第14話 千客万来
「何があったんだ?」
「賊が現れました。先日の方々のようです」
ソフィアは矢筒を背負いつつ苦い表情を浮かべ、そう告げた。この間の報復だ。
誠二は部屋にあった鎧を身につけ、外へと踏み出す。
ソフィアは鎧を着終えた誠二に「待て」の仕草をした後、扉をそっと押し──そして、弓を引いた。
男の短い悲鳴が聞こえる。
誠二はソフィアに連れられ、家の外に出る。そこにはクロスボウを持ち、眉間を撃ち抜かれた山賊の死体が転がっていた。
「おおっ!」
「……もう大丈夫です。私が案内します、付いてきてください!」
部屋を出た誠二たちが続いて見たのは、人の首が宙に舞う光景だった。
「……ふん!」
バティスタが鎧を着て、襲いかかる山賊たちを斧で屠っていく。
「ぐぁっ」
「ぎゃああ!」
彼はまるで斧をバットのように軽々しく振り回し、山賊たちを牽制していた。前線に立って、二十人は居ようかという賊を斬り伏せていく。
またある所では、ドロイゼンさんが山賊を圧倒していた。
賊の一人と何やら話をしているようだ。
「お、お前らだって分かるだろ?俺らだって、生きるのに必死で」
そう釈明する賊を、ドロイゼンは斬って捨てる。賊にナイフを突き立てながら。
「寝込みを襲う卑怯者の気持ちなんざ、分かんねぇよ」
「そ、そんな、人殺しー……ごはっ」
賊は血を吐いて倒れる。
それらを尻目に、誠二はソフィアに連れられ移動した。
その先にいた賊はクロスボウを持っていた。ソフィアが弓の準備をする音が誠二に聞こえる。間もなく、矢が誠二に向かって放たれる。
「セイジさんっ⁉︎」
「これは……何だ?」
誠二には、賊の矢が止まって見えていた。そして身体をよじらせ軌道から外すと、矢は元のスピードで後方へと飛んで行く。
賊は驚きを顔に浮かべ、矢をつがえようとするも額を射抜かれた。
後ろにいたソフィアのものだ。
「大丈夫か、ソフィ──」
誠二が振り向くと、矢を放ち終えた彼女の背後に人が忍び寄っているのが見えた。
「ソフィア、後ろ‼︎」
しかし、ソフィアはそれを読んでいたかのようにくるりと回り、矢を賊に突き刺す。
「貰った……ぐぁあ⁉︎」
誠二は彼女のもとへ走りながら、山賊が刺されて怯むのを見た。
ソフィアはその隙を逃さない。
「はあぁっ!」
「ぐあ……っ」
山賊が頭を射られて倒れる。張り詰めた緊張感を断ち切るように、ソフィアは声を上げていた。
「ソフィア! 勝手に行ってごめんな!」
「いいえ、感謝します!皆さんはあそこにいます、合流しましょう!」
「わかった!」
こうして誠二たちは、村の狩人たちの集団に合流した。弓やクロスボウを持つ狩人はすでに列を作っており、ソフィアもその中に入った。
「おうあんちゃん、大丈夫だったか!」
「はい!なんとか!」
その後も村人達は全く動じることなく、山賊に対して各々の攻撃を与えていた。
決定打が、追って現れたフィンの槍さばきだ。山賊たちは突かれ、倒れ伏し、吹き飛ぶ。振り回すだけで一陣の風が生まれる。
「何だ……これ」
「ここの人たちは強いですよ。私もだいぶ、戦いの技を学びました」
こうしてクレーフェの村人達は、山賊をほとんど殲滅した。
「な、何だ……この村は、どうなってんだ……」
熊のような男がそう声を絞り出し、森の方向へと逃げ帰る。
どうやら、この男がリーダーだったらしい。
直後、少しの火花が見え、爆音が森に響いた。
「なんだ⁉︎」
「何の音ですか⁉︎」
村人が異変に気付く。
まもなく、熊男は頭を弾かれて血を撒き散らしながら倒れ伏し、そのまま動かなくなった。
村の人たちの戸惑いは止まらない。
「……⁉︎」
煙の出た筒を抱えながら、こちらへ歩いてくる人影が見える。黒いローブを被り、顔は見えない。
誠二の世界で言うところの銃だった。
「クレーフェの皆さん、おはようございます。えー、僕らは別にやましい者じゃありません。リンツから来た、旅の者です」
同じ格好の人を何人か引き連れた男はローブを取り、銃を自分の脚に立てかけて、そう話した。




