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魔女は語らない
霧は、やがて元の濃さを取り戻す。
沼地は再び、何もなかった顔をして沈黙した。
白い肌に、紫の瞳。
緑の髪が、ゆっくりと揺れる。
それを見た者はいない。
――最初から、誰にも見えるはずがなかった。
人々は言う。
魔女は、願いを叶え、その代償として“何か”を喰らう存在だと。
それでいい。
その理解で、何一つ間違ってはいない。
私には、
願いを叶える理由も、拒む理由もない。
人間が追い詰められ、
最後に辿り着いた先に立っているだけだ。
希望と絶望の区別がつかなくなった者が、
霧の奥で静かに溺れていくのを、
ただ見届けている。
――そう。
これは、
誰かの救いの物語でも、
世界を変える英雄譚でもない。
ただ、
霧の深い沼地に住む魔女が、どんな存在か。
それを、
少しだけ覗いただけの話だ。
次回も楽しみに




