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物語が始まる時


 人の世において、文化、認識、生き方など、これまで生きてきた世界がガラリと変わる瞬間がある。


 変革期と呼ばれるその瞬間は、いつだって人が新たな“力”を手に入れた事に端を発す。


 例えばそれは、人が火という力を手に入れた時。

 例えばそれは、人が電気という力を手に入れた時。


 そんな風に、人は“力”を手にする度に、その力の使い方を模索し、それに合わせた生き方を選択してきた。

 それこそが、人という知恵を持つ生物の繁栄の礎であり、歴史であった。



 物語の始まりは、特別な力、或いはそれを持った主役の登場から語られる。

 何故ならば、それは特別な事だから。

 何気ない日常の枠からポコリと生まれたその特別こそが、物語の始まりとしてふさわしい。


 その生まれたコブ(特別)の物語を、善い物と捉えるか、それとも悪い物と捉えるか。それはその時代に生まれた人々次第。

 日常の偶発的な災難とし、排除するのも人なれば、許容し、変革の時を迎えるのもまた人である。

 


 こことは違う何処か。

 その世界の枠組みの中に、魔法という力が生まれたのも、まさに変革と呼ばれる出来事であった。


 数百年も昔の事。

 新たな力を受け入れた時、人の生活は豊かになった。それを繁栄と呼ぶならば、人の世は確かに新たな力によって繁栄した。


 しかし、忘れてはいけない。

 力を手にした事による繁栄には、必ず何かしらの犠牲を伴う。

 火を起こせば燃えカスが残る様に、勝利者がいれば敗者がいる様に。犠牲にした何かがあって人は初めてその力を享受する事が出来る。


 魔法という力を手に入れた時も、その裏には犠牲となり燃えカスとなった存在があった。

 しかしそれらは、繁栄というきらびやかな宝石の前ではゴミ同然。

 ゴミになど、人々の興味は向かない。

 だが、興味が向かない事と視界に入らない事は必ずしもイコールではない。

 道を歩く度に、或いはふと気を抜いた時に、それは人々の目に止まる。


 だから、人々はそれに蓋をした。

 奇跡という名の仰々しくも見目麗しい名を付けて、中身が見えない様に外を覆った。外側を綺麗に取り繕って中にあるモノを隠した。

 まるで汚いモノのように。それが悪であるかのように。



 この物語は、綺麗な外側に覆われた内にある悪魔と呼ばれた姫君と、その外殻をひっぺがして自らその中へと足を踏み入れた無法者。その二つが織り成す物語である。


 悪魔の差し出した手を。

 無法者の差し出した手を。

 互いに互いの手を握り、互いに互いの力を手にした時。

 世界は新たな変革の時を迎える。

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ミキサン
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素晴らしい考察が書かれた超ファンタジー(頭が)
考える我が輩
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