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夜の沼地は、いつも以上に静まり返っていた。霧が濃く、視界はほとんど閉ざされている。それでも、私は歩みを止めない。足元の水面に映る月明かりを頼りに、ゆっくりと、しかし確実に進む。


「……覚悟したのね」

アレク・カリス・フェルド・エノデンドラド。あの長い名前を胸に秘め、彼は私を見据えている。告白ではなく、覚悟をもってここに立っている。私には理解できない感情の動きだが、その目に迷いはない。


霧の中、私は魔力を帯びた手を静かに振る。小さな水面が瞬時に波立ち、霧が渦を巻く。私は存在感だけで相手を圧倒する。だが、アレクは怯えず、静かに踏み込む。その姿に、少しだけ心が揺れる自分を感じる。


「これで、全てを共にする覚悟……」

彼の声は低く、確かに私に届いた。私の視界に、初めて人間の意志が、魔女の目に映る。霧の奥で、私は静かに微笑む。人間の愚かさも、純粋さも、今日、この瞬間には美しい光となる。


しかし、静寂は永遠ではない。遠くから聞こえる足音、微かに揺れる水面、そして心の奥に潜む不安。私は全てを見据え、全てを受け入れる。彼の覚悟が、私の孤独を溶かすように、夜の沼地に淡い光が差し込む。


「……行こう」

私は手を差し伸べる。アレクは小さく頷き、迷いなくその手を取る。霧の中で、二つの存在が互いに認め合い、信頼を交わす瞬間が訪れた。


人間と魔女、異なる世界に生きる者同士。理解できないはずの感情が、今、確かな絆となって繋がる。霧はまだ深いが、私たちの前には、光が差し始めていた。


この夜、私は再び、願いの代償を受け入れながらも、誰かと歩む未来を知ったのだ。静かに、しかし確実に。

次回もお楽しみに!

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