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異世界で子育て始めました  作者: あるみす
10/19

錬金術師

幻の10話です

 朝食を済ませ荷物をまとめた俺達はルウに上空からアステカの神殿の場所を見つけてもらい、目的地に向かって歩き始めた。


 昨日のアクシデントのお陰で大分道を逸れたらしく神殿までは半日近く掛かるらしい。

 草の生い茂った道無き道を進み、何とか切り開かれた道へと出てきた。


「なあルウ。そう言えばアステカの神殿って昔話無かったか?」


 俺はクエストを受けた時からアステカと言う言葉にずっと引っかかっていた。

 確か…あるアーカイブにそんな事が書かれていた様な気がしたのだ。


 俺の左肩に腰掛けていたルウはこちらを見上げると、羽を震わせ空中に飛び上がり、淡々と話始めた。


「アステカの神殿は大昔の大盗賊団であるアステカ盗賊団が作ったと言われている神殿です。その盗賊団には七人居て、それぞれある分野に突出した才能を持っていたと言われています。彼等の残した悪行は数多く、盗んだ財宝等も未だに見つかっていないので財宝を探し求めている人達も数多くいるのです」


「ルウちゃん、アステカの七人ってどんな能力に長けてたの?」


 ノアも興味半分と言う風に前方をフワフワと飛ぶルウに尋ねる。

 その質問にルウは腕を組み、眉を顰める。


「えーっと…確か…剣術のブレイドダンサーと弓術のアーチャーと幻惑師のチャーマー、龍魔道士のドラゴンウィザード、茨姫と死霊使い。あと…光の王でしょうか」


「なんか、凄い異名だね…」


 ノアは七人の個性的な能力に理解が追いつかず、思わず苦笑いをしている。


 今聞いた中にグリモアに関係する物って無かったよな…

 じゃあ、なんでアーカイブにアステカの名前が書かれていたんだ?


 俺が顔を顰めて唸っていると、ルウが心配そうに顔を覗き込んできた。


「どうしたんですか?何か不安なんですか?」


 アーカイブの事を言ってもあまり意味も無いから黙っとくか。


「いや、何でもないよ。心配させて悪い」


「いえ、それは大丈夫ですが…気になる事が合ったら何でも言ってくださいよ?」


「ありがと。でも本当に大丈夫だから」


「そうですか」


 ルウはそのまま俺の右肩までフヨフヨと移動し、ちょこんと肩に腰掛けた。


 そんな俺とルウのやり取りを見ていたノアが手を口元に当て、茶化してきた。


「二人って本当に仲が良いんだね♪」


「なっ…」「はい!?」


「「それはない!」です!」


 ノアの言葉を否定しようとした言葉が綺麗にハモってしまう。


「やっぱ仲良しじゃない」


 俺とルウは一瞬顔を見合わせ、そっぽを向いた。


「はぁ、私も二人みたいに仲良くなれたら良いな…」


 ノアは下を向き少々顔を曇らせ、俺とルウに聞こえるか聞こえないか位のトーンでボソッと呟く。


 まぁ、しっかりと聞こえていた俺はノアの背中に手を伸ばし、ポンっと軽く叩く。


「俺達はファミリエなんだぞ?言ってみれば家族だ。家族同士が仲良くなれない訳が無いだろ」


 ノアはこちらを見上げ、一瞬目を見開くと本当に嬉しそうに笑い、頷いた。


 ―――――――――――――――――――


 洞窟を出発して半日近く経った。


「もう殆ど目と鼻の先ですよ」


 上空で場所を確認したルウがゆっくりと降りてきた。

 飛ぶのがよっぽど疲れたのか再び俺の肩に腰掛けた。


 再び歩き始めた俺達は突然違和感を感じた。

 さっきまで鳥が鳴いたり小動物が動く音で何かしら音がしていたのだが、それらが急に止んだのだ。その突如訪れた静寂に俺達は足を止めて周囲を警戒する。


 サァーサァーと木々の葉が風に吹かれて擦れ合う音が耳を支配する。


「き、きゃぁぁぁぁぁぁ!?な、何!?」


 右横に居たノアが突如悲鳴を上げる。

 俺はギョッとして右に振り向くとそこにはさっきまで合ったノアの姿が無かった。


「ノ、ノア!?」


「白!あそこを見てください!」


 ルウが後ろを指差し、目を丸くしている。

 恐る恐る振り返ってみると、そこには想像を絶する威圧感を放つ熊が立っていた。

 そして、その熊の右手にはノアが捕まっておりジタバタともがいている。

 口を上手いこと塞がれたノアの目からは涙が流れ、とても震えているのがわかる。


「なっ…何なんだよこの熊は!?」


 俺は咄嗟に背中から漆黒に輝く剣を引き抜き、熊に対して構える。


「こ、この熊はあ、アイアングリズリーです。鉄のように硬い爪と皮膚を持つことで有名な第4階級危険モンスターの一種です」


 ノアも想定外の敵の登場に声を震わせる。

 それよりもノアだ。何とか助けないといずれ食われてしまう。

 俺は熊の殺気に気圧され震える足で地面を踏みしめ、自分の身長を優に超える熊に向かって駆け出す。


「今の白の職業熟練度じゃ絶対に敵いません!」


「そんな事言ったってここでノアを見捨てる理由には行かねぇだろ!ノアだって大切な家族なんだぞ!」


 俺は走りながら身体能力強化の呪文を唱え、脚力から順に強化していく。

 しかし、脚力と防御に魔力を振った所で目にも留まらぬ速さで間合いを詰め、左腕で俺を殴り飛ばした熊に魔法をキャンセルされる。


 圧倒的なパワーで殴り飛ばされた俺は道の脇に立っていた大木に叩きつけられる。

 肺からは空気が全て押し出され意識が一瞬飛かける。

 防御に振っていた魔力のお陰で即死を免れた俺は息を整えつつヨロヨロと立ち上がる。


 ルウも近くに素早く近づいてきて心配してくる。


 その間も熊は驚異的なスピードを使わず、何故かゆっくりとこちらに近づいてくる。


 もし、あのスピードを作るのに幾らかのインターバルが在るなら…

 あの熊の裏を取れるかもしれない。


 さっきの衝撃で焦点の上手く合わない目を凝らし、熊の進行方向の地面に狙いを付けて右手を突き出す。


「《万物に通ずる魔の力 我が銘において解放せよ》」


 熊の足元に大きな魔法陣が出現し、熊がその魔法陣を踏むと同時に熊に蓄積されていた魔力の解放が始まる。


 俺は脇に落ちていた剣を拾い、立ち上がると魔法陣の上で立ち止まってグガァと呻いている熊目掛けて間合いを詰めにかかる。


 全力で剣を斜め下から引き抜き、剣先が喉元を掻っ切ろうと触れる瞬間。


「グガァァァァァァァアア!!」


 熊はその高い魔力の吸い取りを阻止し、足を地面に強く踏みしめることで俺の構築した魔法陣を消滅させる。

 そして、熊が少量の魔力で数センチ後ろに下がったお陰で俺の剣は虚空を切り裂いた。


 そして俺から離れた熊は再び魔力を貯めにかかる。

 俺はそれを阻止する為に瞬時に間合いを詰め、叩き切ろうとするが鋼鉄のように硬い爪に弾き返される。


 そして、剣を弾かれ体制を崩した俺を頭突きで地面に叩き付ける。


 地面に小さなクレーターが出来るほどのスピードで叩き付けられた俺は意識を手放しそうになりすぐには立ち上がれない。


 熊はそんな俺を見計らった様に左足をゆっくりと持ち上げ、踏み潰そうとしてくる。


 暗い意識の中で叫ぶルウと泣き呻くノアの声、そして熊の咆哮が複雑に絡まって聞こえてくる。


 そして熊が足を踏み下ろし、圧倒的質量が俺にのしかかる瞬間。


「『想像錬金 鎖』!!」


 鋭く良く通る声が響いたと思うと、いつまで経っても熊の足が踏み下ろされなかった。


 恐る恐る目を開けると、熊の足は俺の頭の数センチ上で静止していた。

 その場から這い出た俺は驚愕に目を丸くする。


 そこら中から伸びた鉄の鎖が熊の左足に巻き付き、その機能を封じていたのだ。

 その常識外れの荒業をやってのけたのは真紅の髪と髪の色と同じつり目を持ち、背の高い女性であり、俺の剣をわざわざ打ってくれた人だった。


「ほら、今のうちだよ!妖精ちゃん。目隠しよろしく!」


「りょ、了解です!《闇を切り裂く閃光》」


 ルウが焦って一節で閃光魔法を詠唱し、眩い光がその場を包み込む。


 光源を直視していた熊は呻きながら目をつぶり、無理やり体を動かして鎖を解こうとする。


 俺はその隙に全力で飛び上がり、剣の柄でノアを掴んで話さなかった腕を全力で殴る。

 衝撃で緩めた熊の右手からノアがズリ落ちる。


 ノアを空中で抱きとめた俺は地面に着地すると全力でアステカの神殿に向かって走り出した。


 俺の横を並んでメルヴィさんも駆ける。

 全力で走り抜けるとやがて目的地であるアステカの神殿が視界に入る。


 しかし、熊も鎖の拘束を解いたらしく恐るべきスピードで追ってくる。


「間に合えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


 間一髪アステカの神殿に逃げこんだ俺達。

 すかさずメルヴィさんは腰からカードを一枚取り出し地面に片手を付いた。


「『想像錬金 壁』」


 地面からせり上がった土壁は神殿の入口を塞ぐ。


 目標を見失った熊は諦めたらしく、熊の咆哮はだんだん遠くなっていく。


 俺はノアを下ろし、ドサッとその場に座り込む。


「し、死ぬかと思ったぁ!」


 するとノアがいきなり泣きじゃくりながら俺にしがみついてきた。

 俺の胸に顔を埋めるノアからはミントの様な香りが漂い鼻腔をくすぐる。


「うわぁぁぁ!ありがとう…死んじゃうかと思ったぁぁ」


 俺は子供の様に涙を流すノアを抱きしめ、頭を優しく撫でて安心させる。


「流石にあんな経験をしたら泣きますよね」


 ルウも安心して胸を撫で下ろしている。

 俺は同じように座っているメルヴィさんに顔を向ける。


「メルヴィさん。本当にありがとうございました」


「あぁ、いいよいいよ。無事で何よりさ。あとメルヴィって呼んでくれて良いし、敬語も要らないよ」


 彼女は照れくさそうにそっぽを向き頭をかいている。


 俺はメルヴィにノアの紹介を簡単に済ませ、一番気になっていた事を尋ねる。


「メルヴィは何でこんな所に居たんだ?それにさっきの技って…」


「頼まれたんだよ。あんたが良く知る人にね」


 メルヴィのここに来る事になった経緯を俺はノアを依然、綾しながら聞き入った。


この後もの読み進めてるんですが…

イリアの出番少なすぎやしませんか?

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