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序章:左手
序章:左手
あなたはどちら利きでしょうか?
私は左利きなのです。
ほかの人からよく珍しいねと言われます。
あなたの趣味は何でしょうか?
私は見ての通り読書です。
ほかの人からよくいいねとだけ返されます。
あなたは本は好きですか?
・・・そうですか。
いい本との出会いを、差し上げましょう。
――さあ、左手をとって。
この本棚の奥に、あなたの求めるものはあるでしょう・・・。
意識のない夢の中、あたしは握られた右手を見た。
そこに、左手はなかった。
振り返ることもできず、足を止めることもできず。
ただひたすら、前を見ていた。
ただひたすら、足を進めてた。
この先に。
あたしの求めるものがある。