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05 Blue-Sea-And-Black-Goddess[青い海と黒の女神]

この時基地は襲撃準備を急ピッチで進めていた。

「リーベンハルト!お前は大隊長だぞ、ノコノコ出ていくな!」

準備をしていたリーベンハルトの所にクラックスが駆け寄ってきた。

「何言ってんだクラックス。おれにデスクワークなんか似合わねぇよ」

ハシゴを登り操縦席についた。

「そもそもおれが簡単にやられると思ってんのか?わかったらさっさと退け」

リーベンハルトは自信満々に言い返した。

「……死ぬなよ」

「当たり前だ」

リーベンハルトはそう言って機体をゆっくり滑走路に向かわせる。

『リーベンハルト隊、発進どうぞ』

「リーベンハルト隊、発進するぞ!」

徐々に出力を上げ、加速していく。

グリムとミズキもそれに続く。

地面から浮き上がるとさらにスピードを上げ、あっという間に見えなくなった。

「すごいな、やっぱガーベラとは違う」

「試験用と一緒にするな。そんなこと言ってる暇あったらちゃんとついて来い、飛ばすぞ」

途中、他の基地からの援軍と合流しセントマリーへ飛んだ

           

「見えてきた」

彼らの正面にセントマリー軍港が見えてきた。

軍港に近づくにつれて、その被害の大きさが明らかになっていく。

軍の施設はガレキの山となり海には破壊された艦船や戦闘機の残骸が浮いている。

「港が……」

ミズキはいたる所から黒煙を上げ、崩れる軍港を見下ろしながら悲しげな表情を見せる。

「よそ見してる暇はないぞ。敵さんが来た」

正面から敵機が迫る。

数は三。

リーベンハルトが挨拶代わりと機銃をばらまく。

これは牽制攻撃であるが当たり所が悪かったのか徐々に失速し落下しながら爆発した。

「お、もうけ」

今度は敵機が機銃を撃ってきた。

リーベンハルト達はこれをかわし、敵機とすれ違う。

「いいかお前等、ここからが命懸けだ!絶対にバラけるな、今は生き残ることを考えろ!」

目の前で爆発ともに消えていった命。

グリム達はこれが戦争であることを実感する。           

「もらった!」

発射ボタンを押すと、ミサイルは飛びかう戦闘機を擦り抜け目標に命中する。

飛び散った破片をかわし次の敵機に目を向ける。

グリムは敵機をためらい無く攻撃している自分に恐怖を覚えながらも、

(これは戦争だ。やらなければやられる)

そう言い聞かせていた。           

「お前等生きてるか?」

「はい、大丈夫です」

ミズキはそう答えるが確実に疲労している。

そこへ空中官制機から通信が入った。

『敵増援接近中。数三、ライブラリ照合、ヴァルキリーです』

「《黒の女神》か」

リーベンハルトがぽつりと呟く。

《黒の女神》――

帝国空軍のエース部隊としてその名は連合国軍兵士にも知れ渡っている。『久しぶりだな、リーベンハルト』

聞き慣れない女の声は近づいてくる黒い機体からだった。

「シャロン……」

リーベンハルトはその声に答える。

「お前が出てきたとゆうことは、帝国も本気ってわけか」

黒と白の機体がすれ違っていく。

『安心しろ、今日は様子見だ』

シャロンは冷たく言い放つ。

まるで勝利を確信しているかのように。

「そりゃどうも」

シャロンは鼻で笑い通信を切った。

そして散っていた部下達を集め、飛び去っていった。

(あれが黒の女神……)グリム達は接触した僅かな時間で、彼女等との力の差を感じていた。

           その後、セントマリー軍港における戦いはグリム達援軍の力もあり、なんとか押し返すことに成功した。

しかし味方の被害は勝利と呼ぶには程遠いものだった。

「停泊中だった三隻の空母のうち、《ジャクリーン》《ヴァネッサ》が轟沈。残る《エリザベス》も被害は小さくありません」

「三隻全て駄目か」

戦術室は重たい空気に包まれた。

「脱出した乗員の話では黒い機体にやられたと」

「隊長、黒の女神って一体……」

グリムの問いにリーベンハルトは背中を向けたまま答えた。

「黒の女神ってのは、帝国の新鋭機ヴァルキリーと女だけで構成されるエース部隊だ」

そう言うリーベンハルトの背中を見ながら、グリムはただならぬ気配を感じていた。

「今のお前等じゃ、やられるだけだ」

その言葉に息を飲んだ。

初陣を生き残ったことでついていた自信もグラグラと揺れてしまいそうなほどに。

                      帝国首都、大総統府――靴音を響かせながら一人の女性が廊下を歩いている。

そして豪華に飾られた扉の前で立ち止まった。

「大総統、シャロン大佐です」

「入れ」

シャロンはゆっくり扉を開き、中に入った。

中には大きなテーブルと大きなイス、そしてそこに座る一人の男。

「お呼びでしょうか、シュナイダー大総統」

シャロンは軽く頭を下げる。

「シャロンよ、連合はどうだった?」

「今は大きな驚異ではありません。ただ……」

「ただ?」

「リーベンハルトがいました」

シュナイダーは小さく笑う。

「リーベンハルトか、懐かしい名だな」

シュナイダーは思い出すように目をつむった。

手に持ったグラスを置くと、立ち上がり窓から外を眺めている。

「【資産】の調査も間もなく終わり、次の段階に入ろうとしている。お前には引き続き連合の気を引いていてもらうぞ」

「はっ」


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