものがどうでも良くなって、酒を飲んで飲まれて忘れられる。いつかの幻想を酒に忘れることができる。うはあ。お酒って飲めば案外いけるものなんかもしれない。

空がピンクに見え、揺れて、それにうっとりとする。

どんなに凡庸だろうと、それを忘れる楽しみがあるのならそれに流されてしまって案外良いのかもしれない。

「ちょっと、早苗。あんたもしかして酒弱いの?」

苦笑いする霊夢さんが心配そうに近寄ってくる。

「私は弱くなんてありません!!!!」

「「駄目だなこりゃ」」

白黒の人と紅白の人にため息をつかれる。なんですか4人して私に向かって。いや、白が重複してるから3人か。

「うわーい、いぇーい。…クカァ」

「酔いつぶれたなこりゃ」

視界がぐらついてる。頭が変だ。これがもしかして酔いというやつなのか?夢と幻想郷(ここ)の境界があやふやになる。けれど、幻想郷と外の世界との境界はきっとこれからは揺らぐことはないはずです。

私にとっての境界(はかなきこころ)は、今を向いているのですから。


おやすみなさい。そしておはようございます。

生きるってどんなこと?大人になるってどんなこと?

早苗さんの出る5面・ボス曲で流れるのは「信仰は儚き人間の為に」。これに原作者ZUNさんはこのBGMに「今作一思い曲調」とコメントしています。ですから早苗さんはなにか強い気持ちを持って幻想郷に来ていたと考察できます。

そのため高校生の悩みといったら…みたいな感じで考えたら、このような形となりました。

今作では早苗は周りに流されずに、自分らしさを貫きたいという思春期特有の悩みを最初に抱えています。

早苗はまじめな子ですから将来を想像しながら、生きていくような人だと思うのです。

それで、彼女は個性を貫き抜きたいと幻想郷へ行くことを決意します。

外の世界では神秘の欠片も無い世界ですので自分は特別な存在とイキってしまってるので自信満々で行きます。

けれど現実はそんな上手いものではなく、早苗は神秘の中のありふれた存在になってしまうのです。

けれど、今までのストレスを全て発散して、当たって砕けることにより世界を大きく見ることができるようになり、適度な快楽主義も良いのではないかと思うようになるのです。

人間なんてただ生きていれば消えてゆく存在。神様も同じ。

人間って罪な生き物ですよね?

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