地下へ
「まぁ取り合えずご飯を食べちゃいましょう」
決まっていることならここで悩んでも仕方ない。
やれと言われたことをこなしていくしか生徒達には出来ないのだから。
エフィの言うことは最もだった。
それから移動して教室でも同じような騒ぎを横目で見つつ、震える体を押さえていた。
そんなルーシェはエフィにはお見通しのようでずっと横で関係のない話を続けてくれていた。
「全員静かに」
教室の前方の扉から担任の教師が入ってきた。
朝から続いている騒ぎを耳にしているようで苦笑している。
「説明するまでもないようだな、噂の通り今日の実地訓練には視察が伴っている。生徒が目指す軍の方々がいらっしゃる。課題の内容は低級の魔族を冷静に対処すること。これまでの一年で学んだ事をすべて出し切るように、手段は問わない。登録番号順に一人ずつ始めることになる。十分後に地下実務室へ集まるように、解散」
あっさりとした説明だった。これ以上話すことはないとでも言うように、担任はさっさと出ていってしまう。
「手段は問わず、だって」
くすり、とエフィが笑う。
「それって固有の能力がある人は使ってもいいってことだよね」
何だか楽しそうだ。
この状況で笑うなんてエフィの神経は相当図太い。
けれど固有の能力。
それは個人個人に合った魔力の形。表現するのにもっとも適した形のことだ。故郷が襲撃されたときに見たリュカディアル司令官の雷のような、少しずつ皆違うもの。個性のようなもの。
「私は青い炎だけど、ルーシェのは初めて見るね」
「これだって思うイメージが固まらなくて、最近やっと形になったからね。本番までのお楽しみよ」
どうせ録画もしているだろう。あとで見せて貰おう。
「じゃあ、行こうか」
地下までは螺旋状の階段を降りていく。
まるで死に向かっているようだ、と何日か前に読んだ本の一文を思い出していた。地上は地獄で、天上にはすべてが救われる世界があると、まるで夢のような物語。そんなものがあるわけはないと、途中で読むのを止めてしまった。
目の前で、親類縁者がすべて死んでしまったルーシェからすれば何が天上だと笑えてしまう。願うのは安らかな眠りだけだ。せめて死して尚、苦しむことがありませんようにと。
それだけでいい。どうせもう二度と会えない。
そしていつか自分もそこに行くのだから。
魔族と対峙してもどうか冷静でいられますように。