第一冊:家路【桜木編1】
第一冊目:家路 ‹桜木編1›
居眠りしそうなほど、あたたかな日差し。
廊下側の机でも日が当たって気持ちがいい。
窓側にちらりと目をやると、一人女子に目が留まる。
髪の長い、メガネをかけた子。
日差しを浴びて、髪が茶髪に見える。
さらさらした髪の毛がとても・・・。
「おい、桜木!いい加減にしろ」
「へぇい」
三度目くらいだろうか、先生に注意された。
実のところ、彼女とは一時付き合っていた。
だが、少し重たくてしつこい性格ではあった。
故に俺はそいつから間をおいた。
案の定、連絡は非常にいらいらするほど来た。
あぁ、うるさい!
ただ俺はそれだけだったと思う。
『さようなら。わかれよう』
ただそれだけ言ってそいつをブロックした。
まぁ、しばらくはしつこかったさ。
同じクラスだしな。
でだ。
何があったのか、何を言われたのか。
突然
『お互いこれでよかったと思う。さようなら』と。
少しばかり虚を突かれたが、何も言わず無視した。
楽しそうに普段笑っているが、
今はいったい何を考えているのかわからない。
つい気になってしまうのだ。
これっていったい、未練というやつか?
あいつのほうが未練持ってるはずだけどな。
あぁ、むしゃくしゃする。
図書館でもいくか・・・。
むしゃくしゃした気分のまま、
俺は学校を出た。
バイトは明日、か。
家に帰る気分にもならないしやっぱり図書館へいこうか。
風が今日は妙に強い。
暖かい日差しに、涼しく強い風。
気持ちの悪い天気だ。
ふと、風が吹いてくる通りを見てしまった。
よく洋風のお店前にあるような、黒板がぽつりと。
道路の真ん中に邪魔をするように立っていた。
吸い込まれるようにその黒板の方へ見入ってしまった。
脚は、日陰になっている道へ。
瞳は、その黒板の文字へ。
家に帰ることなど、
あの女のことなど、
ましてや自分が何をしているかすらも頭になかった。