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第18話 ヘリフォード氏の手記〜【特集】勇者の旅立ち〜


「承知した。我らの村は、我らで守る」


 バティスタ氏が大きく頷き、村人たちが声を上げる。山賊相手に打ち勝った彼らなら、そう答えるだろう。

 結果的に、軍の駐留は大きな変化をもたらさなかった。ベタンコート村長の家でも宿屋のような設備はなく、寝床は一般の客として近くの町の宿屋であった。また、そもそも明るみに出て良い話でもなかった。そのため、全体的に国軍としての振る舞いは控えられたと思われる。

 村の中を除いては、だが。


 軍はバティスタ氏を流れ者の騎士だと見ているのだろうし、私もその推測があったことは否定しない。

 そして、彼は黙し、素性を語らなかった。軍がそれ以上を気にかける理由は、何もない。



 ある時は、軍の副隊長あたりの男性が剣を凪ぎ、切り株を作った。腰掛けにちょうどよいものだが、彼らの顔色は優れない。


「このように、森を開くことだってできる! だから、この土地をわれらに──」

「お断りでございます」


 そう言い、村長ベタンコート氏、材木商、バティスタ氏が揃って首を振ったのは、象徴的な出来事だろう。その副隊長も、そして私も、森を知らなかったのである。

 腰掛けまでの低さに木を切ると脇芽が動物に食べられてしまう。それが分からない以上いらない、というのだ。


「これ貰うぜ、いいだろう……ぶへらっ!」

「てめえ、うちのもんに何しやがる!」


 またある時には、ある兵士が干してあった葡萄をつまみ食いしようとして、ヴィルツという村の男に殴られた。公国軍と村人たちとの断裂を象徴するものだった、というのは言い過ぎだろうか。


 彼らが村人たちに向ける態度は、もっと気を払うべきであったといえるだろう。軍の末端ともなれば、確かに掠奪は珍しいことではなくなる。しかし、辺境とはいえ自国の村。中央からは離れた環境だが、国境に接した村であることも事実である。公国軍は、あまりに無頓着であったのではないだろうか。

 軍は、食糧庫たる農村の戦略的な重要性は頭に入っていても、そこに生きている人間の存在は忘れがちである。

 現在の歴史学は、中央でさえ英雄の活躍を教えるのみだ。農村で信仰されている神話は、教会の権力低下でその基盤を失いつつある。生きた生活の描写が足らず、中央の人々に農村の声は活発に届いているとは言いづらい。



 さて。菓子折を持って取材の許可を求めるやり方は、ミラバル編集長に教わったものだ。直に金銭を包むと、遠慮する人も多いのだ。この地方の薬膳茶と合う味付けだろう。


 こうして、勇者たちを連れ、クレーフェの用事を終えた軍は、レイスウェイクへ向けて旅立った。

 これが「普通の民衆の生活」と言えるかどうかは分からない。だが、早くも興味深い話がいくつか聞けたのは、今回の収穫である。

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