04 To-The-Sky-Of-One's-Home[故郷の空へ]
帝国機との戦闘後、ブルーオーシャン基地では侵入経路や、撤退先の特定がされていた。
「室長、結果がでました。」
「うむ。」
「撤退した帝国機ですが、帝国領に入ってしばらくした後、突然レーダーから消えました。侵入経路はおそらく低空で侵入してきた為、センサーが反応しなかったようです。」
クラックスは顎に手を当てながら報告を聞いている。
手を下ろし目を瞑ると、しばらく考え込んだ。
「…やはり、帝国なのか。」
「室長っ!!」
するとそこへ部下の一人が息を切らせながら慌てて入ってきた。
「なんだ、どうした?」
「これを…!」
部下は自分の席につくとモニターにテレビの映像を出した。
『先日、突如我が帝国空軍レオール基地を襲った国籍不明の戦闘機部隊は、連合軍ブルーオーシャン基地から発進したものであることがわかりました。』
映像は帝国国営テレビのニュースだった。
ニュースは帝国軍基地が連合軍部隊に襲撃されたという。
さらにその発生時刻は訓練生が襲われたのと同時刻だった。
『これは明らかに侵略行為であり……』
クラックス達はそのニュースを見ながら茫然としている。
全員がモニターを見て固まってしまっている。
「これは…どうゆうことだ…」
「映像に合成の形跡は見られません…実際の映像です。」
するとまたしても、部屋の外から走ってくる音が聞こえてきた。
ドアが開き、入ってきたのはリーベンハルトだった。
「おい、クラックス!あの放送はなんだ!?」
「落ち着けリーベンハルト。我々も今その話をしていたんだ」
クラックスはモニターを指差しながら言った。
ニュースはまだ襲撃の映像を映している。
「どこの馬鹿がやったんだ?」
「それより同時刻とゆうのが怪しい。その時間に出撃していた連合の部隊はない」
二人ともモニターを見ながら考え込む。しばらくするとリーベンハルトが口を開いた。
「クラックス」
「ん?」
「お前に任せる!」
そう言うとクラックスの肩を軽く叩き、出ていった。
「……一体何しに来たんだか」
クラックスはため息混じりにそう言った。
翌日――
『先日の連合による攻撃は、卑劣で許しがたいものであり、さらに【遺産】を自分達のものにしようている』
帝国から世界中に向けて、全てのメディアを使って放送がされた。その内容は……
『我々はこのまま、連合に蹂躙されるつもりはない!よって我々は連合に対して宣戦を布告する』帝国の宣戦布告……
これにより二国間の確執は一気に武力衝突に発展した。
連合国の最東端基地であり、周りを観光名所に囲まれたブルーオーシャン基地は、帝国に対する最前線基地となった。
ブルーオーシャン基地――ブリーフィングルーム 今ブリーフィングルームには訓練生が全員集められていた。
訓練生達の前には機動隊大隊長となったリーベンハルトがいた。
「いろいろと聞きたいことはあるだろうが、戦争が始まった以上お前等もスクランブル要員だ」
終了試験から数日、グリム達は結果の合否もないまま、帝国との戦争に駆り出されていく。
「それとこれからお前等の機体は《シルヴァーナ》になる」
グリムがふと横を見るとミズキが不安そうな顔をしていた。
膝の上に置かれた手が、小さく震えている。
「それじゃ、解散」
みんなが部屋を出ていく中、ミズキはなかなか立ち上がろうとしない。
「ミズキ」
「あ!グリム」
グリムが声をかけると、ミズキは少し驚いたように答えた。
「終わったよ」
「え、あ、はい」
ミズキは辺りをキョロキョロとしている。
それを見てグリムは少し笑いながら隣に座った。
「やっぱり、恐い?」
少し黙った後に……
「軍に入るって決めた時にこうなる事も覚悟してました。でもいざとなると……」
「おれだって恐いさ」
うつむいていたミズキは顔を上げて、グリムを見た。
「これから人を殺すかもしれないって思うとね。でもそうしないと守れない、大切な人とか場所とか」
「グリム…」
「無理しなくたっていいんだよ。仲間だっているんだから」
グリムは笑ってそう言った。
「はい」
ミズキ笑って答えた。
その時基地内に警報音が鳴り響いた。
『中央より入電!セントマリー軍港に帝国機が出現、攻撃を受けている』ミズキはそれを聞いた途端跳ねるように立ち上がった。
「そんな……セントマリーが」
セントマリーは軍事施設が多いため真っ先に狙われたのだろう。
そこはミズキの故郷でもあった。
「ミズキ行こう」
「……はい」
ミズキは小さく頷きグリムの後に付いて部屋を出た。
この戦いが公式では初めての両軍激突の場となるのだった