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第11話 not heel but healer

「教会へようこそだぞ……ソフィア、怪我か」


 辿り着いた場所は教会だった。そして迎えてくれたのは、シスターの服を纏ったエスティだった。


「エスティ、手当てができるのか?」

「ええ、いつもお世話になっています」


 ソフィアも御用達のようだ。


「ええ、少し」

「その血のシミが怪我なら、少しとは言わないぞ」

「……斬られちゃいまして」

「賊か。あとで聴くぞ」


 教会で出会ったエスティは、前と変わらない表情で誠二達に接した。

 教会は照明こそないものの、木造りのベンチが数脚並んだごく普通のものだ。エスティは、手慣れた様子で薬をとり、布へ染み込ませた。


「ケガを見せて欲しいぞ」

「はい」


 そう言うとソフィアは矢筒を下ろし、肩当てを外して肩を出した。エスティが薬を布へと染み込ませ、傷に当てる。


「……っ」


 ソフィアは声を上げた。薬はかなり沁みるようだ。


「うん、傷は浅い。大丈夫だぞ。しかし綺麗な身体してるんだぞ」

「あっ、ありがとうございます」

「で、セイジも居ることを忘れてないかだぞ」

「‼︎」


 ソフィアは痛みとは別の理由で呻いた。晒すまでの手際が素早かったので誠二も目にしてしまっており、実の所そのまま目を逸らしていた。

 彼女の服は胸元あたりまではだけていた。


「もう大丈夫だぞ、セイジ」

「えっ?」


 エスティの声に応じ、誠二がその方を向くと──肩をはだけさせたまま、赤面で目を見開くソフィアがいた。ソフィアが戸惑いの声を挙げたが間に合わなかった。


「エスティさん、あの、その」

「ふふ、痴れ者だぞセイジは」

「は?」

「さっさと抱き合う仲にでも何でもなって守ってもらうんだぞ、ソフィア」

「えええエスティさんっ……!」

「エスティ……お前ってやつは……」


 エスティなりにソフィアの身の上を案じているのだろうか。誠二はそんな考えをめぐらせ、火照る顔を何とか鎮めていた。


 手当てを済ませ、エスティは山賊の話をし始めた。ソフィアの傷が目に入った時、エスティはあからさまに目を釣り上げていた。

 その後、茶化すような話をしたのも、彼女自身の気持ちを落ち着ける意味があったのだろう。


「……山賊か。ドロイゼン氏から聞いたぞ」

「守れなくてすまん」

「ご心配をおかけしました」

「仕方ないぞ。で、その賊は逃がしたのか?」

「私が射撃を加えました。セイジさんがそばの樹を叩いて威嚇して下さって、彼らは逃げていきました」

「そうか……賊は今度会ったら私が殺るぞ。邪魔をしないで欲しいんだぞ」

「……」

「大切な友人を傷つけた奴らを、許すつもりはないんだぞ」


 エスティの言葉は賊への敵意で溢れている。その言葉は重みが感じられる。根は熱い人物のようだ。


「エスティさん、心配はありがたいのですが、敵地に乗り込むような事は……」

「む、それもそうだぞ。安易な行動は村全体を危険にさらすぞ……だがソフィア、今度は真っ先に、私かセイジの後ろに付くんだぞ。弓使いが前に立つのはやっぱりおかしいんだぞ」

「……すみません」


 ソフィアはエスティに平謝りだった。

 その後、エスティは誠二の方に向き直った。今度は誠二への話である。


「セイジ・オーサワ。下手に相手を斬らず、退却に追い込んだのは、いい判断だと思うぞ」

「俺は何もしてねえよ」

「相手に向かって剣をとったことを何もしていないとは言わないぞ。ソフィアを守ってくれたこと、感謝するぞ」


 エスティは穏やかに笑って、そう言った。



「──子供たちの笑顔はいいぞ。で、呆けた顔をしてどうしたんだぞ、セイジ」


 引き続き、教会の話になった。誠二はエスティのあまりの変わりように驚いていた。


「ごめんな、エスティ。俺はソフィアや子供達への関わりを面倒くさがる人間だと、勝手に思ってた」

「律儀だが失礼だぞ。しかし、ただの村の大人ならそれは否定しないぞ。今回はソフィアという大切な人だからだぞ」

「悪かった」


 誠二は言い過ぎを詫びつつ、少しだけエスティとの距離が縮まったように感じていた。

 こうして、二人は教会を辞した。


「森の仕事は、何かと怪我が多いので。私も小刀とか鏃で手を切っちゃったりして……正直、もう慣れっこですね」

「すげえな……」

「でも本当に、ありがとうございました、セイジさん。貴方がいなかったら、あの人々を追い払うことはできませんでした」

「こちらこそだ。俺は」

「前に立つべきだった、とかは言いっこなしですよ。私はあの森の村人です。あそこで前に立ったのも、私の意思でしたことです」

「……わかった」


 そのあとは家に帰り、暖かな夜を過ごした。昨日以上に疲れたのか、はたまた心を許せるようになったためか、二人はほどなく眠りに就いた。



「おはようございます」

「ああ、おはよう」


 昨日の遭遇や怪我など無かったかのように、ソフィアは笑顔を朝日に輝かせていた。

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