03 Quiet-Invader[静かな侵略者]
「α小隊、全機離陸完了。」
『β小隊、離陸完了。』二小隊、全八機のガーベラが綺麗な編隊を組んで飛んでいる。
「まもなく小隊ごとに二手に別れて折り返し地点に向かう。到着後、予定地点に折り返し、試験開始だ。」
その後二手に別れ、折り返し地点で折り返した。
「さて、もうすぐ始まるがお前等大丈夫だろうな?おれは見てるだけだぞ?」
「全部叩き落としてやりますよ!」
仲間の一人が言うとリーベンハルトは
「そうか。」
と笑いながら言った。グリムとミズキもそのつもりだ。
1400時―
「お、来たな。」
試験開始予定時刻、リーベンハルト達の前方に相手となるβ小隊が見えてきた。
『こちら、β小隊。いつでもいいぞ。』
「よし、時間もぴったりだ!試験開始だ!行ってこい!!」
そう言うとリーベンハルトは機体をロールさせ、離れていった。
グリム達はそのまま加速し、相手との距離を詰めていく。
ミサイルの有効射程に入った。
「!!」
その途端に相手のミサイルにロックされた。
少し遅れてグリムも相手を捉えミサイル発射と同時に、回避行動に入った。
相手のミサイルはグリム機のスレスレを通り抜けていった。
「…っ!!ふぅ!危なかった!」
「グリム!後ろです!」ミサイルをギリギリのところで回避し、ホッとしたのもつかの間、別の機体がグリム機の後ろについた。
「後ろにつかれた!」
「今行きます!」
すかさずミズキが援護に向かう。
「これで!」
ミズキはミサイルを発射した。
スコープの中で、ミサイルは白い尾を引きながら真っすぐ飛びβ小隊の機体に命中した。
『DESTRUCTION!』
「くそっ!やられた!」
撃墜された機体は試験空域を離れ、リーベンハルト達と合流する。
「ふぅ…ありがとう、ミズキ。」
「いえいえ。」
「負けてらんないな!」
グリム達は体勢を立て直し、残りの相手に向かっていった。
ブルーオーシャン基地―『機動隊戦術室』
「クラックス室長、終了試験開始しました。」
「そうか、始まったか。」
機動隊戦術室はこの基地の作戦立案、指揮、データ管理などを担当し、事実上の最高機関だ。
「何人受かりますかね?」
「今回の新人は優秀らしいからな。どうなるかな?」
「あ、さっそく一機リタイア。」
その時、レーダーに反応があった。
反応は全部で六。
その影は真っすぐに基地に向かっている。
「室長、これは…」
「…不明機に警告、リーベンハルト達にも伝えろ。それとこちらも発進準備だ。」
基地内に警報が鳴り響く。
『現在当基地に国籍不明機が多数接近中。搭乗要員は至急発進準備。』
基地内は隊員達が慌ただしく動きだし、緊張感が増していく。
不明機接近の知らせは、リーベンハルト達にも伝えられた。
「あん?不明機?どうゆうことだ、そりゃ?」
『わからん。とにかくもうすぐそっちのレーダーにも入るぞ。』
不明機は警告を無視し、尚も基地に接近してくる。
『こちらからも迎撃部隊を出した。試験は中止して、帰投しろ。』
「…わかったよ。おい!お前等聞いてたな?帰るぞ!」
「試験はどうなるんですか?」
「おれが決めることじゃない。いいから帰るぞ!」
彼らは試験を切り上げ、基地へ帰ろうとしていた。
すると別の空域で試験中だった小隊から通信が入った。
『こちらγ小隊!!現在国籍不明機に攻撃を受けている!!』
「!!」
『すでにΩ小隊は全滅!救援はまだか!?不明機は見たこともない……!!』
ここで通信は途切れた。彼らの全滅は機戦室でも確認されていた。
そしてリーベンハルト達のレーダーに敵の反応が現れた。「あれか…早いな。」
不明機は徐々に距離をつめている。
「おら、お前等!もっと飛ばせ!」
「これが限界です!」
試験用の特別機である。
その為スピードはそれほど早くない。このままでは追い付かれるのも時間の問題だった。
「基地からの部隊はまだか…!」
ついに一番後ろを飛んでいた訓練生の機体が敵の有効射程に入った。
「ロックされた!」
「真っすぐ飛ぶなよ!」
後ろからは敵の発射したミサイルが迫ってくる。
「旋回しろ!!」
「だ、駄目です!振り切れな……!」
次の瞬間、彼の機体はグリム達のすぐ後ろで爆発した。
飛散した破片が機体に当たり、カンカンと音がし。
「……くそっ!」
破壊された機体は、海に落ち小さく水柱をたてる。
尚も敵は接近する。
グリム達はただ逃げることしか出来ない。
しかしその矛先はグリムへと向けられた。
「今度はこっちか!」
今度はグリム機がロックされ、警報音が鳴り響く。
すると焦るグリムの横を何かが猛スピードですれ違った。
後方で爆発音がした。
『こちらブルーオーシャン基地第四機動隊だ!あとは引き受ける!早く離脱しろ!』
「助かった…」
そのまますれ違うと、後ろでは戦闘が始まった。グリム達は無事基地に戻ってきた。
その後、第四機動隊も全機無事帰還した。
彼らの話によると、不明機は見たこのない機体だったがよく見ると帝国のマークが入っていたという。
この戦闘で訓練生、教官合わせて九名が死亡。
帝国機はしばらく後、撤退して行ったと言う。