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紅い実に導かれし乙女たち  作者: 藤原ゆう
プロローグ
3/15

ルカの場合

 屋台には可愛らしい雑貨が所狭しと並べられていたが、ルカはそれには目もくれず、ただ一点を見つめている。

「いらっしゃい。君は……初めてのお客さんだね」

 にこやかに声を掛けてきたのは、茶色の巻き毛が印象的な男性だった。

 けれどルカは反応しない。

「あのう、もしもし?」

 再三店主は呼んだが、一点を見つめたまま。

 声が聞こえていないのかと思うほどの惚けようだった。

「何が、そんなに気に入ったのかな?」

 ポンと強めに肩を叩くと、ようやく我に返ったようで、顔を店主へ向けた。

「え……」

 だが今度は店主を見つめたまま微動だにしなくなってしまった。

「今度は何?」

 それでも優しく問い返す店主は、よほど我慢強いのだろうか。

「え、いえ。あの。外国の人なんですね?」

「ああ、僕?そう。外国人だよ」

 そう言って、くすっと笑った店主に、ルカは顔を赤くした。

「モデルさんか俳優さんみたいですね」

「僕が?どうして?」

「だ、だって、こんなに綺麗……」

 ルカは自分で言っておいて、さらに顔を赤くしている。

「そうかな?自分のことはよく分からないけど。ありがとう。嬉しいな」

「この街に住んでるんですか?」

「いや。住んでるのは、違うところだよ」

 それはそうだろうとルカは納得した。

 だって、こんな綺麗な人、住んでいたらとっくに噂になっているだろう。

「ここに、こんなお店があるなんて、知りませんでした」

「まあ、宣伝とかしないし、知る人ぞ知るって感じだよね」

「……寮生の通学路になっているのに、誰も何も言ってないんです。それに……音楽も。聞こえてきたのは、今日が初めてなんです」

 知っていたら、こんな素敵な場所、とっくに通っていたはずだ。

「音楽って、これのことかい?」

 そう言うと、店主は屋台の陰から何かを持って来た。

 それは小さな手持ちのハープだった。

 小さいながらも繊細な彫りがなされていて、それが高価な物であることが窺われた。

 店主はおもむろにハープを奏で始めた。

 ポロロロ……ン。

 それはまさしく、オルゴールのようにも聞こえたあの音色で、ルカはじっと聴き入った。

 時に速く、時にゆっくりと。

 単調ではない曲を、店主は優雅な指使いで演奏する。

 ルカはまた惚けたようにその姿を凝視していた。

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