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護られ勇者の異世界紀行〜聖弓の少女と代打、俺〜  作者: 高荻 泰晴
第2章 公国の都レイスウェイク
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第21話 馬車ジャーナル

「うぉっと」

「きゃっ!」


 前後する車体に声を上げた二人。

 道はなだらかになったとはいえ、日本のアスファルトには敵わない。石などを轢いた時に車内は容赦なく揺れた。


「大丈夫ですか⁉︎」


 ソフィアは衝撃緩和のために脚を上げ、誠二の頭を挟んでいる。


「ああ、大丈夫だ。ただ、俺はこんな状態なんだが……その」


 ソフィアの太ももに顔を埋めた格好になりながら、誠二はそう言った。

 膝枕のまま挟み込んだらそうなるだろう。


「え? あっ、あああっあの、あの……」


 誠二の頰が火照る。ソフィアの顔が真っ赤になり、膝が揺れる。そろそろ本末転倒になってきた。


「……セイジさんが良いと言うんでしたら、私は全く、構いま、せん」

「……そろそろ起きるわ」

「はっ、はい」


 慣れのせいか、ソフィアの仕事が効いたのか。公国の都レイスウェイクも近くになると、誠二はほとんど酔わなくなっていた。


「私も、慣れるまでには時間がかかりましたね。セイジさんは早いほうだと思います」

「だんだん平らな道が増えてきた、ってのもあるんじゃないか?」

「レイスウェイクから馬車で泊まらずに着ける町は、貴族の方々のお出かけに人気がありますから。充分なものを持たせられない家とかは、身売りのように子供を旅に出すことも珍しくないと聞きます」

「そりゃ金を出すところに行くよな。この路を伸ばす計画とかはあるのか?」

「……特に聞きませんね」

「世知辛ぇな」

「豊かになったら、また、ですね。頑張りましょう、セイジさん」

「ああ」


 もう何度目かの城壁の前に来て。最後、誠二たちは門番の人々のチェックを受けていた。半ばお忍びのようなものとはいえ、そこは公国軍。通れるだけの根回しはバッチリだ。


「勇者様。長らくの旅路、お疲れ様でした」

「そちら様こそ。お疲れ様でした」


 皆で挨拶をし合い、城門警備の兵士もそれに加わる。


 こうして、クレーフェから二日。誠二たちはアルフォリア公国の首都、レイスウェイクに到着したのだった。



★─☆



 所変わって、ここはレイスウェイクにある宮殿の一角。その隠し部屋。

 そこには今、数名の人間がいた。一人は絢爛豪華な服を身に纏い、従う二人ほどの男達は身に鎧を纏った騎士である。あとは、ローブを被った男が三人ほど。腕に優れるのみならず、その手の裏事情も知り尽くした魔術師である。

 大量の豪勢な食事もなく、輝く装飾の場もなく、宴を妖艶に彩る踊り子もいない。享楽的なたたずまいを隠れ蓑にした、冷たく実務的な空間であった。


 豪華な服の主はゲルト・フォン・シェレンベルク。アルフォリア公国を統べる公爵である。


「そうか……勇者が到着したか」

「すると、これはどのようなことでしょうな」


 これ、と指した先には、床に描かれた魔方陣があった。翡翠色の光を帯び、部屋を照らしている。


「それで、我々は何をすれば?」

「そう慌てるな。到着した青年に、然るべき対処をすればいいのだ」

「はい」


 ゲルトと筆頭魔術師の男は青い光に照らされながら、笑みを浮かべていた。


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