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決戦

霧がさらに濃くなる。白が全てを覆い尽くす中、私の緑の髪と白い肌だけが、かすかに紫色の光に映えて浮かぶ。水面が小さく揺れ、闇の中で波紋が広がるたびに、影たちの存在が揺らぐ。


「……まだ、来るか」私は静かに息を吐く。だが心の奥底で、興奮と緊張が混ざり合い、胸が高鳴るのを感じていた。戦いは単なる力比べではない。意思と覚悟、そして恐怖の連鎖だ。


アレクが前に踏み出す。剣先が夜の霧を裂き、私の魔力の壁をかき分ける。彼の瞳には迷いがない。ただ、私を見据え、私を信じている力が宿る。私は魔力を解き放ち、沼地全体を支配する霧と水で彼を囲う。しかしアレクは一歩も引かない。


「……理解できなくても、君のそばにいる」その言葉が胸に刺さる。人間でありながら、理解不能な魔女の私に対して恐れも屈服もせず、ただ向き合う彼の強さ。冷徹な魔女である私の心を揺さぶるには十分だった。


影たちが一斉に襲いかかる。灰色の体、光を吸い込む瞳、不規則に動く四肢。数の暴力に、アレクは剣を振り、私も魔力で応戦する。水面が跳ね、霧が舞い、沼地は戦場と化す。互いの意志が衝突し、夜の闇に火花が散るような感覚が走る。


アミットの声が、霧の奥から微かに響く。「エノア、気をつけて!」その声に私は一瞬心を揺らす。彼女の無邪気さと勇気は、私にとって予期せぬ刺激だ。守るべき存在として、彼女を意識せざるを得ない。


影の一体が水面を駆け抜け、私の足元を狙う。瞬間、魔力で水を操り、跳ね返す。刃と水が交錯し、影は溶けるように消えた。アレクは私の横を駆け抜け、素早く反撃する。息の合った二人の動きは、無言の信頼の証だ。


「……やはり、人間は面白い」私は心の中で笑う。愚かで滑稽で、だが真剣。理解できないはずの存在が、目の前に揺るぎない覚悟を示す。アレクの姿は、戦場の混乱の中でも確かに私を惹きつける。


霧と水、影と剣。全てが交錯する瞬間、私は決める。――この夜、この沼地で、彼らの意志を試すのは私自身だ。恐怖も希望も、覚悟も信念も、すべての感情が一気に高鳴る。


視界に映るのは、戦うアレク、叫ぶアミット、そして私。三者の意志がぶつかり合い、沼地の霧の中で運命が確かに動き始める。

次回もお楽しみに!

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