16 Break-Through[突破]
グリム達エグザイルの活躍により、戦争は一気に終結に向けて加速する
「航空部隊全機へ これより帝国軍最終防衛線を突破する 全機エグザイル部隊に続け!」
連合軍はすでに帝国首都周辺に展開された第三、第二防衛線を突破していた
そして陸海空合わせた最大規模の部隊で最終防衛線に攻撃をしかける
「全機、隊列組み終わりました 同時に全機攻撃準備完了」
「よし、行こう」
グリム達を先頭に約四十機にも及ぶ大規模の部隊が空を埋め尽くす
両の翼で大気を切り裂き、曇り空の中綺麗な隊列を組んで飛んでいる
しばらく飛ぶとグリムのイージスのレーダーに反応が出た
「前方に敵反応」
イージスのレーダーは他の機体よりも強化されているため、一番先に敵の接近を知ることが出来るのだ
「射程内に入ったわ 少しでも減そう」
長射程を誇るカレンのバスターが攻撃体勢に入った
正面から近づく敵機をロックしトリガーを引いた
発射された光は瞬く間に敵機に届き、二機の間を突き抜けていった
直撃はしなかったものの、レーザーの超高熱のため翼が溶け、そこからの爆発で墜落した
「やるなぁ!カレン!」
そして両軍とも射程内に入った
そして同時にミサイルと機銃が飛び交う空戦が始まった
「お互いなるべく援護出来る距離を保て!」
「後ろ!来てるぞ!」
「撃て!撃て!撃て!」
『全機!あの四機を落とせ!』
勝利を焦る帝国軍はグリム達のエグザイルに狙いを絞り、一斉に向かってきた
「一気に来ましたよ!」
「散開しろ!ケリィ頼むぞ!」
「はいよ!」
ケリィはアーセナルのマルチロック機能を最大限に使い、迫り来る敵機を迎撃する
「どうだ?だいぶ減ったか!?」
「あぁ!でもまだ来る!」
爆発をさけて、残った敵機が迫る
散開するエグザイルの後ろをとった
「まずい!後ろをとられた!」
「私が行きます!」
ミズキのエスペランサが、追ってくる敵機を振り切りグリムの援護に向かう
『ダメだ!速すぎる!』『なんてスピードだ!』
あっと言う間に敵機を振り切ったミズキは、グリムを狙う敵の後ろについた
『は、早い!』
驚いた次の瞬間、エスペランサの高機動ミサイルが命中した
「また助けられたね」
「いえ とんでもないですよ」
友軍機の助けもあって空の戦いは連合軍有利に進む
「防衛線はどうだ?」
「はい 地上は持ち堪えていますが、上空は突破されるのは時間の問題です」
「地上はそのまま持ち堪えさせろ うまくエグザイルを誘い込め 奴らさえ消えれば我らの勝ちだ」
部下に指示を出し、シュナイダーは数歩下がり腕を組んでスクリーンの方をむいた
(我らにはまだアレがある 負けはしない)
「最終防衛線突破しました!」
連合空軍は帝国首都への最後の壁を突破した
地上部隊も有利に立っていたため、給油の後帝国首都へ向かった
「航空部隊突破されました!」
「よし クランブル・レイを起動しろ」
指示を受けたオペレーターがパネルを操作する
「クランブル・レイ起動します」
画面が赤くなり、グラグラと揺れだした
すると首都の郊外にある小さな山の、中腹あたりにあるハッチが開き、巨大な砲身が現われた
「目標、接近中の連合空軍部隊」
「目標設定終了」
「発射!」
巨大な砲身が更に伸び爆発音と共に砲弾が発射された
砲弾は一瞬のうちに空へ消えた
給油を終えた連合空軍部隊は首都まで後わずかの距離まで来ていた
「これは……!」
グリムの顔が急に緊張しだした
レーダーに高速で接近する物体があった
明らかに航空機ではない
「クランブル・レイだ!全機回避行動!」
グリムの叫ぶ声を聞いて上を見上げると、もうそこには微かに砲弾が見えていた
「くそ!」
回避行動に入ったのと同時に、彼らの上にレーザーの雨が降った
「うわあああ!」
「クロウ小隊が全滅した!」
「ダメだ!落ちる!」
「相変わらずすげぇ威力だな」
「部隊の三分の一を失いました」
砲弾の発見が早かったため被害は最小限に留めることが出来た
しかし残った味方部隊は十数機、首都を攻めるには少し心許ない数だ
「グリム!無事か!?」
その時友軍から通信が入った
レーダーには五機の友軍反応、声の主はクラックスだった
「室長!?どうしてここに?」
「何かいやな予感がしたんだ カレン、君の以前の機体を借りたよ」
「あ、はい」
「クランブル・レイは次弾発射までにそれなりの時間が必要だ 今のうちに首都を攻めよう」
クラックスの小隊と合流し、クランブル・レイ発射の隙をついて首都攻撃を狙う
「見えてきた 首都だ」
太陽が地平線に消え、輝く夕日から漆黒の闇夜に変わろうとしていた頃連合軍部隊は、ついに首都上空に入った