第22話 トランジット/ストップ・オーバー
「ん〜……」
太陽を浴び、誠二は大きく伸びをする。
マメに休憩こそとっていたが、それでも馬車に二日間揺られるのはなかなか無い体験だった。
「ふぅ……馬車の旅は久しぶりでしたね……」
ソフィアもそう言って、息を吐いた。あれだけ揺れる馬車の中でいったいいつ休息を取っていたのか、誠二は疑問に思った。
「ありがとな、ソフィア」
「いえ、馬車の旅は慣れてますから。色々な景色を見られて楽しいです」
レイスウェイクは南の街とだけ聞いていた。しかし、誠二たちにとってこの暖かさは予想外だった。
「勇者様のご予定は、公爵様がお決めになります」
文官はそう言った。そのため、予定は立てられなかった。
文官や軍の人々によるその他説明は終わり、誠二たちは迎えの馬車を待った。普通の貴人なら道を貸し切るそうだが、今回はお忍びのようなものなので空けられる道が無い、という事だった。
誠二達は馬車をレイスウェイクの街の入り口で降りた。それには理由があった。
ソフィアが、誠二の方へ向き直って言う。
「それじゃ、私はまた別の所に呼ばれてますので、その用事を済ませてきます」
「おう、気をつけてな」
「はいっ」
そうなのだ。
「えっ、駄目なんですか?」
「はい。閣下への謁見は、勇者のオーサワ殿のみとなりました」
少し前、文官はそう言った。
「てっきり一緒に公爵って人に会えるものとばかり……」
「申し訳ありません。こちらも公爵様の身の安全を確保する必要がありまして」
考えてみればその通りではある、と誠二は思った。仮に乱心して、公爵に傷でも付けられたら大変という事で筋が通っている。
「外部から他の人間が同行するのは、初めての事ですから。場合によっては閣下を害することも出来てしまいますからね。そのあたりは致し方ないでしょう」
「ソフィアがそんな事やるか?」
「念には念を入れて、ですよ。セイジさん。もっと腕利きの方々が付いて下さいますから大丈夫ですよ」
ソフィアは話を続ける。
「それに、たとえ国の方々からの要請がなくても、私はセイジさんについていったと思います」
「そうか……そうか」
なんだか釈然としなかったが、ソフィアが満足しているからひとまず収めよう。そう思う誠二であった。
という訳で、誠二は長距離の二台運行から街中お迎えの小さい馬車に乗り換える。途中下車にはそういう意味合いがあった。
街をブラつくのは、謁見後までお預けみたいだ。
こうして、誠二達を載せた馬車は、宮殿へ向かった。
ソフィア達はその馬車を見送った。




