ルカの場合
香野ルカは大学の構内をぼんやりと歩いていた。
2年生。
そろそろ就職のことも考えなくてはならない年だ。というのに、彼女にその気は全くないようだった。
かと言って遊びに夢中になっているわけでもなく、合コンの誘いも片っ端から断り、浮いた話は一切ない。
けれど空いた時間に勉強しているのかと言えばそんなこともなく、彼女の私生活はただ単調に、ぼんやりと過ぎていくと、そんな感じだった。
「ちょっと変わってる」が、友達の間での彼女の一貫した評価だった。
しかし、そのちょっと変わってるが面白いらしく、友達は比較的多い方なのがせめてもの救いだろうか。
この日もぼんやり歩いている彼女に駆け寄る同級生が数名いた。
「ルカー!」
名前を呼ばれると同時に振り向いたルカの顔には、満面の笑顔が張り付いていた。
「もう帰るの? 講義は?」
「まだあと2限残ってるよ……?」
はっと気付けば、ルカはあと数メートルで校門を出るところだった。
「あ、あれ。おかしいな」
確かに教室に向かっていたはずなのに。
無意識のうちにエスケープ?
(こりゃ、重症だわ)
最近は何事にも身が入らない。
自主休講もお手の物だが、さすがに勝手に足が校門の外へと向いていたのは今回が初めてだった。
「迷っちゃったよ。さ、教室行こ」
気を取り直すように言って踵を返したルカの背中に、同級生がポツリと呟いた。
「2年通ってんのに、まだ迷う?」
呆れているようにも、心配しているようにも聞こえる声音に、ルカはすっと肩をすくめて見せた。