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霧深き沼の支配者
霧がいつもより濃く感じる夜。
沼地の水面が微かに揺れる音だけが、静寂を破る。
私は静かに立ち、周囲を見渡す。誰もいない。
人間たちは相変わらず、恐怖と欲望に振り回され、願いを求めては、代償に怯えている。
「また来るのね……」
独り言のように呟きながらも、心のどこかで楽しみでもある自分に気づく。
遠くで、何かが水を蹴る音。
ヒールでも靴音でもない、自然の音とは異なる微かな気配。
私は素早く霧の中へ足を踏み出す。
目には見えなくても、気配は確実に私の前を横切る。
瞬間、私は魔力を解き放つ。
小さな水面が一瞬で波立ち、霧が渦を巻く。
空気が振動し、夜の静寂は破られた。
「……逃げられると思っているの?」
声は届かなくても、全てを圧倒する力で相手を追い詰める。
霧の中で、存在感だけが私の支配を告げる。
しかし相手は怯えず、逆に挑むような気配。
「ふふ、面白いじゃない」
その瞬間、私は笑う。人間たちが愚かだと思っていたその感情に、少しだけ心が動く。
霧の奥で、私は静かに微笑む。
人間たちの願いも、恐怖も、今日も私の手の中にあるのだ。
次回もお楽しみに!




