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03
霧が閉じる。
人間は、いつもそうだ。
選ばされた顔をしていながら、自分で選んだつもりで足を踏み出す。
――ああ。
あなたは、覚悟がありその道を選ぶのですね。
遠回りでも、
他に良い道があったとしても。
それでも、わざわざこちらへ来る。
沼を恐れ、魔女を憎み、
それでも最後には縋りつく。
愚かで、愛おしい。
私は霧の中で、彼の背を見送る。
もう“契約前の人間”ではないその輪郭を。
命を差し出した者は、すぐにわかる。
歩き方が少し軽くなるのだ。
未来を自分のものだと、勘違いできなくなるから。
――さて。
次は、いつ回収しましょうか。
希望を手に入れた時?
それとも、絶望を乗り越えたと信じた時?
どちらでもいい。
選ぶのは、いつも人間の方だ。
霧の外で、彼が振り返る気配がした。
もう、私の姿は見えない。
それでいい。
見えないまま進みなさい。
見えないまま、足掻きなさい。
あなたが選んだその道の先で――
必ず、私に辿り着くのだから




