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2,ある若者のこころの内

忙しそうで投稿できそうにないので前倒ししました。申し訳ありません…。

 2,「ある若者のこころの内」


 私は伯爵家の娘だ。

 だから、士官学校へ行ったのは国の中での政治闘争に巻き込まれたくなかったからである。愛してもいない男のもとへ嫁ぐ何てことはしたくはない。


 だが、私も一貴族の端くれだ。伯爵家の地位を安泰だと言えるものにするためには、やはり嫁ぐ必要があるだろう。


 だからだろうか、士官学校で、ある男が目に留まった。目に闘争心を宿し、自分の目指す道に向かってひたすら努力を重ねる姿勢がとても素晴らしく見えた。だが、逆に私のこれからの生き方を非難しているようにも見えたのだ。



 私はついつい言ってしまった。


「君は凄いよ、こんなに必死になることができる」


 ーーー未来が決まってしまう、私と違って。


 その言葉はなんとか喉の奥にしまいこんだ。

 対して彼は、


「皮肉かよ」


 そう言った。



 今思えば、これは彼にとって失礼な言葉だった。

 士官学校での成績は私が首席、彼が次席。

 相手を貶す言葉としてとられても仕方ないもの。だが、彼を素晴らしく思ったのは本当のことだった。





 私の親、父は健在であるが、母は弟を産んでから亡くなった。まだまだ子供をつくるということで命を落とす女性も少なくはない。私も仕方がないことだったと割り切っている。


 しかし、父はそうではなかったようだ。元々父と母は貴族では珍しく互いに愛し合う形で結婚をした。父は愛人もおらず、母一筋だったのだ。


 母が亡くなってからというもの、父は私と弟を前にもまして良くしてくれた。父にとっては私たちは母が遺した、文字通り宝物なのだろう。




 …弟は、まだ八歳になったばかりだ。成人するにはあと七年足りない。父もまだまだ負けられんといって頑張ってはいるが、正直なところきつい状況だろう。


 だからこそ、私がやらねばならない。


 この国での女の役割は専ら他の貴族とのパイプ作りが主である。他の貴族の次期当主や現当主に嫁ぎ、その庇護を得る、もしくは利益を得ることに使われる。



 父は私には表だって言わないが、さすがに十五歳となり、成人したのだからそのぐらいのことは理解している。…理解しているつもりだが、嫁ぎたくないのもまた事実だ。



 だから、士官学校に入学したのは最後のわがまま、足掻きと言ってもいいかもしれないが、それに近い感情があったからとも言える。



 士官学校に入学し、軍人として出てしまえば扱いは伯爵令嬢ではなく一人の軍に属する者となる。

 そうなってしまえばなんとか私が嫁ぐまでの時間は稼げる。その分、父には頑張ってもらわなければならないが…



 父も私を他の貴族との繋げ役としては使いたくないのだろう。私の考えなど見通しているはずなのに、

「行っておいで、頑張るんだよ」

 と送り出してくれた。



 だが、私の考えには少し先がある。



 もし私が軍でそれなりの地位につけば、ある程度伯爵領地にお金を回すことができる。

 また、軍的な力を目当てに私を取り込もうとする貴族が出てきてもおかしくはない。



 私は伯爵家のために、家族のためにやらなければならない。それが私にとってどんなに辛い道でも。願わくば、その先にある未来が私の家族にとって幸福なものでありますように。






 さぁ、まずは初陣…ここから始まるのだ、荊の道が。







誤字脱字等ありましたらご報告ください。









なんとか2話目書けて良かった……

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