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太陽の皇女 月の皇子~羅乎(らお)の巻~ 第四章

第四章

    1


 北幽門ほくゆうもんは森ではなく山の中に存在している。

 山といっても険しいわけではない。山脈に続く小山の一端、なだらかな傾斜のその上にあった。森もなく山奥でもない。

――が、ある意味、どんな山道よりも険しい道程であることは間違いない。

「っつーか。よく造ったよな」

 山頂まで続く階段は下から見上げると空の上まで続いていそうで気が遠くなってくる。先人達が誰でも簡単に詣でることが出来るようにと、いらぬ気遣いで造られたものらしい。

「余程、段差が好きな方だったのでしょうね」

 さすがの阿己良あきらもそんなことを言うくらいなのだから、これは相当辛いものなのに違いない。途中で休んでは先に進めないかもしれない、という問題ではなかった。休まなければこのまま登ることも下ることもできない。お互い励ましあい、適度に休憩を取りながら、なんとか上り切った。上ったということは、当然、帰りは下る。そう思うと一生この場所で暮らしてもいいと思えるくらいにうんざりだった。

李比杜りひと!」

 階段の頂上に白髪の大男が待っていた。駆け寄る主人を笑顔で迎える。

「ご無事で」

「はい、羅乎らおが護ってくれましたから」

 李比杜が見やるのに、羅乎は軽く手を上げて答えた。

「北幽門はこの先、洞窟を抜けたところです」

 洞窟はひんやりとしていた。外気が冷たいので寒いという印象はなく暖かいくらいだが、湿り気を帯びた空気はやはり肌には冷ややかに感じられる。

 今ではあまり人は訪れないのだろう。岩に生えた苔は盛大な緑を維持して、立派な絨毯かと思う程に繁殖していた。天井から滴る水が、岩の隙間に出来た池に波紋を広げる。その下に折り重なる岩が全て見えるくらいに水は恐ろしく澄んでいる。

「羅乎の気配に似てます」

 そう阿己良が言う。

「なんか、魚もいねえし、何にもない。空っぽぽくねえ?」

「え、で、でも、綺麗じゃないですか」

 羅乎の気配が水であるはずがない。火を扱う自分が対極にある水ということは有り得ないのだが、阿己良としては、あくまで感じた気配を似たもので例えただけなのだろう。

「俺からすれば、阿己良の方がよっぽど似てるけどな」

「私もそう思いますよ」

 李比杜が言うのに、阿己良は首を傾げて、どこまでも青い水を覗き込む。

「そ、そうですか?――ひゃっ」

 その背中を羅乎が押した。勿論本気なわけもなく、しっかりと両肩は掴んではいるが。

「な、何をするだすかっ!」

 阿己良は余程動揺したのか、言葉が変だ。

「ちょっとぶつかっただけだろ」

「違うでしょう、押したじゃないですか」

「押してねえよ」

「絶対押しましたっ! 怖いじゃないですか。こんなところに落ちたら、落ちたら――」

 阿己良がやや涙目で訴える。

「落ちたら?」

「落ちます」

「……意味わかんねえよ」

 苦笑を浮かべつつ、李比杜が阿己良を水から遠ざけた。よほど怖かったらしく、李比杜の腕に縋ったまま、ずっと羅乎を睨んでいる。

「そんなに怒んなよ」

「まあ、無理もない」

 岩の合間のほんの僅かな日差しと光苔くらいしか明るさがなかったのだが、徐々に岩間の光が強くなってきていた。心なしか空気も少し乾いてきているように感じられる。陽光を受けて光を反射する池に目を向けつつ、李比杜が言った。

「昔、阿己良様は溺れたことがある」

「李比杜、それはだめ!」

 笑い含みに話す家臣を阿己良が必死の形相で止めた。が、李比杜はそのまま続ける。

「膝にも届かぬ池だったのだが、転んでしまわれて。それはそれはもう大変な騒ぎでな」

「その浅さで溺れるのって、ある意味、器用だな」

 阿己良が頬を膨らませる。

「びっくりしたんですから、仕方ないじゃないですか」

「いや、なかなかできることじゃねえよ。天才だ」

 酷い、と慄く阿己良に羅乎が笑った。

「嘘だよ。ごめんごめん」

「もう、知りません」

 ぷいっと背を向けた阿己良がすたすたと先に歩き始める。白金色の髪に光が届くほどに出口は間近だった。洞窟の終わり、明るさの中に阿己良の姿が見えなくなる。

「悪かったってば。そんなに先にひとりで行くなよ、危な――」

 羅乎の言葉が終わるよりも先に激しい稲光が起こった。



「阿己良」

 岩場を駆け出るなり、羅乎は大声で呼んだ。

 腹に響く轟音に続いて起こった光の爆発は咄嗟に顔を覆ったくらいでは軽減できず、視界は焼きついている。定まらない視野を、目を絞るようにして調節しながら、きな臭い辺りを見渡す。

「羅乎!」

 震えてはいるが、しっかりとした声が返る。近づく足音に向き直る。走り寄ってきた阿己良を認めると、しがみつく身体を力強く抱きしめた。

「阿己良……よかった」

 何度もよかったと呟いて息をつく。情けないことに吐き出した呼気が震えているのが自分でもわかった。

「羅乎」

 李比杜の鋭い声が飛ぶ。羅乎は阿己良を抱えたまま咄嗟にその場から跳んでいた。たった今立っていたその場所に、拳大ほどの穴が開き、白く煙を上げていた。

 既に剣を構えた李比杜が素早く二人の前に立つ。その正面、立っているのは一人の人間だった。

 白金色の髪は長く、膝裏まで届いている。一見では男女の別が付けられなかった。涼やかな目が羅乎たちに向けられ、赤く濡れた唇は薄く微笑みを湛えている。間違いなく秀麗な顔であるのにどこか作り物めいた感じが異様に冷たい。

「前に一度、会うておるが」

 声までが中性的だった。

「まさか、このようなところで顔を合わせることになるとは思わなんだ」

 耳にまろい、柔らかな美しい声。

「お互い、予想外よな」

 見つめるその双眸、それは濃い紫。

「のう、火乃鎖羅ひのさら

「……誰だ、てめえ」

「誰とはつれないことよ」

 その笑みは妖艶だった。だが、目だけは一層冷たさを増したようだった。

 ――こいつ。

 羅乎は眉を寄せる。

 今、羅乎は女になっている。その自分を「火乃鎖羅」と呼ぶとは、正直、穏やかなことではない。だが、間違いなく目の前の人物は知らない。噛み合わないその二点の事実が羅乎の心中を波立たせる。

「……」

ただ、一度会ったという言葉、それには思い当たる節がある。滅びた町で感じた視線、あの時の無残な周囲に妙に馴染んだような不穏な視線の、恐らくはその持ち主だろうということはなんとなく想像ができた。

 背中を粟立たせる不愉快な気配。大地に浸み込むようにして広がる得体の知れない不快感。この気配は知っている。知っているも何も、今まさに自分が追いかけているものだ。

「お前――悪気」

 阿己良が目を瞠る。

「悪気? そんな」

 阿己良の驚きは当然だ。そして自分で口にした言葉に羅乎自身が驚く。

 悪気とは人間ではなかった。人類という意味の人間でもなければ、人型であるはずがない。それは気となって流れ出し、生物に巣食う。だからこそ「悪気」なのだ。実体はないものだと理解されている。

 ――しかし、この気配は間違いなく悪気そのもの。

 転がったままの阿己良を庇うようにして身を起こす。ゆっくりと柄に指をかけた。

実体があるならば、切り捨てることは可能なはずだ。それは李比杜も同様だったのか、抜かれた剣を改めて構えなおす。

「我の目的は終わった。もうここに用はない」

 どこまでも冷ややかな瞳がまっすぐに羅乎を見つめる。

「はよう行ってやった方がよかろう」

 何かと問うことはできなかった。告げられた言葉に、ゆるゆると這い登る嫌な感じ。

「――まさか」

 何かを言うよりも先に唇の端を吊り上げる。それは明らかに肯定の笑みだった。血のような真っ赤な唇は耳まで裂けるかと思う程。その身から漂う濃厚な悪気が、より不気味さを強調する。

「はよう、門番の所へ行っておやり。最期の言葉くらい聞いてやったがよかろう」

 羅乎は踏込と同時に剣を払った。

 確実に仕留められる距離のはずだった。それなのに手応えは全くない。飛び散る飛沫もなく、代わって飛散したのは、美しい姿からは想像もできない黒く澱んだ瘴気だった。

 舌打ちをし、羅乎は剣を収めた。すぐに李比杜を振り返り、阿己良を見て、門へと走る。

そこには美しい光沢を持つ甲羅を無残に割られた聖獣の姿があった。



 亀というには少し語弊がある。甲羅こそ亀だが、尾は金色のふっさりとした毛になっていた。首は異様に長く、白いそれは蛇といっても過言ではない。

聖獣と阿己良が呟く。羅乎がそうだと頷いた。

「玄武だ」

 腐臭はまだない。

「門は無事か」

「問題ないようだ」

「なら、早く施錠を」

 その時、白い長蛇が動いた。長い首を擡げ、力のない目で辺りを見る。羅乎は急ぎ駆け寄って憐れな聖獣をその腕に抱えた。

黒爺くろじい

 何度か呼びかけて、ようやく黒い瞳が焦点を結んだ。

「……御曹子――なのか?」

 掠れてはいるが「爺」と呼ばれたわりに、問うた声は若い。

「しっかりしろ、黒爺。俺だよ」

「はて……我を黒爺と呼ぶのは御曹子と麻耶希まやきだけと思っておったが、お前、照姫てるひめではないのか?」

「ち、ちょっと、色々あって、間違いなく羅乎だよ」

「御曹子、どこかに月の子がおったはずじゃ」

 無事か? と力のない声が尋ねる。

「そうか。あの雷、あんたが」

 あの悪気を纏った人間が阿己良を狙おうとしたのだろう。それをこの玄武が護った為の衝撃だったのだ。

「月の子供よ」

 羅乎が阿己良を見やる。二人のやり取りをじっと見つめていた阿己良が弾かれたように顔を上げた。

「すまんな。我らは役に立たなかった」

 阿己良は首を振る。

「役に立たないどころか、盗られてしまったよ」

 羅乎の隣に膝をついた阿己良が、労わるように割れた甲羅に手を置いた。

「そんなこと、いいのです」

 すまぬと繰り返すのに、阿己良はひたすらに首を振る。

「盗られたって、何を」

 羅乎が李比杜を見上げた。そんな羅乎を一瞥したのみで、李比杜は何も言わなかった。

「我が最後じゃよ」

 さらに弱くなる声が続ける。

「もう仲間はおらん。もはや四門は意味をなさぬ。中央に参られよ」

「でも、それは……」

 阿己良の言葉は玄武に届くことはなかった。

「玄武様?」

 白蛇が地面に伸びる。その瞳はもはや何も見てはいない。玄武は事切れていた。

 阿己良がその奇異な姿を抱きしめる。目を閉じ、小さく礼を述べた。そして琉拿の形式に乗っ取って祈りを捧げると顔を上げる。

「阿己良」

 声をかけた羅乎に、笑顔を見せる。それはとても無理やりな笑顔だったが負けまいとする強い意思が感じられた。

「自分に、やれることをやります」

言って、阿己良は毅然と立ち上がった。


    2


 気の遠くなるような石段を下り、緩やかな坂道を下ると、まず李比杜が騎乗してきた馬がいた。その手綱を解き、さらに道よりに近づいたところで、大木に繋がれた馬の頭を撫でている少女がいた。

 黄色い派手な着物に橙色の、蝶結びにされた帯。見覚えのありすぎる姿である。

「羅乎。あれは、お前達が乗ってきた馬か?」

「……多分な」

「あの娘はなんだ?」

「……知りたくもねえな」

「馬泥棒か?」

「まあ多分……それは、違う」

 答えて、羅乎は盛大に溜息をつく。溜息をつくなり、突如、脱兎の如く走り出した。呆気に取られる李比杜が呼び止める間もない。呼ばれたところで足を止めるつもりはさらさなかったのだが。

 駆け寄る気配を察したのか少女が振り返る。笑顔で手を振ろうとして、鬼気迫るその様子に上げかけた手を引っ込めた。

「麻耶希。てめえ、こんなところで何してる」

 声を歯の間から絞り出す。

「う、馬撫でてる」

「違うだろ。なんでこんなとこに来た」

「し、朱潤しゅかんで」

 羅乎が麻耶希と呼んだ少女の頭を叩いた。

「誰が手段を聞いてんだ、このぼけ」

 ごめんなさい、と頭を抑えて麻耶希が呟く。

羅乎兄らおにいに会いに」

「それもぜっってえ、違うだろ」

嘘じゃないよおと涙目で頭をさする麻耶希が言う。

「それより、その格好どしたの? 照姉てるねえにそっくり」

「俺だって好きでやってんじゃねえよ」

 いいか、と羅乎は麻耶希の胸倉を掴んで引き寄せる。

「見ての通り、俺は今、女だ。兄って呼ぶな。羅乎でいい。それから――」

 そこまで言って、羅乎は己の名前を呼ばれ振り返る。馬を引いた李比杜と不思議そうに見ている阿己良がすぐ近くまで来ていた。

「羅乎、そちらは知り合いか?」

「ああ、まあ。そんなところ。麻耶希って言う……ちょっとした知り合い」

「酷っ! 何それ羅乎に――」

 兄と言いかける麻耶希を、羅乎はものすごい目で睨んだ。

「――そうです。知り合いです。ええ、もうほんとに、ちょっとした」

 麻耶希がぼそぼそ答える。高い位置で束ねた茶色の髪までが一緒にしゅんとしたようだ。

「その知り合いが、なんでこんなところに」

 これは当然の疑問だ。こんなところもこんなところ、待ち合わせをするにはふさわしくないし、羅乎の様子から打ち合わせがあったようにも見えないだろう。それなら、何故ここにいることがわかるのかという疑問に繋がっているに違いない。

「なんでだろうな、俺も知らねえよ」

 李比杜に愛想笑いを浮かべて、羅乎は麻耶希を振り返る。

「お前、早く帰れよ」

「そりゃないでしょ。羅乎に――に報告があって来たんだよ。なんか色々言われたから、忘れて帰っちゃうところだったよ」

「相変わらず鳥頭だな、お前」

「そんなこというと朱潤が怒るよ」

「一緒なのか?」

「一緒じゃなきゃ何で来るよ」

 確かにと頷く。先程聞いてもいないのに答えた麻耶希がそう言ったことを思い出す。

「早速だけどね」

ちょっと待てと羅乎は李比杜と阿己良を振り返る。

「悪い、ちょっと待っててくれ。すぐ戻るから」

 羅乎は麻耶希の腕を引っ張って、もと来た道を戻って行った。



「報告って言ったな。ちょうどいい。俺からも頼みたいことがあるんだ」

 ここで麻耶希に会えたのはよかったかもしれない。つい先程出会った得体の知れない別嬪さんの素性を探ってもらおうと思った。それだけではない。玄武が盗られたというものも何なのか知っておきたい。

「頼みごとするなら、まずすることがあるんじゃない?」

「することってなんだよ」

「ど・げ・ざ。きゃは」

「きゃはじゃねえよ。意味わかんねえこと言ってんな」

「じゃあ、女装して、照姉の評判下げてるって言いふらしてもいい?」

「評判下げてねえし。女装じゃねえよ」

「違うの?」

「違うの」

 よく見ろ、と足を揃えて麻耶希と並ぶ。実際なら歳も下であり、小柄な麻耶希の身長は羅乎の顎にも届かない。それが頭半分も変わらなかった。ついでとばかりに麻耶希の手を掴むと、己の胸に当てる。

「うおお、すげえ、おっきい。よく出来てるねえ」

「作りもんじゃねえよ――ってか、揉むな」

 むにむにと手を動かす麻耶希の頭に拳骨を見舞った。

「まさか、あの時の?」

「それしか考えられねえな」

「あれって、性別変わっちゃう技だったの?」

 麻耶希が怪訝そうに眉を寄せる。

「……なんか、破壊力があるようなないような、意味のわかんない攻撃だね」

「だが、精神的には結構来るぞ。そういう意味じゃ破壊力はある」

不覚だったと羅乎は改めて思い返す。咄嗟にとはいえ、身体を張って庇うというのはあまりいいことではないのかもしれない。

「でも、その時の人、目を覚ましたんだよ」

めでたいことのはずなのに、いまいち麻耶希の表情はぱっとしない。

「なんだよ、どうかしたのか?」

「あのね、報告ってそのことなんだけどさ。その人」

 麻耶希が続ける。

「何にも覚えてないって。だから今、うちで治療してる。じきに思い出すとは思うけど」

「まあ、命が助かっただけよかったよな」

 せっかく助けた命が失われてしまっては、元も子もない。

「それより羅乎兄の頼みってなに?」

「ああ、頼みっていうか。誰かに聞いてみてほしいんだ。玄武が持ってる大事なものってなんなのか。月の国に関係してるみてえなんだけどよ」

神拿国かみなこくに? なんだろね。わかった」

「それから、悪気を纏った人間のことを聞いてくれ。男か女かはわかんねえ。ただ間違いなく神拿国の人間だと思う」

 白金色の髪と紫の瞳。色白な肌からしてまず間違いはない。

「悪気纏ってるなんて有り得るの? 普通取り込まれちゃうんじゃない?」

「だから調べてもらいたいんだよ。それに、そいつは俺のことを知ってる」

「女装家だって?」

「違うだろ」

 麻耶希の額にでこピンをお見舞いする。

「あいつは俺を、火乃鎖羅と呼んだ」

 そんな呼び方をする者は、少なくとも自分の周りにはいない。

 それから、と羅乎が少しだけ間を置いた。

李青りせいと黒爺、死んだよ」

 麻耶希が目を見開いた。

「黒爺が言うには多分、虎凌こりょう朱春しゅしゅんもやられた可能性がある」

「……そんな、なんで」

「その悪気の奴の仕業だと思う」

 曲がりなりにも聖獣だ。悪気に取り込まれた人間程度にやられるはずもない。ましてや魔獣どもに害されるはずもない。

「虎凌と朱春は確かめたわけじゃねえから、まだわかんねえけど」

 麻耶希が押し黙った。唇を引き結び、何度も瞬きを繰り返す。涙を堪えているのだろうが、瞬きをするたびに大きな目はどんどん潤んでいく。羅乎が抱き寄せるように頭を抱えると少しぐずりの残る声が大丈夫と応じる。

「なんか、結構さ、深刻な感じじゃない?」

 あまり大丈夫そうではない涙目の麻耶希が言った。

「深刻だよ。俺ひとりでどうにかなるとも思えねえけど、でも、動く気はねえんだろ」

「……多分。でも、言ってはみる」

「どうせ無理だろ」

 ただでさえ、神拿国にも大陸にも興味のない連中だ。悪気に対しては特に腰が重い。

「とりあえず、やれる範囲でなんとかやってみるさ」

「わかった」

 明らかに沈んだ声だ。

「麻耶希、ほんとに大丈夫か?」

 麻耶希が頷く。

「まだわかんないんだもんね。みんなのこと、確認しに行ってみる」

「頼んだ」

 鼻をすすりつつ、麻耶希が任せてと答えた。それに手を上げて背を向けるのを麻耶希が呼び止める。

「羅乎兄」

「ん?」

「おじじ殿があまり無茶はするなって」

「何言ってんだ、くそ親父が」

 今更と思う。何を隠そう、今回の件、行けと言った張本人でもある。気になりつつどうしたものか逡巡していたのを後押ししたのが父親だったのだ。

「照姉も、気をつけてって言ってた」

「心配だけはすんだな」

「みんな心配してるんだよ」

 麻耶希が言った。

「本当はみんななんとかしたいって思ってるよ。でも、そうはいかないから、あたしたちにやらせるんだよ、きっと」

「どうだかな」

「うちの父ちゃんは別としてさ。おじじ殿も照姉もさ、立場が立場だから仕方ないけど、そんでもちゃんと応援してくれてるんだし。そんな風に言っちゃだめだよ」

 それはわかっている。わかっているからこそもどかしい気がするのだ。

「こうやってさ、心配して麻耶希をよこしたのだって、照姉なんだからさ」

 相変わらず人使いの荒い姉だ。大方そんなところだろうとは思った。だが、言ってみれば、それが姉に出来る最大限の協力なのだということ。

「わかってるよ」


    3


 北幽門から麓に下り、一行は街道に出た。徒歩ではなく馬だったのでこれまでよりは格段に早い。有醍うだいのいた寺院で不本意な形で手に入れた馬だったが、今となってはそれは有難いことだった。

 羅乎も予想した通り、大陸北側の方が悪気の影響が顕著なのがわかった。元々雪国であるから、そろそろ町へ出て冬を乗り過ごそうという人間は多い。閑農期にあたる冬場は出稼ぎに出る者が多く、小さな集落では家族ごと町へいっていまうこともある。そんな風にして人気のない村はあったが、明らかにそれ以外の様相を呈している箇所が幾つも見受けられた。おかげで宿が確保できる町まではかなりな距離を行かねばならず、馬の偉大さをしみじみ感じることになった。

 日没直前に到達した町は半数程が不在らしく、ようやく確保できた宿もこの町でたった一軒だけのものだった。だが土地だけは広いらしく、隔壁は点在する家々を緩やかに囲い、どの家も平屋ながら大きなものが多い。宿屋もその例に漏れず、これまでに利用したどの宿よりも広い部屋だった。

「寺院がありましたね」

 阿己良が小さく確認するのに、李比杜が頷いた。

「ええ、町の中心に。小振りですが、綺麗でしたね」

 確かに寺院があったのを羅乎も覚えている。常駐している司教はおらず、規模も小さいものだ。単なる集会場といった様子もあったが、手入れが行き届いている感じがあり、町人から大切にされていることが窺えた。

 阿己良が食事の手を止めると、静かに立ち上がる。

「祈ってきます」

 殆ど食べた様子はない。北幽門を出て以降、明らかに阿己良の様子はおかしかった。

「いいのか?」

 李比杜が目を上げる。

「一人で行かせて」

 食堂を出る後姿を見送って、李比杜が小さく息をついた。

「町の中だ。特に荒れている様子もない。大丈夫だろう」

「それもだけど、そうじゃなくて」

 わかっている、と李比杜が言った。

「しかし、お一人になりたいことだってあるだろう」

「そりゃそうかもしんねえけど、明らかに変だぞ、あれ」

 扉へ目を向けた横顔を李比杜の目がじっと見つめる。視線を感じて、羅乎は口をへの字に曲げた。

「……なんだよ」

「殿下の気鬱の原因はお前だ」

「はあ? 俺が何かしたってのか?」

 途端に不機嫌になる羅乎に李比杜はそういう意味ではないと首を振る。

「殿下は気になっておいでなのだ」

「なにが」

 お前のことだと李比杜が言う。

「追求しないと仰る。だが、本当は気になっておられるのは事実だ」

 李比杜だけではなく、阿己良もまた羅乎について知りたいと思っていることは十分感じていることだ。羅乎自身としては別段、隠そうとは思わないのだが、だからといってうるさく言う連中もいることは否めないので必要以上に吹聴できないのは致し方ない。

「思うに、だ」

 李比杜が一口茶を啜った。

「殿下はお前が好きなのだと思う」

 羅乎が目を丸くする。

「男女のとかそういうことを言っておるのではないぞ。そういう意味ではなくて、恐らくはじめて出来た友人なのだ」

 変に期待をさせやがって、とは言わなかったものの、多分に顔に出ていたかもしれない。

もし好きだと言われれば、自分の中で越えられない部分を後押しされたようなものである。ただでさえ自分でもかなり制御が危いのだ。この際、都合の悪いことは無視してしまえという気がなくもなくも、ない――複雑だけど。

「友達ねえ。まあ、立場的に難しいよな。光栄だとでも答えればいいか?」

 思わず皮肉な口調になってしまうのは、友達は所詮友達だからだ。

 どう捉えたのかはわからないが、そうだなと李比杜がもっともらしく頷く。

「殿下はあまり恵まれた環境にはいなかった。これは、口外することではないのだが」

 そう前置きして李比杜が続ける。

「王家では長女以外、重きを置かれることはない。長女に何かがあってはじめて下の御子らに光が当てられる。そのくせ外に出ることもなく、ずっと王宮内で暮らす。身分はあるが、扱いは邪魔な存在だ」

 神拿国の皇位継承は長女のみ。これは古くからのしきたりだった。長女が亡くなれば、次女。完全な女系での継承となる。不可思議な力に護られた神拿国では女児が生まれないことはなく、皇位継承に滞りが生じることはこれまでに、ただの一度もなかった。

「女系だってのは知ってたが」

 長女以外の扱いというのは羅乎も正直よく知らない。羅乎の持つ知識では王位継承が女児であることと、琉拿の王宮から出ることはないのだということくらいだった。

「一般の民は次代様以外、王族を目にすることは殆どない。実際に何人の皇子がいるかを明かすことがない場合もある。そもそも継承に支障が出るのは非常に稀なことだからな。恐らくこれまでにも例はないだろう」

 だからこそ第二子以降は不要な存在なのだ。だが、もし万が一何かがあれば困る。ただその保険でしかない。そんな状況にありながら、どこまでも抑圧された生活をしていなくてはならない。そしていざ、何かがあれば、まず狩り出されることになる。

「殿下も例外ではない。これまで一度も外に出られたことはないし、人々の生活などご覧になられたこともないのだ。それなのに今回の有事に対し、立ち向かえと言われた。それでも阿己良様は何も仰らなかった。あの通り、耐えておられる」

「……」

「本当はお止めしたのだ。まずは姉君の迦瑠亜かるあ様をお探しするからと。だが、それでは間に合わないと仰り、捜索と同時に己ができることをすると言って聞かなかった」

 李比杜が溜息をつく。

「穏やかな方だが、そういう時の阿己良様は頑なでな。てこでも意見を変えぬ」

 それはこれまで一緒にいてよくわかる。頼りなげなくせに、いざとなれば立ち向かう勇気を持っている。それは出会った時もそうだった。

「そういう意味では頑固な殿下だが、普段、我儘をおっしゃることはないのだ。それが珍しくだだをこねた、お前のことで」

「俺?」

「お前のことだけは、何か、譲れないものがあるようなのだ。それにとても信頼しておられる」

 そう言われると、悪い気はしない。

「俺はどこまでいっても家臣でしかない。あるいはお前なら、殿下の友になれると思う。お前にとっては迷惑な話かもしれんが、どうか阿己良様を支えて差し上げてほしい」

 鋭い眼光は、だが真摯な光を帯びていた。そこには何者かもわからない自分に対する信頼が窺える。これは阿己良によるところが大きいのだろうが、神拿国の人間は気に敏い者が多い。本能的に何か感じるものがあるのかもしれない。

 だとすれば、今後、神拿国の人間と接するのは気をつける必要があると密かに思う。

「……俺は」

 ほんの一瞬だけ、躊躇した。言うべきか、言わないでおくべきか。だがそんな胸の内を思い、自身苦笑する。結局、羅乎もこの李比杜を信頼し、結構気に入っていたりするのだ。

 向けられる真剣な思いにはきちんと答えたい。そして、もはや無視し続けることも厳しくなってきた己の気持ちにも、そろそろ正直になるしかないのかもしれない。

「俺は、阿己良が好きだ」

 羅乎は紫の瞳をまっすぐに見返した。

「……どういう意味だ」

「そのままの意味だ」

 どう解釈されても構わない。それが本心であることは間違いないのだ。

 だから、と羅乎が立ち上がる。

「絶対に、阿己良を見捨てるようなことはねえよ」



 案の定、阿己良は寺院にいた。

 寺院の説法台の奥には半眼で口元に緩やかな笑みを湛えた女性の像がある。背中に丸い月を背負い、両手を広げたそれは夜と安らぎの女神、拿夜竹。琉拿教の主神である。阿己良はその正面に膝をついて、腕を組んで面伏せていた。

 声をかけるのが躊躇われた。静かに剣を外し、少し離れた席にゆっくりと腰を下ろす。窓から差し込むのは優しげな月明かり。女神の両手の先に、残り少ない蝋燭が揺れている。ただ静かに祈りを捧げる背中は儚げで、全てを背負わせるにはあまりにも小さい。

 ――なぜ、神は悪気など創られたのでしょう。

 そう問われたのはいつだったか。もちろん羅乎に答えがわかるはずもない。

羅乎自身、当然感じたことのある疑問だ。しかし問うたところで仕方がないのだともわかっていた。この世にある限り、何故も何もない。あるなら受け入れるしかない。受け入れて、乗り越えていくしかない。それが世の理というものなのだから。

 だが、そう告げたところでどうしようもない。恐らくそんなことは阿己良もよくわかっているのに違いないのだ。それでも思わず問うてしまう程にどうしようもない理不尽を感じているのだろう。

見つめる先、阿己良が安らぎの女神に訴えるのは悪気の滅亡か、人々の安寧か――それとも、神に対する苦情だろうか。

「わざわざ迎えにいらしたのですか?」

 ぼんやりと見ていた羅乎の耳に、少し拗ねたような声が届いた。

「ひとりでも戻れます」

「気付いてたのか」

「当たり前です」

「でも、ちげえよ。俺は拿夜竹なよたけに会いにきたのさ」

月夜つくよ様にですか?」

 神拿国の人間は拿夜竹をそんな愛称で呼ぶ。

「お前の迎えはそのついで」

 言って、振り返った阿己良を見上げる。

「で、何を落ち込んでる?」

 阿己良が目を瞠った。

「俺は回りくどいのとか苦手だからさ。気を使ったりとかも柄じゃねえし、率直に聞くけど。なんでそんなに沈んでんだ」

「別に、何も」

別にと言うわりには否定する声は弱く、視線は下向きだ。

――相変わらず嘘が下手だよな。

 最初から素直に言うとは思っていなかった。そんなことなら、とっくに打ち明けられているに違いないのだ。

 羅乎は立ち上がって、女神像の前で立ち尽くしたままの阿己良の元へと歩み寄る。

「話す気はねえってか」

 最前列に座って剣をつくと、その柄に顎を乗せる。わざとぶっきらぼうに言ってみたのだが、阿己良から返る言葉はなかった。

「なあ、阿己良」

 暫くの沈黙の後、名前を呼ばれた阿己良が目を上げる。

「前に言ったろ? 一緒に頑張ろうって、一人で背負うなってさ。覚えてるか?」

 阿己良が頷く。

「俺じゃ頼りねえかな」

「……え」

「ほら、俺ってよそもんじゃん? 李比杜みてえに忠臣ってわけでもねえし。阿己良に拾われただけだからさ。お前が要らないって言ったら、まあ、それっきりなわけだよな。だからもう少しあてにしてもらえたらっていうか」

「……」

「何を心配してんのかわからんけど、相談なんか出来ねえって思われてんのかなってさ」

 なんとなく、言ってる自分の方がよほど胡散臭いように思う。なんたって外身と中身からして一致していないのだから、一番不安定なのは自分自身ではないか。そんな己の言葉がきちんと届くものか、些か心配ではある。

 案の定、阿己良の目は暗く沈んだままだった。

「そんなこと、ないです」

 ごめんなさいと阿己良の力のない声がした。

「今日だけですから。明日は、ちゃんとしますから」

「ちょっと待て。どこ行くんだよ」

 小さく頭を下げて去ろうとする阿己良の手を捕まえた。

「俺は、そういう強がりを求めてるわけじゃない。なんていうか――」

 阿己良の目が羅乎を見やる。その目尻に、僅かに涙の跡があった。

「あっと……ごめん」

 思わず詫びて手を離した。そしてなぜ謝ったのか、自分でも疑問に思う。

 まさか泣いていたのだとは思わなかった。たとえ泣いていたにしても、その痕跡を目にしただけで、自分がこんなに動揺するとも思わなかった。まるで自分が泣かせてしまったかのような錯覚を抱き、どうしようもなく心がざわつく。落ち着かない。

「だから、その。そうじゃなくて。そういうことじゃねえんだよ。話たくないなら話さないでいいんだ。けど、話してもらいたいってのもあって、でも、話せないのは俺のせいなのかなとかって――何言ってんだ、俺」

 支離滅裂すぎる。髪をかき混ぜて羅乎は舌打ちをした。

こんなことでは頼ってくれと言った手前、格好がつかないではないか。そう思う反面、泣く程に悩んでいるなら、どうして相談してくれないのかと責めたい気持ちが湧く。

思えば、阿己良が弱さを見せたとすれば有醍が死んだ時だけだ。神に対し疑問を口にしたあの夜は、あまりに凄惨な死体を目の当たりにした衝撃があったから。

それ以外、弱音を吐くのを聞いていない。死を悼む涙は見せても、己の弱さから来る涙を見たことはなかった。目を向ければ、柔らかな笑顔を向けるだけ。

「ああ――もおっ!」

 頼ってもらいたいとか、そんなことはこの際どうでもよかった。一人で泣いていたのだという事実が、羅乎の胸に痛かった。

「なんで泣いてんだよ! ――ひとりで、こんなとこで」

 羅乎が腕を伸ばす。驚く阿己良の腕を引き寄せると、しっかりとその身体を抱き止めた。

「そんなの見てらんねえよ」

「……羅乎」

「だから、もう、泣くなよ。頼むから」

 もしかしたら、これまでにもこんなことがあったのかもしれない。ただ自分が気付かなかっただけで。阿己良はずっと一人で泣いていたのかもしれない。

「……ごめんなさい」

「謝るな!」

「あ、うん……えっと、ごめんなさい」

 阿己良らしい言葉に羅乎は苦笑する。すぐ耳元で笑われたのがくすぐったかったのか、小さく声を発して、阿己良がほんの少し肩を竦めた。

「だから、謝るな」

 羅乎はわざと囁き声で告げると襟元に顔を埋めた。

 泣き顔を見ただけでこんなに動揺するのでは、もはや自分はどうしようもない。抗うだけ無駄な気がした。このまま姿が戻らずにいれば対外的には問題ないのだ。邪魔なのは、自分の、至極正常で真っ当な矜持の部分――それだけで済むことでもないと言えばないかもしれないが。

 ――それもこれも、もう、どうでもいい。

「ら、羅乎?」

 阿己良の身体が少し強ばったのがわかった。構わず、ほっそりとした首筋に唇を押し当てた。そのまま耳元から項、ほんのりと染まった頬へと口づける。唇が触れるごとに阿己良の身体が熱くなっていくのが感じられた。

 色づいた頬を撫でる。顎を捕え、いざ顔を寄せた瞬間、

「僕、男の子です! 男なんです」

 今、一番聞きたくない言葉だ。無視しようとして――羅乎は首を傾げた。

 自分は今、女の格好だ。だったら問題ないはずだが、阿己良の発言はそうではない様子を匂わせる。

 ――まさか、気付いているのか

「阿己良、どういう意味だ」

 羅乎が身体を離すと、阿己良は恥ずかしそうに顔を伏せた。

「羅乎は女の人が好きなんでしょう? 自分も女性なのに」

「……………………………………………………………………………………はい?」

「はじめて会った時、僕が男だって知ってがっかりしてましたよね」

 ばれていない。ばれていないということは、わかった。

――だがしかし

何かが著しく間違っている。

「いや、それはだな」

「今日会ったあの子もとても仲よさそうでしたし」

「あれは、その」

「わざわざ離れてお話するなんて、もしかして……こい――」

「あれは――従妹だ」

 阿己良の言葉を遮って、まず真実を告げる。

「恋人なわけがねえ!」

 この真実以外、どう告げればいいのだろう。

 今の態度で自分が阿己良を好きなことはわかったはずだ。だが、ここで女が好きなわけではないと訂正したとして、じゃあ、男が好きかというとそうではない。実は男だからなんて白状しようものなら、そもそも同性である阿己良はどう思うのか。

「――」

 羅乎はその場に頽れた。忌避こもごも、様々な表情を浮かべ、膝をつくにいたった羅乎を、阿己良が不思議そうに見下ろす。

 なんで、もっと早く訂正しておかなかったのか。いや、どこを訂正すればいいのか。

 せっかくの機会を逃したこともだが、それ以上に、せっかく超えられない一線を越える勇気を出したというのになんということかという大きくも、それでいて些か複雑な悔しさがあった。

 何はともあれ、どこをどう考えようと、不毛以外の言葉が浮かばない羅乎だった。



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