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霧の魔女

夜の沼地は、戦いの名残で湿った空気が肌にまとわりつき、霧は濃くも淡くもなく、まるで私たち三人を包み込むかのように漂っていた。戦いは終わったはずなのに、胸の奥は未だに高鳴り、心拍は戦場の余韻を伝えている。


アレクは私の横に立ち、剣を下ろしたまま、霧の奥を見つめていた。その瞳には、戦いの熱と、私への揺るがぬ意思が同居している。私は一瞬、彼の目の奥にある揺るぎない覚悟を感じた――戦いだけではなく、私の存在を受け入れる覚悟だ。


「……これで、本当に終わりね」私は小さく呟く。言葉に迷いはない。ただ、霧に包まれた未来が、まだ見えないだけだ。


すると、アミットが笑顔で走り寄ってくる。濡れた髪を揺らし、手を小さく振る。その仕草は無邪気で、けれど確かに心の奥底で誰かを守ろうとする意思を含んでいる。私はその姿を見て、心の中に小さな温もりを感じた。


「エノア、大丈夫?」アミットの声が静かに霧を切る。私はうなずき、短く返す。「ええ、大丈夫よ」


だが、胸の奥にはまだ熱が残る。戦いの緊張、アレクへの想い、アミットの優しさ。すべてが混ざり合い、心を揺さぶる。理解できない人間のはずが、なぜか私の胸に届く感情――それは恐怖でも怒りでもない、ただ揺れ動く何かだ。


アレクは静かに私を見つめ、言った。「君を守る覚悟は、ここにある」その声には、力も勇気も、そして揺るがぬ意思が込められていた。魔女として、私が理解できなくても、心は確かに伝わる。


霧が少しずつ晴れ、沼地の水面に月明かりが映る。三人の影が、ゆらりと揺れながら交錯する。戦いは終わった――けれど、ここからが本当の物語の始まりだ。理解も信頼も、未来も、まだ霧に包まれている。


私は静かに笑う。――戦いは、ただの力比べではなかった。心の奥にある覚悟が、私たちを次へと導くのだと。そして、誰もがまだ知らない未来を、三人で歩き始める瞬間が、今、ここにある。

次回最終話もお楽しみに!

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