戦闘ごっこ
霧の中、私は魔力を全身に巡らせる。緑の髪が風に揺れ、紫の瞳が鋭く光る。水面に映る私の姿は、あたかも異世界の妖精のようだ。
「さあ、行くわよ」低く告げると、霧がうねるように渦を巻き、地面を濡らす水滴が光の粒となって舞った。魔力が視界を歪め、音を飲み込み、全てが静寂に包まれる。
アレクはそれでも笑みを浮かべ、一歩踏み出した。「おお、これは本気モードだな。俺も負けないぞ!」片手を胸に置き、丁寧に敬礼しながらも、足元の水たまりを軽やかに飛び越える。その動きに無駄はなく、どこか紳士的だ。
「退屈しないで済むわね」私は指先で霧を裂き、放たれる魔力の衝撃波を飛ばす。水面が炸裂し、霧の中に鋭い閃光が走った。アレクは驚くことなく、軽く身をかわす。
「おお、やるじゃないか!」彼は水を蹴散らしながら、まるで踊るように距離を詰める。陽キャ特有の余裕と、どこか紳士的な所作が混ざっていて、敵意は感じられない。だが、魔力の渦に巻き込まれれば、一瞬で消えそうな緊張感がある。
私はさらに魔力を集中させ、霧の結晶を生成して彼に向かって飛ばす。結晶は氷の矢のように鋭く、速度も速い。アレクは片手でそれを払いのけながら、驚きよりも楽しげな笑顔を浮かべた。「わあ、これすごいな!でも俺、まだまだ動けるぞ」
紫の瞳を光らせ、私はより強力な魔力の束を地面から引き出す。沼地の水が竜巻のように巻き上がり、霧の中で巨大な壁となってアレクに迫る。だが彼は少しの躊躇もなく、跳躍し、壁の上を軽やかに飛び越えた。水飛沫が光に反射し、まるで舞台の演出のようだ。
「……少し、面白くなってきたわね」私は呟く。魔女としての圧倒的な力を見せつつも、相手の動きに少しだけ興味が湧く。
アレクはその間に距離を取り、片手を差し出して軽く会釈した。「ありがとう、魔女さん。この戦い、楽しませてもらうよ」その言葉に、私の内心は少しだけ和らいだ。
霧の中で、水しぶきと魔力の閃光が交錯する。私は魔女としての力を全力で振るい、アレクは陽キャ紳士として挑む。二人の不思議な戦いは、まだ終わりを見せず、霧の奥で続いていく――
次回もお楽しみに!




