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サンタを見つけたいけれど

作者: 沢森ゆうな

短いです。クリスマス近いので書いてみました。

「ほら、早く寝ないとサンタさん来ないわよ」


「いやー、サンタさんに会いたいの」


 そう言って、寝ないで待とうと毎年頑張っていたけれどいつの間にか寝ていたクリスマスイブの夜。

小さい頃そんなやり取りを毎年していたというのを親は笑いながら話してくれたけど私の記憶にはない。


小さい頃の記憶というのは曖昧で、やがて私はサンタを信じなくなり、プレゼントをサンタではなく親にねだりだし、そして今は恋人にねだっている。


「これ、このバッグが欲しいなぁって」


「んー、どれ……って高っ!!自分で買えよ」


「ダメ?だってクリスマスだよ。私も時計買ってあげるから」


「割に合わない。俺が欲しい時計は二万円だぞ」


 私が付き合って三年目の彼氏にねだっているバッグは七万円。雑誌で見て一目ぼれ。自分で買うにはちょっと高いのでこうしてちょうだいアピールをしている。


「七万って俺の給料の半分とは言わないけど、それに結構近い額だぞ。俺に半月タダ働きしろって?」


だんだん声が不機嫌になってきた彼氏の様子に、ここが潮時かと私は諦めた。ちぇ。


「あーあ、サンタはやっぱりいないのかぁ。残念」


「サンタかぁ……俺、サンタっているんじゃないかなって今でも思うときがあるんだ」


「は?」


「お前その顔ひどいよ」


思いっきり馬鹿にした表情をした私に恋人は項垂れた。や、だってサンタだよ?サンタ。

今は小学生すら信じてないんじゃない?



「プレゼントとかはそりゃくれないけどさ、ほら、人間がいるんだし、宇宙人やサンタがいたって可笑しくはないし……」


ごにょごにょと言いにくそうに言う彼氏に無言で続きを促すと、照れたように恋人は頬を掻いた。


「いるかもって思うとちょっと楽しみなんだ、クリスマスイブからクリスマスにかけては特に。夜中に空とか見てさ、いねーかなぁとか……引いた?」


「引きはしない……しないけど『乙女かっ!!』ってツッコミをしたい」


「そうだよな」


彼氏はまた照れたように笑う。その時の会話はこれで終わり。


 その彼氏とは何ヵ月後かには別れ、そしてあれから何年か経った。


 私は毎年、クリスマスの時期になると思い出す。

あの時の彼を。

 欲しかった筈のバッグの記憶は薄れていくのに、彼が言ったことは覚えている。


「サンタ、そりに乗って飛んでないかなぁ……」


 クリスマスイブの夜、空を見るのも当たり前になってしまった。


 彼は純粋だった。

その純粋さが羨ましくて、私は今年もサンタがいないかと夜空を見上げる。

 サンタを見たいんじゃなくて、彼の純粋さに近づきたくて。


でもそう思う自分は純粋ではなくて。


「サンタ……いないかなぁ」


そう呟いた言葉は白い息と共に夜空に溶けていった。




私は純粋ではありませんが、いるんじゃないかなぁって本当にちょびっと思ったりします。

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