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07 Weight-Of-Responsibility-And-Sacrifice[責任と犠牲の重さ]

「クラックスさん!私にも行かせてください!」

そう言って飛び出そうとするカレンをクラックスは腕を掴み引き止めた。

「君はかりにも敵国の人間だ、行かせるわけにはいかない」

「っ……」

カレンは振り切ろうとした手の力を緩めた。

           帝国軍は軍事境界線を越えて連合国側に侵入してきた。

連合軍もブルーオーシャン基地から部隊を出し、迎撃する。

「隊長、敵はやはり…」

グリムは不安げに言った

「嬢ちゃんだろうな」

リーベンハルトは冷静に答え…

「基地をヴァルキリーもろとも破壊する」

「場合によっちゃあいつも…かもな」

ミズキとケリィも続く

「どっちにしろ基地をやらせるわけにはいかないんだ」

「だよなぁ!」

           

「十二時の方角に敵影多数確認」

「下にもいるぞ」

帝国はついに最前線であるブルーオーシャン基地に攻撃を仕掛けてきた。敵部隊は航空戦力に加え数隻の戦闘艦の姿もあった。

「すごい数です」

ミズキが驚くのも無理はない。

レーダーの上半分は敵の反応でほとんど埋まっている。

「ビビってんじゃねぇ!数は負けてねぇんだ、あとは腕でなんとかしろ」

大部隊の接近にともないクラックスは中央に援軍の要請をしていた。

「各機へ、攻撃を開始しろ、一つも後ろへ通すなよ!」

「了解、攻撃開始」

           『こちらスワロー中隊、下からの対空放火が激しい!』

『スワロー5がやられたぞ!』

空はまさに混戦状態になっていた。

そんな中、リーベンハルト小隊も必死に戦った。

「くそっ敵の数が多い」

「上はミサイル、下は対空放火かよ」

彼らの善戦もむなしく、徐々に帝国軍が数で有利に立ち始める。

           基地で帰りを待つクラックスは現場から逐一入る苦戦の知らせに、不安と焦りを募らせていた。

「他に出れる機体は無いのか!?」

部下に叫ぶも、返ってくるのは

「整備が終わってません!」

の一言のみ。そんな彼は気付いていなかった。

さっきまで横にいた少女が消えていたことに

           

「グリム!後ろに来てるぞ!」

その混戦ぶりに気を取られている隙に、グリムの後ろに敵機が迫って来ていた。

グリムは急旋回し振り切ろうとする。

「駄目だ!振り切れそうにない!」

敵機は振り切られることなく後をついてくる。

グリム機の警報が小刻みに鳴りだし、ロックされたことを知らせる。

「ロックされた……!」今にもミサイルが発射されようとしている

(ここまでか……)

グリムが覚悟した次の瞬間――

一筋の赤い光がニ機の敵機を貫いた

機体には穴があき、赤々と焼けている

爆発の向こうに見えてきたのは見覚えのある黒い機体だった

「あれは……」

「グリムさん!大丈夫ですか!?」

無線から聞こえてきたカレンの声は少し震えていた

カレンはそのままグリムの横についた

「カレン、なんでここに……?」

 横にいるヴァルキリーのコクピットを見ると確かにカレンが乗っていた

「自分だけ何もしないのは嫌なんです」

 カレンはギュッと操縦桿を握った

 操縦の訓練は受けていたが、実戦は初めてだったのだ

「隊長……」

「嬢ちゃんもそれなりに覚悟してんだ、いいじゃねぇか」

 リーベンハルトはあっさりと答えた

 そして無線のスイッチを切り替え基地に繋いだ

「リーベンハルトだ。今からこの嬢ちゃんを、うちの五番機として編入する」

『リーベンハルト!ちょっと待て……』

 基地にこの事を伝えると、クラックスの話を聞かずに通信を切った

「隊長、いいんすか?」

 すかさずケリィが聞いてきた

「いいんだよ。なんならケリィ、お前が嬢ちゃんについててやれ」

「えーー!?」

 ケリィは眉をひそめてあからさまに嫌な顔をする

 彼は戦争が始まってからは、空戦のスリルを楽しむようになっていた

 しかしカレンについていては楽しむ余裕はなくなってしまう

「ケリィさん、よろしくお願いします」

「しょうがねぇな、遅れんなよ!」

 カレン機の登場によって、劣勢だった連合は徐々に逆転していった

「もう少しだ」

 一瞬感じた勝利への期待は、直後に入った通信がかき消してしまった

『戦闘空域に高速で接近する物体あり、数四、黒の女神です!』

 

「ちっ!こんな時に」

 女神達の実力を知る連合の兵士達からは、すくなくとも希望は消えた

 だがそんな中、カレンは違った

「彼女達の狙いは、私なんですよね」

 カレンは近付いてくる女神達を見つめながら静かに言った

「おれは隊長にお前を任されたんだ、お前は後ろに付いてくればいい」

「でも私は……」

「守ってやるって言ってんだから言う通りにしてろ!」

「……はい」

            連合との開戦を決めた父親を、止められなかった自分は、今や祖国から命を狙われている

 思いを同じくし、逃亡を手助けしてくれた者達も捕まってしまい、生きてはいないだろう

           (守ってやる)

            孤立無援となったカレンにとって、その力強い言葉は不安を取り除くのに十分だった


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